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雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

「いき」の構造/九鬼周造

ちょっと前に、青空文庫で読み終わっていた。 「いき」とは何か、を考察した本である。 そんなのは無粋だというおちょくりは置いておいて、こういった「日本的なるもの」を解説するのは、どこを目指しているんだろうと思う。 世界の異文化に向けて発信するも…

ランスの大聖堂/ジョルジュ・バタイユ

バタイユの最初期の文章を集めた本。 ランスの大聖堂に対して、まだキリスト教を棄教していないバタイユの、ファナティックな礼賛は何だろう。 そこには私の理解しきれない何かがあって、それは存在の根本に関わるものであるような気がする。 バタイユの語る…

8.15と3.11 戦後史の死角/笠井潔

久しぶりに読んだ笠井潔は相変わらずだなと思った。 何が相変わらずなのかというと、日本に対する憎悪と世界同時革命の夢である。 この本は、終戦に至る日本軍と、福島原発事故における政府の意思決定のあり方を並べ、そこに日本的なるものを見いだし、批判…

佃に渡しがあった/尾崎一郎、ジョルダン・サンド、森まゆみ

かつて佃島へは渡しに乗って行ったのだそうだ。 私が生まれる数年前に、その渡しは廃止になったらしい。 佃島という場所は、もともと漁師町であった。 その漁師町としての景色が、尾崎一郎氏の写真によって収められている。 東京のほぼ中心に位置しながら、…

2011 危うく夢見た一年/スラヴォイ・ジジェック

2011年がどんな年だったのかを個人的に考えることとは別だ。 しかし、世界情勢で言えば「アラブの春」「ヨーロッパ危機」といったキーワードで語られる年なのだろう。 それらを楽観的に民主化の波や、資本主義の限界と片付けてしまうとしたら、既に思考が停…

人柱の話/南方熊楠

少し電子ブックにはまっているようだ。 やはり、スマホで手軽に読めるのは良い。 逆に、電池が切れると読めなくなるのはいまひとつ。 なので、電子ブックリーダーが欲しくなる。 だったら、タブレットで良いんじゃないかとも思う。 ともあれ、南方熊楠を読ん…

最暗黒の東京/松原岩五郎

ちょっと気になっていたので図書館で借りてみた。 明治時代の東京の貧民窟、つまりスラム街に入り込んでルポルタージュした本である。 当時の三大貧民窟が、下谷万年町(今の上野駅から鶯谷に向かった東側の一角)、四ツ谷鮫ヶ橋(信濃町と四ツ谷の間、赤坂…

ルイ・ボナパルトのブリュメール十八日/カール・マルクス

いまさらマルクスだと?フランス革命だと?お前はどこぞの左翼気取りの学生か、と、アナクロニズムの甚だしいのにも程があるぞ、と、いまどき赤旗の勧誘員だってこんな本は手に取らないんじゃないか、と。 とは言え、以前から何か惹かれるものがあるので買っ…

イコノソフィア/中沢新一

「イコノソフィア」で検索したら、自殺したくなる曲という都市伝説があるらしいが、この本とは関係が無い。 1980年代後半の中沢新一氏は、ニューアカデミズムや新人類というレッテルを貼られたポップスターだったのを思い出す。 それが良かったのか悪かった…

妖怪談義/柳田國男

かつてこの本は、水木しげる氏の「妖怪なんでも入門」に次ぐ、妖怪本の古典だったのだけれど、読み通していなかったようだ。 (その頃は、小松和彦氏の著作も、井上円了の名前も知らなかったのだった。) 改めて再読してみる。 柳田國男氏のこの本は、代表作…

プロタゴラス/プラトン

どうしても、この対話篇が気になって、改めて買い直した。 この対話篇でのソクラテスは、ちょっといかれている。 どうみても、プロタゴラスの方がまともだし、人としての器が大きい。 ソクラテスから問いかける一問一答で、A=Bならば、B=Aだろうと論理…

贈与論/マルセル・モース

ずっと以前から知っていたのに、手が出なかった本だ。 この本の存在を知ったのは、恐らく大学生の頃だ。 栗本慎一郎か、バタイユからたどり着いたのだろう。 評論を読んでしまうと、その対象を読んだ気になってしまいがちだ。 だが、やはりそれは読むべきな…

