雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

豚の戦記/アドルフォ・ビオイ=カサーレス


これも所詮は物語

豚の戦記 (集英社文庫)

豚の戦記 (集英社文庫)


この本における「豚」とは老人であり、「戦記」とは若者による老人狩りである。それだけでも、不快でダークな物語である。かといってヒーローやヒロインが活躍するファンタジーではなく、6月のブエノスアイレス(南半球なので冬)での1週間が、6人の老人を中心に暗く描写されている。以前読んだときは、老人問題の核にあるのは、老人が自分が老人であることを意識していないことにある、という印象だったのだが、改めて読むと、これは排除の集団心理の寓話であり、不満のくすぶりと捌け口の有り得そうな物語ということかもしれない。マグリットの絵のような、フィクションなのだけど、妙に現実感がある、ある種、シュルレアリスティックな物語と言えなくも無いのではないか?と感じる。