雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

語り

七つの夜/ホルヘ・ルイス・ボルヘス

久しぶりにボルヘスを読み返す。 テーマは「神曲」「悪夢」「千一夜物語」「仏教」「詩について」「カバラ」「盲目について」 1977年ブエノスアイレスのコリセオ劇場での講演である。 恐らく78歳、自分の周りの年上の方々と比べてしまうが、ずっと瑞々しい感…

リセット/watari

ちょっと読んでみようかと借りてみた。 なるほどなと思う部分も多々ありつつ、わからない部分もある。 それはつまり程度の差なのか、個人の差なのかは、よくわからない。 だがこういった体験記を読める程度には回復しているのだろうとは思う。 リセット 私は…

2020年6月30日にまたここで会おう/瀧本哲史

久しぶりに瀧本哲史の著作を読む。 一時期、「君に友だちはいらない」を読んだ上司が心酔し、社内で回し読みがあったことを懐かしく思った。 この本は東大での講演を文字に起こしたものであるため、話題は飛んだり説明が足りなかったりもするが、趣旨は分か…

雀の手帖/幸田文

久しぶりに読み返してみた。 以前読んだ時も思ったけれど、幸田文の文章は昔の東京のしゃべり言葉に近い感じがする。 親の世代というより、祖父母の世代の言葉のようだ。 中盤で後の平成天皇のご成婚の話題が出てくるので、1959年に初出の文章なのだと分かる…

プロタゴラス/プラトン

プラトンの著作の中でも、これは面白いのではないだろうか。 高名なソフィスト・プロタゴラスがアテナイを訪れているというので、ソクラテスが会いにいく。 そもそもソフィストとは何を教えるのか、というのが対話のスタートである。 ソフィストは弁論術を教…

カンバセイション・ピース/保坂和志

久しぶりに再読した。 持っているのは新潮文庫版。 とめどないおしゃべりと猫と横浜ベイスターズの小説である、と纏めてみる。 新しくも古くもないが、90年代の雰囲気が滲み出てしまっているが、それもまた背景に過ぎない。 何も起きない、いつまでも続きそ…

意識・革命・宇宙/埴谷雄高、吉本隆明

1975年の埴谷雄高と吉本隆明の対談。 テーマがあるようで無いような、対談として意見が平行線な感じがする。 「死霊」の話はともかく、革命や内ゲバ、戦前のプロレタリア運動について語っているのは、隔世の感がある。 吉本隆明は絶えず日本中世の仏教思想に…

書百話/榊莫山

榊莫山という名前を知ったのが、米焼酎のCMであったなんて、お里が知れるというものだろうか。 有名な書家ではあるが、その作品は好みではない。 だが、書に対する考えや、エピソードなどは面白く読めた。 書百話 作者:榊 莫山 出版社/メーカー: 毎日新聞 発…

ノストラダムスの大予言/五島勉

1999年7月に恐怖の大王が来て世界が滅ぶ、という予言は、小学校の教室の中で、幾度となく盛り上がった。 どうせ世界は滅びるんだから、やりたいことをやったほうが良い、という価値観は、1980年代後半からのバブル期の消費マインドの根底に繋がっていたよう…

夜明けのブランデー/池波正太郎

何となく読んでみた。 池波正太郎が気に入ってるわけではない。 たぶん合わないタイプの人のような気がするが、文章は面白い時もある。 そして老いというものがにじみ出ている。 新装版 夜明けのブランデー (文春文庫) 作者: 池波正太郎 出版社/メーカー: 文…

それは「うつ病」ではありません!/林公一

何となく借りてみた。 先日のガザニガの本を紹介していた精神科医の方だと思う。 中年にもなって久しいと、「うつ病」はちょっと身近に感じる。 大したこともやっていないが会社員生活の中で、メンタルに問題があって辞めてった人は何人もいるし、辞めないま…

<わたし>はどこにあるのか/マイケル・S.ガザニガ

どこかのSNSか何かで、この本のことが言及されているのを眼にして、ちょっと読んでみようかと思った。 副題は「ガザニガ脳科学講義」である。 原題は「Who's in Charge? Free Will and Science of the Brain」 人間にとって脳とは中枢であり、肉体的な死より…

街場の現代思想/内田樹

随筆ばかり読んでいると、論理的思考ができなくなるような気がして、とはいえ急に堅い人文書に手を伸ばすほどでもなく、ちょっと堅めの随筆を選ぶ。 内田樹はレヴィナスの翻訳者として知っていたはずなのに、随筆で見かける名前と一致していなかった。 とも…

台所のおと/幸田文

幸田文の短編小説集である。 随筆での語りが小説世界では制約になって、どの登場人物も作者の分身となってしまうのではないか、という漠とした不安のようなものがあったのだが、それは杞憂だった。 表題作の「台所のおと」に描かれる料理人を始め、様々な人…

月の塵/幸田文

いまさらながら、幸田文の読者とは誰なんだろう、と思った。 懐古的な随筆はいつの日か考古趣味の対象になり、文学としては読まれなくなるのではないかという気がする。 幸田文が書いている対象について興味がある読者というのは誰なのだろう。 そして、幸田…