絶望のきわみで/E.M.シオラン

シオランの本もまた、時々読みたくなる。 一時期は次から次へと読み漁ったっけ。 この本は、シオランが22歳の時に書いた本だ。 語られるのは、眠れない夜であり、生に内在している死であり、理性への不信であり、そして虚無へのオマージュ。 これらの言葉が…

哲学者の誕生/納富信留

図書館で何となく気になったので借りてみた。 ソクラテスの死にプラトンは立ち会っていないにも拘らず、その情景を「パイドン」で表している。 この本はその、一見不可解なプラトンの対話篇についての考察から始まる。 自身では何も著作を残さなかったソクラ…

ゴルギアス/プラトン

プラトンの対話篇の中でも、この本もまた苛立たしい。 ソクラテスがソフィストのゴルギアスを訪ね、弁論術とは何かと議論を吹っかける。 ゴルギアス自身が弁論術が説得のためのテクニックであると説明しているにもかかわらず、ソクラテスは「政治術の一部門…

経済学・哲学草稿/カール・マルクス

そういえば、一時期は「資本論」も全巻持っていたっけ。 だが、読み通した覚えは無い。 この本も読んだのか読んでいないのか定かではない。 たぶん、柄谷行人の「マルクスその可能性の中心」辺りでも読んで、買ったのかもしれない。 ともあれ、読み返してみ…

国家民営化論/笠井潔

気になっていたので、図書館で借りてみたのだけれど、正直なところちょっと期待はずれだった。 一言で言うなら、アナルコキャピタリズムの概説である。 笠井氏が繰り返してきた観念批判の延長線として、アナルコキャピタリズムに行き着く論理は、なるほど納…

テロルの現象学/笠井潔

笠井潔氏の最初の評論である。 なぜ人は観念的なるものに支配されてしまうのか、を現象学的に、あるいはヘーゲル現象学のパロディとして展開している。 引用される文章も、吉本隆明、高橋和巳、埴谷雄高、ドストエフスキー、バタイユ、ヘーゲル、エリアーデ…

作家の誕生/猪瀬直樹

新書ながら読み応えのある一冊だった。 明治時代における雑誌の誕生から、文壇の形成、そしてタイトルの通り、「作家」という職業の確立を丹念に追っていく。 文学史でもなく、出版史でもなく、だが、それらを包括する、日本近代史の姿が見えてくる。 それは…

UFOとポストモダン/木原善彦

図書館にふらりと立ち寄って、ちょっと目に留まったので借りてみた。 UFO目撃譚に代表される「UFO神話」なるものを、近代からポストモダンの文脈で捉える、といった本だろう。 第二次世界大戦後から1973年までの「前期UFO神話」時代、1973年から1995年の「後…

琉球弧の喚起力と南島論/吉本隆明、赤坂憲雄、上原生男、比嘉政夫、嵩元政秀、渡名喜明、高良勉

1988年12月2日に那覇にて開かれたシンポジウムの記録を中心に、吉本隆明氏の新たな「南島論」をキーにとした各氏の考察を含めてまとめられた本である。 その南島論は、国家を越えるべき論理として構想している。 同時期に吉本氏が展開していた都市論、つまり…

イスラーム文化/井筒俊彦

井筒俊彦氏は東洋学の大家であり、恥ずかしながら「意識と本質」は未だ読み通せずに、本棚の片隅に置いてある。 また、井筒氏はユングが主催していた「エラノス会議」に招聘された、数少ない日本人の一人であり、毎年のように、東洋文化について講演されてい…

人権と国家/スラヴォイ・ジジェク

ジジェクを知ったのは、90年代後半の頃だろうか。 確かボスニア紛争の後だったように記憶している。 ラカンやヘーゲルを多用しつつ、時事問題や文化領域に切り込んでいく、ちょっと読みづらい文章だったと思う。 この本は、岡崎玲子氏によるインタビューと、…

経済人類学/栗本慎一郎

久しぶりに栗本慎一郎氏の本が読みたくなって引っ張り出してみる。 経済人類学とは何か、という現状のまとめから、その展開する先まで言及した、コンパクトながら読み応えのある本だ。 栗本氏によって、高らかに経済人類学が宣言される、そんな感じさえする…

文学と悪/ジョルジュ・バタイユ

久しぶりにバタイユを読む。 この本は、バタイユによる作家論であり、自身の文学論である。 取り上げられている作家は、以下の通り。 エミリ・ブロンテ ボードレール ミシュレ ウィリアム・ブレイク サド プルースト カフカ ジュネ もし、この中に好きな作家…

