雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

語り

台所のおと/幸田文

幸田文の短編小説集である。 随筆での語りが小説世界では制約になって、どの登場人物も作者の分身となってしまうのではないか、という漠とした不安のようなものがあったのだが、それは杞憂だった。 表題作の「台所のおと」に描かれる料理人を始め、様々な人…

月の塵/幸田文

いまさらながら、幸田文の読者とは誰なんだろう、と思った。 懐古的な随筆はいつの日か考古趣味の対象になり、文学としては読まれなくなるのではないかという気がする。 幸田文が書いている対象について興味がある読者というのは誰なのだろう。 そして、幸田…

季節のかたみ/幸田文

幸田文の文章に惹かれている。 そう思って随筆を借りてきたのだが、ちょっと違うようだ。 悪くはないのだが、ちょっと思ったのと違うと言うか。 読者の勝手な思い込みなんだろうとは思うのだが、いまひとつに感じてしまうのは、老いの影が見える点だろうか。…

父・こんなこと/幸田文

幸田文は幸田露伴の次女である。 従ってこの「父」とは幸田露伴のことである。 幸田露伴の臨終記ともいえる表題作、その亡き父の思い出を語る随筆である。 幸田文の語り口は、東京の下町の喋りの息遣いが感じられる。 たぶん、言葉使いだけじゃなく、その背…

木/幸田文

幸田文をもう一冊。 今回も図書館で借りたのだけど、こちらの方が気になっていたのだった。 タイトルの通り、木に関する随筆である。 雑学を披露するでもなく、淡々と木に対する印象や描写で綴られ、作者の思いが込められる。 随筆とは随想、つまり心に浮か…

雀の手帖/幸田文

幸田文は幸田露伴の娘、と書いてみても、もはや幸田露伴の読者なんて、学生か年寄りだろうか。 ましてや、娘の幸田文なんて読まれていないような気がしてならない。 この随筆(あえてエッセイとは言わないでおこう)は、新聞に日々掲載されたもののようだ。 …

御馳走帖/内田百閒

先月に突然風邪をひいて寝込んだ際に再読。 2日で読みきれずにようやく読了。 相変わらずの百鬼園先生の語りが、病人には優しかった。 御馳走帖 (中公文庫) 作者: 内田百けん 出版社/メーカー: 中央公論社 発売日: 1996/09/18 メディア: 文庫 購入: 7人 クリ…

人民は弱し 官吏は強し/星新一

この本もまた図書館で借りた。 星新一の父、星一氏の伝記小説である。 面白い?面白いだろうか? 星製薬の盛衰を描いているとも言えるし、星一氏と明治日本官僚の攻防を描いているとも言える。 判官贔屓というと失礼だが手放しに、官僚は腐っている、星氏か…

男どき女どき/向田邦子

この本もまた、図書館で借りた。 歳をとって、向田邦子を読むようになった。 この本で扱われているテーマは、人生の機微のようなものだ。 歳を取ると些細なことにも涙脆くなる。 そんな些細なことに共感する自分がいる。 子供は大きな物語が好きだ。 例えば…

もらい泣き/冲方丁

この本もまた図書館で借りた。 というか、何ヶ月も本を読んでいないという状況はどうなのか。 もう、自分は本というメディアと決別するのだろうか。 と、そんなことを考える訳も無く、図書館で目についた本を借りてみた。 名前は見覚えがある。 というか、図…

怪談女の輪/泉鏡花

この本もまた電子書籍で読んだ。 まさか、泉鏡花を電子書籍で読むとは。 泉鏡花の文章には独特のリズムがあって、それに乗るとするすると頭に入ってくる。 ただ、独特の当て字というか、創作文字がインターネットの世界では再現できない。 そもそも、康煕字…

真景累ヶ淵/三遊亭円朝

この本もまた電子書籍で読んだ。 すっかり手放せない。 怪談の古典で、因果応報で連なっていく殺人話。 何が恐いかって、この世の因果ってこと。 真景累ヶ淵 作者: 三遊亭円朝 発売日: 2012/09/27 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 真景累ヶ淵…

安吾巷談/坂口安吾

この本もまた電子書籍でよんだ。坂口安吾による、時事ネタのエッセイである。 たいしたことを書いてるとも思わないが、引き込まれてしまうのは語りの上手さが出ているような気がする。 坂口安吾の軽妙な語りの裏に隠れているものは、鋭い触ったらすぐ切れて…

怪談牡丹灯籠/三遊亭円朝、鈴木行三、若林玵蔵

この本もまた電子書籍である。 有名な怪談なのだけれど、初めて読んだ。 円朝の語り口が伝わってくる。 魑魅魍魎が跋扈するというよりは、因果応報の世界の中で、人の念の愚かさや恐ろしさが主題だろう。 だから同じようなエピソードが繰り返される。 それが…

妖怪研究/井上円了

妖怪を分類したもの。 この本もまた、電子書籍でよんだ。 妖怪研究 作者: 井上円了 発売日: 2012/10/05 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る

