雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

物語

インド夜想曲/アントニオ・タブッキ

何度となくこの本は読み返してしまう。 旅と人生と物語の本だ。 どうしてここまで、この本に惹き付けられているのだろう。 それは理屈ではなく、この本の魅力が色褪せないということなのだ。 くさい言い方をするなら、生涯の友というところか。 物語の粗筋と…

温泉だより/芥川龍之介

何だかんだ言いながら、また芥川を開いてしまう。 どこか牧歌的なタイトルとは裏腹に、男女の悲哀を描いた短篇である。 惚れた女へ会うための金を、自分の献体代金を前払いで貰うのだが、それもやがて底をついて、といったお涙頂戴話である。 このところ読ん…

孤独地獄/芥川龍之介

相変わらず芥川を読む。 孤独地獄とは現世の人々のすぐ傍にあるらしい。 吉原で出会った僧侶とのエピソードから、地獄の話へ。 そんな僧侶の行方は遥と知れず、芥川は孤独地獄に共感を示す。 芥川のこんな短篇ばかり読んでいると、ちょっと気が滅入ってくる…

夢/芥川龍之介

またしても芥川の短篇を読む。 主人公は画家で色付きの夢を見るのは異常な徴だとかいう話から始まる。 何とも陰鬱な作品だ。 だが、登場する女性の乳首に関する描写が妙にエロティックである。 夢 作者: 芥川竜之介 発売日: 2012/09/13 メディア: Kindle版 …

貉/芥川龍之介

芥川の作品を立て続けに読む。 こういう時に電子書籍は便利だ。 読みたいときに、読みたいだけ読める。 タヌキが人を化かすという話の起源を巡って、歴史を遡り、伝説めいた話を掘り起こす。 何とも芥川らしい短篇である。 さらっと読んで飛ばしてしまうとこ…

死後/芥川龍之介

芥川の短篇は結構読んでいたつもりだったが、これは初めて読んだ。自分の死後に妻の新しい夫のことを詰り、その事を反省するという、小説のようなエッセイのような作品である。死後作者: 芥川竜之介発売日: 2012/09/27メディア: Kindle版この商品を含むブロ…

ダヤン・ゆりの花蔭に/ミルチャ・エリアーデ

2016年の読書はエリアーデから始めよう。 「ダヤン」は最終方程式に関するミステリーである。 だが、謎は明かされない。 謎は明かされないばかりか、主人公の死さえも仄めかされるだけだ。 恐らくこれは知に関する考察であり、知るということと、知りたいと…

怪談/ラフカディオ・ハーン

最近本を読んでいない。 これを拾い読みしたぐらいか。 電車の中ではたいてい寝ているか、スマホでニュースを読んでいる。 困ったことだ。 怪談―不思議なことの物語と研究 (岩波文庫)作者: ラフカディオハーン,Lafcadio Hearn,平井呈一出版社/メーカー: 岩波…

金沢・酒宴/吉田健一

金沢に北陸新幹線が開通した。 と書き出すと、いつの話だと思われるかもしれないが、その頃に読み始めてやっと読み終えた。 いまさら話を要約する必要も無いだろうし、第一、吉田健一の小説を要約したところで、何も吉田健一の小説というものを伝えてはいな…

ここは退屈迎えに来て/山内マリコ

この本もまた図書館で借りた。 前に読んだ「融解するオタク・サブカル・ヤンキー」で紹介されていた。 良い意味で退屈な小説だ。 なぜなら舞台となる世界は退屈な世界だからだ。 ファスト風土に闇は無い。 全ては商品として消費される。 そしてこの本は青春…

パプリカ/筒井康隆

この本もまた図書館で借りた。 久しぶりに小説を読んだ。 しかもSFだ。 夢オチという言い方は、些か侮蔑的なニュアンスが含まれると思うのだが、そういうことではなく夢オチっぽい。 夢と現実が混合し、エロティックなアクション活劇はエンターテイメント性…

リイルアダン短篇集/オーギュスト・ド・ヴィリエ・ド・リラダン

石川淳がリラダンを愛読していた、とのエピソードをどこかで聞いてことがある。 本人のエッセイかもしれない。 岩波文庫60周年記念リクエスト復刊時(1988年第5刷)のものを持っている。 せっかくだから読んでみるかと引っ張り出したのだが、どうにも面白さ…

華麗なるギャツビー/スコット・フィッツジェラルド

久しぶりに引っ張り出して読んでみた。 だが、今ひとつ面白いと思えなかった。 以前は響いていたはずなのだが、今は響かないのはなぜだろうか。 グレート・ギャツビー (新潮文庫)作者: フィツジェラルド,野崎孝出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1989/05/20メ…

イン ザ・ミソスープ/村上龍

図書館でふと借りてみようという気になった理由はわからない。 だがそういった直観は時に正しい選択をするものだ。 久しぶりに村上龍の小説が面白いと思えた。 そして、たぶん最初に読んだ「限りなく透明に近いブルー」を思い出した。 この物語の粗筋は、こ…

旅の時間/吉田健一

少し前に手に入れてたのだが、やっと読み終えた。 吉田健一の連作短編集である。 何となくではあるが、この本を良いと言ってしまうことは悔しいのだ。 読み通してみると「旅の時間」というタイトルも納得である。 この本には、生死にかかわるような大問題も…