人間不平等起原論/ジャン=ジャック・ルソー

確か高校の倫理の授業でルソーを知ったと思うのだけれど、レシートを見ると買ったのは大学生の頃のようだ。 不平等はなぜ生まれたのかを考察しているのだけれど、何の不平等なのかはいまひとつ曖昧だ。 むしろ専制国家の非難のような論調だ。 動物的存在とし…

知の旅への誘い/中村雄二郎・山口昌男

ある試みが成功であったかどうかは、何を以て判断するのだろうか、と考えたときに、例えば読み手に何をか残せたかどうかというのはあるだろう。 ただ、その読み手が本の著者が想定しているイメージと重なり合うとは限らない。 読み手それぞれによって評価が…

自由はどこまで可能か リバタリアニズム入門/森村進

久しぶりに人文系の本が読みたくなる。 そこで、ちょっと気になっていた、リバタリアニズム関連の本を図書館で借りてみた。 リバタリアニズムとは何か、という概説のさわり、ちょっと広めに俯瞰することができるような本だ。 もちろんこれで判ったような気に…

ナマコの眼/鶴見良行

この本は労作にして傑作であり、読み応えもしっかりとある。 ナマコを通じて、東南アジアにおける文化の伝播から、海洋民の流れ、大航海時代以降の植民地化、帝国列強の時代、そしてインドネシア、ニューギニア、オーストラリア、フィリピン、日本、蝦夷、朝…

Xへの手紙・私小説論/小林秀雄

以前は持っていたはずだが、いつだか手放した覚えがあったので、図書館で借りて読んでみる。 この本は、大正末期から昭和初期にかけての創作と、昭和初期から昭和30年代頃までの批評からいくつか拾い集めているようだ。 つまり、50年から70年前の文章である…

人間について/マイケル・ポラニー

ハンガリーのポラニー兄弟の弟。 兄は経済人類学者のカール・ポラニー(マジャール語では、ポラーニ・カーロイ)であり、その弟である、マイケル・ポラニー(ポラーニ・ミハーイ)は化学者にして、科学哲学者とでも言うべきか。 何よりも「暗黙知」を提唱し…

バナナと日本人/鶴見良行

バナナを通して、フィリピンとアメリカと日本、生産者と地主と多国籍企業、様々な人々の姿、問題を浮き上がらせる。 国際社会における南北問題が単なる不平等貿易の是正に還元されるべき問題ではなく、様々な要因が絡み合ったものであることが判る。 単純化…

神隠し/小松和彦

そういえば、『神隠し』という言葉をあまり聞かなくなった気がする。 以前は聞いていたのかと言われると、そうとも言い切れないが、やがて忘れられてゆく言葉のような気がする。 だが、遠い昔に『神隠し』はあったのだ。 家族や知人が不意に姿を消し、忘れた…

暴力と聖性/エマニュエル・レヴィナス、フランソワ・ポワリエ

買ったのに読み通していない本が何冊もある。 読み通せない理由は様々だが、例えば、全く理解できなかった本もある。 レヴィナスのこの著作も、そういった本だ。 改めて読んでみたのは、ただの偶然であり、たまたま、ボルヘスの「砂の本」とバタイユの「無頭…

人生論/トルストイ

以前、高校の時の同級生が、この本を読んでいる、と言っていたのをふと思い出した。 それは、もう何年前のことだったろうか? ふと、そんな些細な記憶が蘇る時がある。 そういえばトルストイはおろか、ロシア文学に殆ど触れてこなかった。 思い出したのも何…

9.11/ノーム・チョムスキー

タイトルの通り、9.11についてのチョムスキーへのインタビュー集である。 チョムスキーの論理は明確だ。 テロの語義に照らし合わせて、最大のテロ国家はアメリカであると断定する。 そこには幾つかの事例が引かれているが、どれも陰惨な事件ばかりだ。 また…

忘れられた日本人/宮本常一

時として勘で本を選ぶ。 本との出会いを偶然に委ねてみる。 この本は本屋の店頭で平積みにされていた。 民俗学者である宮本常一が、全国を歩き回って、古老の話を集めた本である。 昭和初期の頃の本らしく、古老たちは明治維新を記憶している。 彼らは百姓、…

