雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

随筆

漢字百話/白川静

ようやっと、読み通した気がする。 というのは、後半の方は初読の様な気がしたからだ。 文字通り100本の漢字に関する随筆だ。 前半は漢字に籠められている、古代中国の呪術的世界の記述である。 気持の良いくらい断定的に書かれているので、恐らく付いて行け…

恐怖について/海野十三

短いながら、なかなか面白いエッセイだ。 恐怖とは何かを考察するのではなく、恐怖する実例を挙げていくだけだ。 その中身について書いてしまうと、ネタバレになるのでここでは引用しない。 なるほどと思うものもあれば、そうだろうかと思うものもある。 何…

人体解剖を看るの記/海野十三

フィクションではない海野十三を読んでみようかと思って、これを見つけた。 タイトルの通り、警察の司法解剖を見学した際のことが書かれている。 どういう経緯で書かれたのか、何の雑誌に発表されたのかわからないが、野次馬的な、読者の興味を惹こうとする…

安吾巷談/坂口安吾

実はKindleではなく、Koboアプリで読んだのだが、まあいいか。 時事ネタを書き流している感じの随筆。 だが、その舌鋒は鋭く、容赦ない。 いつもの安吾節だ。 終戦後の新宿、上野、熱海、伊東、新小岩といった辺りが登場する。 安吾巷談 01 麻薬・自殺・宗教…

心/ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)

どうやら、ラフカディオ・ハーンを誤解していたようだ。 どこかで、ヴェンセスラウ・デ・モラエスと混同していたのだと思う。 しかも、どちらがどうだったのか忘れているような始末の悪さだ。 ともあれ、ハーンを読んで思ったのは、案外、政治的な言説が多い…

転がる香港に苔は生えない/星野博美

古本屋で見つけて散々悩んだ挙句買うことにした。 星野博美氏の代表作のようだ。 中国返還前後の香港に滞在した記録である。 紀行でもなく、ガイドブックでもない。 日々起こる出来事が記され、香港という都市、香港人という人々、といったものが浮かび上が…

銭湯の女神/星野博美

以前、ぼうふら漂遊日記で紹介されていた星野博美氏の本を見つけたので買ってみた。 確かに面白い。 読み終えるのが惜しい本だった。 そして、ほぼ同年代だった。(私が数年下っぽい) 今のこの世界に対する違和感だとか、その一方で「私は世界に加担してい…

海からの贈物/アン・モロウ・リンドバーグ

これもまた、古本屋で衝動買い。 翻訳が吉田健一だったので、どんなものかと買ってみた。 リンドバーグ夫妻のことを知らなくても、何をか期待してしまうのは已むを得ないだろう。 この本は、浜辺の貝殻に事寄せて、女性の生き方を語るといった内容だ。 それ…

馬敗れて草原あり/寺山修司

ふらっと立ち寄った古本屋で、105円で買った。 もともと競馬には興味が無い。 だが、寺山修司の筆致によって、そこに何かがあるような気にさせる。 たかが馬の競走、ということではなく、だが、データに基づいた予想ゲームということでもなく、人生の悲哀を…

鶉衣/横井也有

以前から気になっていたのだが、なかなか手が出せないでいた一冊。 江戸時代の俳人である横井也有による随筆といったものか。 もっとも、本人は出版するつもりがあったのかなかったのか判らないが、埋もれていたのを大田南畝が発掘し出版したものだという。 …

トリエステの坂道/須賀敦子

仕事帰りにふらっと図書館に寄って何となく借りてみたうちの一冊。 須賀敦子氏はアントニオ・タブッキの翻訳で知った。 この本は須賀氏自身がイタリアに暮らしていた頃の思い出であり、その後も含めた家族のエピソードを基にしたエッセイである。 その筆致は…

愛をひっかけるための釘/中島らも

仕事帰りにふらっと図書館に寄って何となく借りてみたうちの一冊。 中島らも氏に特別の思い入れも無い。 亡くなってもう十年近く経つようだ。 この本は回想を中心とした、肩の力の抜けたエッセイだった。 それでも、ブルトン、フーコー、バタイユ、デュシャ…