妖怪学一斑/井上円了

妖怪学についての講演会を文字に起こしたもの。この講演会では、ジンクスや符丁について語っている。 妖怪学一斑 作者: 井上円了 発売日: 2012/10/05 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る

子に与ふ/北一輝

北一輝の遺言である。電子書籍で簡単に手に入るので読んでみた。日本改造法案大綱を読むかは分からない。 子に与ふ 作者: 北一輝 発売日: 2012/10/01 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (1件) を見る

我が人生観/坂口安吾

相変わらず電子書籍で坂口安吾を読み耽っている。 これは紙の本では読んだことが無かったが、なかなか面白い。 坂口安吾のエッセンスが詰まっているようなエッセイだ。 いちいち、そうだよなと思う事が多いが、翻って考えてみると、高校生の頃から坂口安吾を…

死と鼻唄/坂口安吾

引き続き電子書籍で読んでみた。 分かるような分からないようなエッセイだ。 鼻唄交じりに勝負に出るものは強い、という話。 戦場で死を見つめていない限りは死なないという話。 第二次世界大戦でのドイツ軍は、相手に死を思わせることが上手かったから強か…

自叙伝・日本脱出記/大杉栄

古本フェアで見つけて何となく買ってみたのだが、これが案外面白かった。 大杉栄がいったいどのような人物なのかは、ネットででも検索すれば良い。 また、甘粕大尉によって虐殺されたことだって、よく知られているところだろう。 この本は大杉栄が自分の半生…

意識・革命・宇宙/埴谷雄高、吉本隆明

最近でも埴谷雄高や吉本隆明は読まれているのだろうか。 自分が高校生の頃、この二人の論争があったっけ。 というか、ちょいちょい論争していたような気がする。 人文系の雑誌も読まなくなり、そういった話題にも興味がなくなって久しい。 この対談の本では…

若きサムライのために/三島由紀夫

初めて読んだ三島由紀夫は、澁澤龍彦の日本文学アンソロジー「暗黒のメルヘン」に収められていた「仲間」だったかと思う。 恐らく高校生の頃だろうか。 あの頃は三島由紀夫は学校では教えていなかったっけ。 近代文学までがせいぜいで、現代文学は扱いきれな…

真贋/吉本隆明

古本屋で見つけた。 晩年の吉本隆明氏へのインタビューを基にまとめた本である。 思えば、吉本氏の新たな本を読むのも久しぶりだ。 およそ1990年代後半以降、吉本氏の本から意識的に遠ざかっていた。 それは、その思想の如何に関わらず、一人の思想家の言葉…

ナショナル・ストーリー・プロジェクト/ポール・オースター

長いことこの本は買おうかどうしようかと迷っていた。 でも、先日思い切って買ったのだ。 買ったは良いのだけれど、今度は読もうかどうしようかと迷っていた。 (その隙に、電子書籍に手を出したりして) ポール・オースターがラジオ番組のために、聴取者か…

気違い部落周游紀行/きだみのる

あざといタイトルではある。 内容は、第二次世界大戦の前後に、東京の西の外れの山村の寺に住み着き、その村の人々の姿を描いた、民俗学的な内容だ。 何故このようなタイトルなのか、何を意図しているのかは、著者自身が丁寧に解説している。 幾分、戯画的に…

夢酔独言 他/勝小吉

勝小吉は、勝海舟の親父。 42歳で今までの半生を振り返って、こんな人生送るなよ、と戒めとして書いたもの。 なので、ありがたみも無く、説教臭いのだって嘘臭い。 奔放に好き勝手生きてきて、いまさらそれは無いんじゃないの、と言いたくもなる。 だが、そ…

背景の記憶/吉本隆明

ふと、吉本隆明氏の歯切れの良い文章に触れたくなる。 この本は、吉本氏が過去について触れた、雑多な文章を集めている。 あとがきによると、担当者の小川哲生氏の編集力も素晴らしいようだ。 吉本氏自身でも語っているように、ある種の自伝のようでもあり、…

忘れられた日本人/宮本常一

この本もまた、忘れられなくて買い直した本である。 集められた話の真偽を云々するつもりも無い。 語りの妙は、宮本常一氏の編集力が素晴らしいのだと思う。 改めて読み返してみると、取り止めも無く語られた話を、再構成したのだろう。 そこには、宮本氏自…

ヴォネガット、大いに語る/カート・ヴォネガット

ヴォネガットのエッセイを読むのは、これが初めてだ。 いつ買ったのかももう覚えていない。 様々なエッセイやら講演録やら含まれているが、小説と変わらない、いつものヴォネガット節とも言える。 その中でも特に、ビアフラに関するエッセイは、白眉だ。 (…

氷川清話/勝海舟

赤坂6丁目のマンションの立ち並ぶ一角に、勝海舟邸跡という碑がある。 当時を偲ばせるものは何もない。 その辺りは、氷川町といわれていたようだ。 なので、氷川清話という題なのだろう。 特に幕末好きという訳ではない。 だが、勝海舟は気になる。 江戸幕府…