モナドロジー・形而上学叙説/ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ

思ってた以上に興味が無かった。 読み切れず断念。モナドロジー・形而上学叙説 (中公クラシックス)作者: ライプニッツ,Gottfried Wilhelm Leibniz,清水富雄,飯塚勝久,竹田篤司出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2005/01メディア: 新書購入: 3人 クリック…

共産党宣言・共産主義の諸原理/カール・マルクス、フリードリヒ・エンゲルス

今更この本について語ろうとしてみるのだが、どういった距離感なのか良く判っていない。 この本が書かれた背景には、19世紀ヨーロッパの世界がある。 市民革命と産業革命により台頭したブルジョワジーと、抑圧されたプロレタリアートの階級闘争を告発し革命…

臨床の知とは何か/中村雄二郎

この本もまた、図書館で借りたのだが、昔読んだことがあるような気がする。 しかし手元には無い。 それはともかく、近代的なるものの代表的な科学的な知への批判としての、新しい知の示唆をしている。 例えば、それはマイケル・ポランニーの暗黙知だったり、…

哲学入門一歩前/廣松渉

続けて廣松渉を読んでみる。 相変わらずの当て字っぽい擬古文調で読みにくさは変わらない。 新哲学入門が哲学を語ろうとするための本であるなら、この本はその周辺にあるようだ。 前書きにあるように、廣松渉の思考の基礎にある、モノ的世界観からコト的世界…

新哲学入門/廣松渉

実に読みにくい文章だと思ったのは、最近の文章に慣れすぎてしまった所為かとも思ったのだが、一概にそう言い切れる物でもないようだ。 廣松渉について名前は知っていても、その思想に触れたのはこの本が初めてだ。 文章が読みにくいことを差し引いてみると…

この人を見よ/フリードリッヒ・ニーチェ

最近何だか世間で、ぶれるだのぶれないだの、聞く機会が多くなったような気がする。 その違いにどれほどの価値があるのかは知らないが、ぶれないことの方がより好ましいように話されているようだ。 もっとも生死を分ける問題ではなく、単なるキャッチコピー…

家族、私有財産および国家の起源/フリードリヒ・エンゲルス

いまさら説明するまでもなく、エンゲルスの主著だろう。 なぜにいまさらこの本を読むのか。 それを考えた際に、自分に対して以下のルールを適用することとした。1.政治的な意味合いは考慮しない マルクス主義の政治的思想的テクストとして読むのではなく、…

イカの哲学/中沢新一、波多野一郎

「イカの哲学」とは、波多野一郎氏の論文であり、それに感銘を受けた中沢新一氏が紹介し、自らの平和論を展開している。 波多野氏は、満洲に配置された特攻隊員であり出撃直前に敗戦となり、そこからシベリアへ抑留され、帰国後、アメリカへの留学をする、と…

神になった人びと/小松和彦

著者の小松和彦は民俗学者であり、「妖怪」や「憑依」「鬼」といったテーマの著書がいくつもある。 そういったテーマを通して、共同体の深層を探り出そうとしている。 この本では、「靖国問題」が話の発端である。 しかし、政治家が特定の神社に参拝すること…

老いの超え方/吉本隆明

文芸評論にちょっと触れたことがあれば、吉本隆明の名前は耳にしたことはあるだろう。 私にとっての吉本隆明との出会いは、角川文庫の「共同幻想論」であり、高校生の脳味噌にはちょいと難しすぎた。 それでも、読み続けてしまったのは、やはり見ないふりを…

オルレアンのうわさ―女性誘拐のうわさとその神話作用/エドガール・モラン

良く知られている都市伝説に、「達磨」というのがある。 様々なヴァリエーションがあるが、こんな骨子である。 ・何人かで旅行に行く ・その中の一人が現地で洋服店の試着室に入る ・残されたメンバーがいくら待っても、その一人は帰ってこない ・店員に聞く…

太陽の都/トマーゾ・カンパネッラ

この本もまた、図書館で借りた本である。 ルネッサンス期の思想家であるカンパネッラの描く国家、社会の理想像と言えよう。 ユートピアを描いた本としても有名である。 だが、ユートピアほど息苦しいものは無い。 誰かの考えたあるひとつの形に対して、人も…

室町の王権―足利義満の王権簒奪計画/今谷明

この本もまた図書館で借りた本である。 室町時代の足利義満による王権簒奪計画を実証してゆく。 あくまで政治学として、分析しようとしているようだ。 そして、本当の射程は天皇制にあるようだ。 今ひとつ、著者の主張を消化しきれていない。 政治的権力を裏…