裸婦の中の裸婦/澁澤龍彦、巌谷國士

澁澤龍彦氏の最晩年のエッセイである。 架空の対話形式で、裸婦を扱った絵画を縦横無尽に語っている。 かつてのような、ある種の教養主義的なトーンはなりを潜め、呑み屋での雑談のように軽やかだ。 連載の途中で病に倒れたため、巌谷國士氏が引き継いでいる…

マルジナリア/澁澤龍彦

マルジナリアとは、本の余白への書き込み、傍注といったことらしい。 気の向くままに綴られたエッセイは特に統一感も無く、思いついたことを書いている風だ。 とはいえ、古今東西の話題に飛ぶのは、いかにも澁澤らしい。 しかし、河出文庫の手帖三部作のよう…

遠い朝の本たち/須賀敦子

須賀敦子氏の本を読むのは初めてだが、アントニオ・タブッキの翻訳でその名前は以前から知っていた。 この本は、本好きのためのエッセイといっても良いだろう。 須賀敦子氏の本への愛情があふれている。 あまり付け加えることは無い。 遠い朝の本たち (ちく…

人生論/岡本かの子

図書館で目に留まったので借りてみた。 岡本かの子を読むのも初めてだし、人生論なんてタイトルの本は、敬遠して手に取ったことは無い。 なのに、目に留まったということは、年を取ったということかもしれない。 だが読んでみて、何が言いたいのかさっぱり入…

科学と抒情/赤瀬川原平

確か記憶だと、ユリイカに連載されていた。 懐かしく読み返しもするのだけれど、細部は忘れていることも多い。 その中でも、広瀬隆についての話題が、気に留まった。 広瀬隆の顔が、前にも増して受難者の顔となっていると言う。 いろんなものを背負い込んで…

回転どあ・東京と大阪と/幸田文

図書館で何となく借りてみた。 例えばこういった随筆を読んでいると、作者の生活がふっと見えるような気がする時がある。 そのイメージが合っているのか判らないが、自分の中の過去の映像と重なるように見える。 そこには作者の生活や思いが入っているからだ…

美女・女靴下の話・秋の暮/西東三鬼

いずれも青空文庫に入っており、koboで読めるのだが、はまぞうで持って来れないということは、Kindleには入っていないと言うことか。 それはともかく、西東三鬼の随筆三篇を読んでみた。 「美女」は、西東三鬼が一目惚れした女の話、「女靴下」はちょっと奇…

文鳥・夢十夜/夏目漱石

なかなか読み終わる本が無いので、合間に電子書籍で「文鳥」を読み返してみた。 けだし名品である。 いまさらそんなことを改めて言う必要も無いくらいだが、やっぱり名作だと思った。 興味があった訳ではなかったのに、鈴木三重吉に勧められて、夏目漱石は文…

易の占いして金取り出したること・失うた帳面を記憶力で書き復した人/南方熊楠

南方熊楠までもが青空文庫になっているとは、ちょっと驚きだ。 今年からは、柳田國男も入ってくるだろうか。 内田百けんは入っていない。 それはともかく。 この本は、というよりこの随筆2篇と言った方が良いだろうか、南方熊楠がこんな話がある、という感…

だしの取り方/北大路魯山人

またしても電子書籍。 そして只。 「何でも鑑定団」でお馴染みの、魯山人である。 内容はタイトルの通りの薀蓄なので、特に取り立てて言うことも無し。 読みたい本が無いときのつなぎに、こういった電子書籍は役に立つかもしれない。 だしの取り方作者: 北大…

此処彼処/川上弘美

図書館で借りてみた。 川上弘美氏はこれで三冊目ぐらいだろうか。(めんどくさいから数えない) 場所をめぐるエッセイである。 この本もまた、さらりと読み流せる。 自分の場所なるもの、それについて書くのかと思いきや、するすると別の方向に滑り出してい…

女流阿房列車/酒井順子

図書館で借りてみた。 著者のことは全く知らない。 「阿房列車」というタイトルに惹かれただけのことだ。 だが、読んでみると、これがなかなかに面白い。 軽くさらりと読み流せる。 自称の乗り鉄のようだが、車中で爆睡していたり、うんざりしていたり、何だ…

日本の島々、昔と今。/有吉佐和子

本屋で見かけてちょっと気になったので、図書館で借りてみた。 そもそも有吉佐和子氏を読むのは、これが初めてである。 あまり手が延びない類の作家だ。 苦手ということでもないのだけれど、あまり興味をそそられないと言うか。 だいたい、他の著作を訊かれ…