月夜の魚/吉村昭

この本もまた図書館で借りた。 月と夜と魚とは、何と完璧なタイトルだろう。 この本は、死にまつわる短編集である。 そして、吉村昭の本は初めて読んだ。 どの短編も、どうにもやりきれなさが残る。 こんな風に死を描かれると、何か忘れていたものを思い出し…

五分後の世界/村上龍

村上龍を読んだのは何年振りだろうか。 この本はどこかで紹介されていたのを見た気がする。 パラレルワールドもののSFとも、日本文化批判の寓話とも言えるだろう。 ともあれ、ストレートなストーリーはあっという間に読み終えることができた。 この本は、文…

蛍・納屋を焼く・その他の短編/村上春樹

何年かぶりに読み返してみる。 「蛍」は後に、「ノルウェイの森」の一部になる。 「納屋を焼く」も何かの一部になった気もするが、定かではない。 村上春樹の本は図書館で借りれば良いのだから、さっさと処分してしまわないのか、と家人は言う。 一理あるの…

海底二万里/ジュール・ベルヌ

子供の頃、何度となく読み返していた物語を、改めて読み返してみる。 いまさら解説する必要も無いくらい、有名な物語なので、あらすじなどここには書かない。 ひとことだけ言うなら、ネモ船長率いるノーチラス号で世界の海を巡る冒険活劇である。 やはり面白…

S&Gグレイテストヒッツ+1/橋本治

この本もまた図書館で借りた。 この本もまた処分してしまった本だ。 橋本治を読むのは、高校生以来だろうか。 いや、大学時代の女友達が橋本治の講演の話をしていたから、大学生以来だろうか。 ともあれ、それ以降手に取らなかったように思う。 この本は大半…

風の歌を聴け/村上春樹

この本もまた図書館で借りた。 というのも、以前は持っていたのだが、処分してしまったからだ。 いまさら村上春樹について何か書く必要もないし、このデビュー作について書かれている記事なんて腐るほどあるだろう。 何故今更にこの本を読み直したのかといえ…

春、バーニーズで/吉田修一

この本もまた図書館で借りた。 名前ぐらいは聞いたことがあるので、何となく手に取った。 実は自分と同い年らしい。 筒井というサラリーマンが主人公の連作短編らしい。 何と言うか、あまりよく判らなかった。 何となく判るようなのだけれど、やっぱり判らな…

犬狼都市/澁澤龍彦

そういえば、最近小説を読んでいない。 TVだってドラマは見ない。 見るとしたら、ニュースか天気予報かドキュメンタリー、たまにはバラエティも見るが、「旅・温泉・グルメ」的なもの。 (全ての条件を満たすのはテレ東か?) ということで、適当に本棚か…

カーブの向う・ユープケッチャ/安部公房

この本は、「砂の女」「燃えつきた地図」「方舟さくら丸」といった長編の原型となった短編が収められている。 基本的に安部公房の物語は陰鬱だと思う。 灰色にくすんだ日常のような世界なのだが、どこかしら奇妙な歪みがある。 砂に埋もれそうになっている集…

あなたにここにいて欲しい/新井素子

この本もまた図書館で借りた。 実に20数年ぶりの再読である。 確か友人に薦められて読んだうちの一冊だったか、ピンク・フロイドの「Wish you were here」が引用されているから手を伸ばしたのか、それはもう定かではない。 ともあれ再読してみたのだが、スト…

ムーミン谷の彗星/トーベ・ヤンソン

この本もまた図書館で借りた。 かすかな記憶なのだが、日曜夜7:30からのカルピス名作劇場で見たのだと思う。 だが、子供の頃はあまりTVを観ていなかったので、本当にリアルタイムで観たのか、再放送や懐かしのアニメ特集で観たのか、いささか不確かなのは否…

ムーン・パレス/ポール・オースター

なんとなく弱っているものだから、好きな本でも読むことにした。 この本を読むのはもう何度目か分からないが、何かあると逃げ込みたくなるアジールのようなものになっている。 本を読んで人生が変わるというのは度を越した誇張だと思うが、何か息が楽になる…

サラジーヌ 他三篇/オノレ・ド・バルザック

この本もまた図書館で借りた。 この本を読もうと思い立ったのは、ロラン・バルトの「S/Z」に興味があったからに他ならない。 バルザック作品そのものには、大して興味はない。 古典作品への素養が足りないと言ってしまえばそうなのだが、強いて言えば「セラ…

三島由紀夫レター教室/三島由紀夫

この本もまた図書館で借りた。 5人の登場人物たちがやり取りする手紙で構成された小説である。 いかにも判りやすいように人物設定されており、また話の筋が判りにくいという事もない。 二組のカップルを巡るスラップスティックであり、残る一人は狂言回しと…

バッカイ バッコスに憑かれた女たち/エウリーピデース

この本もまた図書館で借りた。 ポンペイ遺跡にあるディオニューソス秘儀の壁画を知ったのは、高校生ぐらいだったろうか。 真っ赤な背景に、倒れこんでいる鞭打たれる女性と、その傍らで全裸で踊る女性の場面に、何かしら官能的なものを嗅ぎ取っていたように…