雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

その夏の今は・夢の中での日常/島尾敏雄


日常と非日常の逆説


もうすぐ終戦記念日だからという訳ではないが、島尾敏雄なんぞを引っ張り出してみた。この本においては、終戦直前の著者の体験が下敷きになっているらしく、戦争という非日常が日常となったものが、終戦という形で転換されることで、逆説的に非日常に見えてしまう瞬間、例えば、特攻隊としての死への意識だとか、隊員達のモラルだとか、そんな日常と非日常の転換を捕らえている。そしてそれが夢の中のようなエクリチュールに乗せて展開している。実はシュルレアリスムは、こういった戦争文学と相まみえる事ができないと思っている。戦争体験という壮大な非日常の前では、日常の裂け目としての非日常は、あまりに違いが大きすぎるのだ。だが一方でそれは集団的無意識の発露、普遍経済学の蕩尽、といった観点では同列に捉えられるのだ。