新編 綴方教室/豊田正子

本屋で立ち読みして、鶏を絞める件を読んで、ちょっとだけ気になったので図書館で借りてみた。 豊田正子氏の「綴方」の授業の成果を本にまとめたもののようだ。 拙い文章だったのが、みるみる長さが伸びて行き、表現が豊かになってゆく。 事実の羅列だったと…

方丈記/鴨長明

何となく取り出して読んでみる。 鎌倉時代の古文とは言え、原文でもほんの数時間で読めてしまう。 確か高校生の時にも、日曜日に一日で読み終えたのだった。 いまさら内容や作者について書く必要も無いだろう。 作者が60歳の頃に書いたようだ。 果たして自分…

面白半分/宮武外骨

果たしてこの本が随筆なのかどうか、読み終わってからさえも疑問ではあるのだけれど、さすれば随筆とは何ぞやと疑問を呈してみたところで何ら答えを持ち合わせているわけでもなく、日常の細々とした事を徒然に書き散らすものだけが随筆とは限らないのだから…

チャイナ・ヴィジュアル/中野美代子

確か持っていたはずと探したら、本棚の一番上の隅の方にあった。 この本は、1999年に出版された。 内容は大きく3つのブロックに分かれている。 エキゾティシズム クロノス・ヴィジュアル スクリプト・ヴィジュアル エキゾティシズムのブロックでは、清朝の宮…

雀の手帖/幸田文

何とはなしに、図書館で借りてみた。 西日本新聞に連載されていたようだ。 こういった随筆はどう捉えるのか、よく判っていない。 幸田文は幸田露伴の娘であり、明治生まれの女性である。 自分の母方の祖母が、明治生まれだったことを思い出すのだけれど、な…

甘酸っぱい味/吉田健一

何となく図書館で借りてみたのだけれど。 昭和32年に熊本日々新聞に、吉田健一が連載したエッセイらしい。 時代背景を鑑みると、なるほどと思っても良いかもしれないが、ちょっとどうなんだろうと思わなくも無い。 正直なところ、あまりピンと来なかったのだ…

キリコのコリクツ/玖保キリコ

本本堂から出ていた5冊のうち、最後に刊行されたっぽいのが、この本である。 当時は、「シニカル・ヒステリー・アワー」を読んでいたので、買ったのだろう。 ちょっと変わった視線で日常を捉える、といった感じ。 特筆すべきは、坂本龍一、矢野顕子、玖保キ…

日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ/森下典子

何だか何を読みたいのかよく判らない日々だ。 ビジネス書や哲学書を読みかけては止めて、読み通せずにしまってしまう。 久しぶりにこの本を引っ張り出して読んでみる。 著者については全く知らない。 この本に書かれているのは、茶道を通して発見した気づき…

三島由紀夫おぼえがき/澁澤龍彦

ふと思い立って、読みかえした。 結局のところ、高校生の自分は、澁澤龍彦経由で三島由紀夫を理解していたのではないか、と思った。 逆を返せば、澁澤龍彦を経由しないでは、三島由紀夫に興味は持たなかった、ということかもしれない。 いささかセンチメンタ…

街のはなし/吉村昭

筆者の吉村昭氏については、全く知らない。 図書館で何となく手にとって、少し拾い読みをして借りてみた。 こうして随筆を続けざまに読み比べてみると、その人の素養の違いが気になってしまう。 この本の場合、どうにも吉村氏の決めつけのようなものが、気に…

夕顔/白洲正子

実は、白洲正子氏の本を読むのは、これが初めてである。 いままで、何となく敬遠していたのだ。 だが、読んでみると、普通な感じがした。 それは、今まで接していただいていた、年配の方々の感覚に近い。 その口がさの無い言い方や、物の見方は、身の回りに…

使いみちのない風景/村上春樹、稲越功一

村上春樹氏の短いエッセイが3篇と、稲越功一氏の写真58点による本である。 恐らくエッセイが先にあって、写真を選んだのだろうと思う。 もちろん、エッセイを説明するような写真ではない。 だが、このように構成してしまうと、エッセイに対して写真は説明的…

