雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

随筆

声の狩人/開高健

図書館で眼に留まった。 ぱらぱら捲ると、アイヒマン裁判の傍聴記が入っていたので借りてみた。 この本は、アイヒマン裁判中のイスラエル、核実験後のモスクワ、そして東ベルリンから西ベルリンへの移動、アルジェリア紛争中のパリ、そしてサルトルとの対談…

ちぎれ雲/幸田文

この本は幸田露伴の思い出を、娘である幸田文が綴ったエッセイを集めたものだ。 幸田露伴がどのような人物だったのか、ということよりも、幸田文が父をどう思っていたのか、ということが伝わってくる。 しかも幕末生まれ、明治育ちの男が、娘と二人でどのよ…

13歳は二度あるか/吉本隆明

この本はおそらく口述による本だろう。 子供向けというほど子供向けでもないが、比較的平易な言葉で語っている。 13歳だった自分がこの本を手に取ったかと言うと、そうは思わない。 では、その頃の自分の周りにいた誰かがこの本を薦めただろうかと言うと、そ…

ひとり暮らし/谷川俊太郎

久しぶりに読み返してみる。 この本に収められた「ひとり暮らしの弁」「私の死生観」といったエッセイを読むと、老いるのも悪くはないと思う。 飄々とした軽やかさが羨ましい。 いつ頃だったか、老人になりたいと、周囲に言いちらかしていた時期があったのを…

偶然のチカラ/植島啓司

植島啓司の名前を知ったのは、1980年代のニューアカブームの頃にあった雑誌の「GS le gaya scienza」ではなかったかと記憶している。 もう私の手元にも無いので確かめようもないし、そもそも雑誌自体が忘れられた存在になってしまったことだろう。 それは…

サド侯爵の生涯/澁澤龍彦

この本を読んだのは、高校生ぐらいだったろうか。 当時どう思ったのかは、もう覚えていない。 だが、こうして未だに手元に残してあるということは、やはり感銘を受けたのだと思う。 表題の通り、サドの評伝である。 澁澤龍彦はサドの何を評価しているのか。 …

蔵書家の話/内藤湖南

内藤湖南の中国論を読んでみようと思った。 しかしほとんどが絶版で、手に入る本は少ない。 内藤湖南は明治の東洋史学者である。(wikiはコチラ) ふと青空文庫で探してみることを思いつき、探してみると幾つか見つかる。 こういう時、青空文庫は便利だと思…

街場の現代思想/内田樹

この本もまた図書館で借りた。 正直に言えば、内田樹については食わず嫌いであった。 「街場の」シリーズや「日本辺境論」といった著作のタイトルから、何となく敬遠してしまっていた一方で、レヴィナスの著作の翻訳を手がけていることから、読むべきだろう…

安部公房とわたし/山口果林

この本もまた図書館で借りた。 予約を入れたのが2月で、6月にようやく順番が回ってきた。 安部公房のプライベートの姿を垣間見る本、ではなく、女優・山口果林の半生を綴った本だろう。 たまたま、安部公房がそこにいただけだ。 こともなし。 安部公房とわた…

書を捨てよ、町へ出よう/寺山修司

この本のタイトルが好きだ。 自分としてはむしろ、書を携えて、町へ出よう、なのであるが、あえてさかしまなことを言われると気になる。 この本は、寺山修司のアジテーションであり、お涙頂戴的なエッセイだ。 いまさらどれも真に受けるようなものではないこ…

堕落論/坂口安吾

この本は幾度と無く読み返してしまう。 そして読み返す度に沁みてくるようだ。 何故もこう読み返すのか考えてみると、言っていることが分かりやすいからだろうと思う。 もっと言えば、率直なのだと思った。 韜晦や反語や皮肉ではなく、直截な言葉なのだと思…

名人は危うきに遊ぶ/白洲正子

この本もまた図書館で借りた。 向田邦子の本には年齢のシンクロニシティに呼ばれたのだとしたら、白洲正子の本に呼ばれたのは何だろうか。 名家の娘であり、稀代の実業家の妻であり、趣味も生活も接点など無い。 それでも草木を愛で、季節を楽しむ姿には、何…

夜中の薔薇/向田邦子

この本もまた図書館で借りた。 この本を書いたのは、どうやら今の自分と同年代のようだ。 自分の周りの同年代の友人たちは、それぞれがそれぞれの生活に忙しく、会う機会も少ない。 学生の頃のように、ただ会って無為に時間を潰すようなことも無い。 だから…

江戸はネットワーク/田中優子

この本もまた図書館で借りた。 江戸時代の社会構造は封建制だと学校では習ったと思うが、武家社会や公家社会や町民社会など、さまざまな権力構造が多層的に入り組んでいたのではないかと思う。 それらの様々な社会を横断する俳諧、狂歌、黄表紙、浮世絵、芝…

鴎外随筆集/森鴎外

この本もまた図書館で借りた。 森鴎外はとんと縁が無かったのだけれど、たまにちょっと読んでみたい気にさせられる。 小説だけでなく、随筆も読んでみようかと思った。 そういった本を読むのには、図書館が便利だ。 この本は、鴎外の随筆をいくつか集めてい…

