雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

紀州 木の国・根の国物語/中上健次


久しぶりに訪れたい場所

一人暮らしの頃は、時々、バイクでふらりと一人旅をしていた。
東京から出発すると、数時間は高速道路を飛ばさないと、遠くまで行くことはできない。
高速道路は風圧と退屈に耐えることが必要で、すぐにサービスエリアで煙草を吸ってぶらぶらしているようでは、いつまでも似たようなところまでしか行けやしない。


紀州 木の国・根の国物語 (角川文庫)

紀州 木の国・根の国物語 (角川文庫)


中上健次は大学生の頃、とある友人から薦められたのだが、その頃はなんだかまどろっこしいように思えて、あまり興味を引かなかった。
それから社会人になり、ふと短編集を手にとって読んでみると、どんどん引きずり込まれてしまった。
ふと、熊野という土地、景色、空気を感じてみたくなり、バイクで熊野に行くことを思い立った。

結果として、自分の身体で感じた熊野の印象と、この本で中上健次が辿っている熊野は、まったくの別物であった。
どちらが真実かとか、どちらが優れているとか、そういうものではなく、この本は中上健次が熊野という土地から、物語を紡ぎだそうとしている姿が見える。

また熊野に行ってみたくなった。