人生の短さについて/セネカ

セネカはローマ時代の哲学者。 この本には、「人生の短さについて」「心の平静について」「幸福な人生について」の3篇が収められている。 乱暴にまとめてしまえば、他人に振り回され自分自身に配慮しない人生は短く感じるということ、善きことに自信を持っ…

日本ぶらりぶらり/山下清

いまさら山下清氏について、説明する必要も無いだろう。 この本は、山下清氏が自身の放浪の思い出を綴った本のようだ。 本文に度々登場する「式場先生」とは、精神科医の式場隆三郎氏であろう。 それにしても、山下氏の語り口は不思議だ。 何かについて語っ…

僕が2ちゃんねるを捨てた理由/ひろゆき(西村博之)

図書館で背表紙が他の新書と色が違っていたので手に取った。 さしたる興味も無く、ただ読んでみる。 そして、感想も感慨も無く、今困っている。 僕が2ちゃんねるを捨てた理由 (扶桑社新書 54)作者: ひろゆき出版社/メーカー: 扶桑社発売日: 2009/05/29メディ…

田舎暮らしができる人できない人/玉村豊男

たまにはこんな本も読んでみる。 仕事に疲れているようだ。 田舎暮らしができる人 できない人 (集英社新書)作者: 玉村豊男出版社/メーカー: 集英社発売日: 2007/04メディア: 新書購入: 1人 クリック: 49回この商品を含むブログ (18件) を見る

自省録/マルクス・アウレーリウス・アントニヌス

昨年末に読んだ四方田犬彦のブックガイドで薦められていた一冊なので、図書館で借りてみた。 哲人皇帝として知られる人物とのことだが、あまり人物自体に興味は無い。 むしろ、その数代後に登場するカラカラ、ゲタ、ヘリオガバルスといった、暗殺や謀略にま…

孤独な散歩者の夢想/ジャン=ジャック・ルソー

引き続きルソーを読む。 この本は最晩年の著作らしい。 何故この本を買ったのか、もう覚えていないのだけれど、ろくに読まずに本棚に残っている。 もしかすると、江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』と勘違いしたのだろうか? だとすると、相当間抜けな話だ。 ル…

堕落論/坂口安吾

例えば この世の森羅万象の全てを知ることが可能か、と考えてみる。 既に、考えるより先に、それは不可能だと思っている。 では、その森羅万象のうち、知るべき事を知るべきなのだろうか、と考えてみる。 だが、知るべき事という言い方そのものの裡に、教育…

人間を守る読書/四方田犬彦

本について書かれた本について書くのは、どういうことか。 本について書くのは、どの本を選ぶか、その本をどのように書くのか、ということであり、本について書かれた本について書くのは、その術を知る、または再認識することなのではないだろうかと思ってい…

国道の謎/松波成行

バイクでのツーリングの醍醐味の一つに、地図を見ながら走行ルートを考える、というのは含まれていると思う。 だから、出発前に全ルートを決めてしまうのは、席に着いた途端にコース料理を全て食べようとしてしまうようなものだ。 地図を見ながら、迷いなが…

民俗学の旅/宮本常一

宮本常一の自伝である。 その平易で気負いの無い語り口で、すいすい読めてしまう。 山口県周防大島に生まれ、やがて柳田國男、澁澤敬三に導かれ、民俗学の徒となる。 だが、この本に書かれているのは、その生涯の一部分にすぎない気がした。 もちろん全てを…

おぼれる人生相談/松浦理英子

ふらりと寄った古本屋で、久しぶりに松浦理英子の名前を見つけたので購入した。 雑誌に連載していた人生相談らしい。 世の中には様々な人がいて、それぞれの事情があって、いろんな悩みを抱えている。 そういえば、人生相談というものが苦手だった、というの…

サンカの真実 三角寛の虚構/筒井功

サンカとは何者か、三角寛とは一体誰か、それらについて何らか知らなければ、この本を読もうとは思わないだろう。 サンカとはどんな人々だったのか、という点については、あまり明らかになってはいないのが現状のようだ。 だが、そういった人々について、判…

続百鬼園随筆/内田百けん

例えば、何か本が読みたいと思う時、どう選ぶのかは悩ましい問題だと思う。 誰が読みたい、とか、何が読みたい、などと意識しているのならばともかく、ただ何となく何かが読みたいという時に何を選んだらいいのだろう。 とりあえず手にとって、パラパラとめ…