ひきこもれ/吉本隆明

45年ぶりの大雪だったのだとか。 朝から雪かきで疲れたので、午後は家の中でちょっとした合間に読書。 この本は晩年の吉本隆明氏の著作である。 著作というより、インタビューをまとめたものらしい。 「ひきこもり」に対する吉本氏の考えは、二つの方向に向…

本は、これから/池澤夏樹 編

これもまた、図書館で借りた。 紙の書籍と電子書籍が今後どうなるか、というテーマについて37人のエッセイである。 肯定派、否定派、楽観論、悲観論、様々な立場の様々な意見の寄せ集めである。 書籍とは何か、ということは、それぞれであるということが判る…

父の詫び状/向田邦子

年末年始で図書館が休館中。 かといって、これといって読みたい本も見つからず。 家人の蔵書に手を出してみた。 とはいえ、向田邦子氏が脚本家であることぐらいしか知らない。 小学生の頃、NHKのTVドラマで「阿修羅のごとく」を観ていたのだが、それが向田邦…

酒道入門/島田雅彦

島田雅彦氏と言えば「優しいサヨクのための喜遊曲」ぐらいしか読んだことがないかもしれない。 (しかも今は亡き福武文庫だった気がする) この本は図書館で新書棚を物色している中で見つけた。 茶道のように酒道なるものを目指している、というようでもあり…

象を洗う/佐藤正午

どういう訳か、この本をインド旅行記だと思っていた。 図書館で借りるときに、ぱらぱらっと中を見ているにも関わらずである。 そそっかしいとかいうレベルではない。 いつまでたっても、小説家としての日常や、佐世保のことは語られるのに、インドに向かう気…

漢字百話/白川静

ようやっと、読み通した気がする。 というのは、後半の方は初読の様な気がしたからだ。 文字通り100本の漢字に関する随筆だ。 前半は漢字に籠められている、古代中国の呪術的世界の記述である。 気持の良いくらい断定的に書かれているので、恐らく付いて行け…

恐怖について/海野十三

短いながら、なかなか面白いエッセイだ。 恐怖とは何かを考察するのではなく、恐怖する実例を挙げていくだけだ。 その中身について書いてしまうと、ネタバレになるのでここでは引用しない。 なるほどと思うものもあれば、そうだろうかと思うものもある。 何…

人体解剖を看るの記/海野十三

フィクションではない海野十三を読んでみようかと思って、これを見つけた。 タイトルの通り、警察の司法解剖を見学した際のことが書かれている。 どういう経緯で書かれたのか、何の雑誌に発表されたのかわからないが、野次馬的な、読者の興味を惹こうとする…

安吾巷談/坂口安吾

実はKindleではなく、Koboアプリで読んだのだが、まあいいか。 時事ネタを書き流している感じの随筆。 だが、その舌鋒は鋭く、容赦ない。 いつもの安吾節だ。 終戦後の新宿、上野、熱海、伊東、新小岩といった辺りが登場する。 安吾巷談 01 麻薬・自殺・宗教…

心/ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)

どうやら、ラフカディオ・ハーンを誤解していたようだ。 どこかで、ヴェンセスラウ・デ・モラエスと混同していたのだと思う。 しかも、どちらがどうだったのか忘れているような始末の悪さだ。 ともあれ、ハーンを読んで思ったのは、案外、政治的な言説が多い…

転がる香港に苔は生えない/星野博美

古本屋で見つけて散々悩んだ挙句買うことにした。 星野博美氏の代表作のようだ。 中国返還前後の香港に滞在した記録である。 紀行でもなく、ガイドブックでもない。 日々起こる出来事が記され、香港という都市、香港人という人々、といったものが浮かび上が…

銭湯の女神/星野博美

以前、ぼうふら漂遊日記で紹介されていた星野博美氏の本を見つけたので買ってみた。 確かに面白い。 読み終えるのが惜しい本だった。 そして、ほぼ同年代だった。(私が数年下っぽい) 今のこの世界に対する違和感だとか、その一方で「私は世界に加担してい…

海からの贈物/アン・モロウ・リンドバーグ

これもまた、古本屋で衝動買い。 翻訳が吉田健一だったので、どんなものかと買ってみた。 リンドバーグ夫妻のことを知らなくても、何をか期待してしまうのは已むを得ないだろう。 この本は、浜辺の貝殻に事寄せて、女性の生き方を語るといった内容だ。 それ…

馬敗れて草原あり/寺山修司

ふらっと立ち寄った古本屋で、105円で買った。 もともと競馬には興味が無い。 だが、寺山修司の筆致によって、そこに何かがあるような気にさせる。 たかが馬の競走、ということではなく、だが、データに基づいた予想ゲームということでもなく、人生の悲哀を…

鶉衣/横井也有

以前から気になっていたのだが、なかなか手が出せないでいた一冊。 江戸時代の俳人である横井也有による随筆といったものか。 もっとも、本人は出版するつもりがあったのかなかったのか判らないが、埋もれていたのを大田南畝が発掘し出版したものだという。 …