季節のかたみ/幸田文

幸田文の文章に惹かれている。 そう思って随筆を借りてきたのだが、ちょっと違うようだ。 悪くはないのだが、ちょっと思ったのと違うと言うか。 読者の勝手な思い込みなんだろうとは思うのだが、いまひとつに感じてしまうのは、老いの影が見える点だろうか。…

父・こんなこと/幸田文

幸田文は幸田露伴の次女である。 従ってこの「父」とは幸田露伴のことである。 幸田露伴の臨終記ともいえる表題作、その亡き父の思い出を語る随筆である。 幸田文の語り口は、東京の下町の喋りの息遣いが感じられる。 たぶん、言葉使いだけじゃなく、その背…

木/幸田文

幸田文をもう一冊。 今回も図書館で借りたのだけど、こちらの方が気になっていたのだった。 タイトルの通り、木に関する随筆である。 雑学を披露するでもなく、淡々と木に対する印象や描写で綴られ、作者の思いが込められる。 随筆とは随想、つまり心に浮か…

雀の手帖/幸田文

幸田文は幸田露伴の娘、と書いてみても、もはや幸田露伴の読者なんて、学生か年寄りだろうか。 ましてや、娘の幸田文なんて読まれていないような気がしてならない。 この随筆(あえてエッセイとは言わないでおこう)は、新聞に日々掲載されたもののようだ。 …

御馳走帖/内田百閒

先月に突然風邪をひいて寝込んだ際に再読。 2日で読みきれずにようやく読了。 相変わらずの百鬼園先生の語りが、病人には優しかった。 御馳走帖 (中公文庫) 作者: 内田百けん 出版社/メーカー: 中央公論社 発売日: 1996/09/18 メディア: 文庫 購入: 7人 クリ…

人民は弱し 官吏は強し/星新一

この本もまた図書館で借りた。 星新一の父、星一氏の伝記小説である。 面白い?面白いだろうか? 星製薬の盛衰を描いているとも言えるし、星一氏と明治日本官僚の攻防を描いているとも言える。 判官贔屓というと失礼だが手放しに、官僚は腐っている、星氏か…

男どき女どき/向田邦子

この本もまた、図書館で借りた。 歳をとって、向田邦子を読むようになった。 この本で扱われているテーマは、人生の機微のようなものだ。 歳を取ると些細なことにも涙脆くなる。 そんな些細なことに共感する自分がいる。 子供は大きな物語が好きだ。 例えば…

もらい泣き/冲方丁

この本もまた図書館で借りた。 というか、何ヶ月も本を読んでいないという状況はどうなのか。 もう、自分は本というメディアと決別するのだろうか。 と、そんなことを考える訳も無く、図書館で目についた本を借りてみた。 名前は見覚えがある。 というか、図…

怪談女の輪/泉鏡花

この本もまた電子書籍で読んだ。 まさか、泉鏡花を電子書籍で読むとは。 泉鏡花の文章には独特のリズムがあって、それに乗るとするすると頭に入ってくる。 ただ、独特の当て字というか、創作文字がインターネットの世界では再現できない。 そもそも、康煕字…

真景累ヶ淵/三遊亭円朝

この本もまた電子書籍で読んだ。 すっかり手放せない。 怪談の古典で、因果応報で連なっていく殺人話。 何が恐いかって、この世の因果ってこと。 真景累ヶ淵 作者: 三遊亭円朝 発売日: 2012/09/27 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 真景累ヶ淵…

安吾巷談/坂口安吾

この本もまた電子書籍でよんだ。坂口安吾による、時事ネタのエッセイである。 たいしたことを書いてるとも思わないが、引き込まれてしまうのは語りの上手さが出ているような気がする。 坂口安吾の軽妙な語りの裏に隠れているものは、鋭い触ったらすぐ切れて…

怪談牡丹灯籠/三遊亭円朝、鈴木行三、若林玵蔵

この本もまた電子書籍である。 有名な怪談なのだけれど、初めて読んだ。 円朝の語り口が伝わってくる。 魑魅魍魎が跋扈するというよりは、因果応報の世界の中で、人の念の愚かさや恐ろしさが主題だろう。 だから同じようなエピソードが繰り返される。 それが…

妖怪研究/井上円了

妖怪を分類したもの。 この本もまた、電子書籍でよんだ。 妖怪研究 作者: 井上円了 発売日: 2012/10/05 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る

妖怪学一斑/井上円了

妖怪学についての講演会を文字に起こしたもの。この講演会では、ジンクスや符丁について語っている。 妖怪学一斑 作者: 井上円了 発売日: 2012/10/05 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る

子に与ふ/北一輝

北一輝の遺言である。電子書籍で簡単に手に入るので読んでみた。日本改造法案大綱を読むかは分からない。 子に与ふ 作者: 北一輝 発売日: 2012/10/01 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (1件) を見る