雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

東京レクイエム/猪瀬直樹、北島敬三


あれから

東京レクイエム (河出文庫)

東京レクイエム (河出文庫)


平成ももうすぐ20年が過ぎようとしている。この本は、その昭和から平成に変わる瞬間の記録である。元号が変わること、メディアの自粛、イメージとしての昭和天皇、とても奇妙な雰囲気と行動様式が、日本全体を覆っていた時間である。象徴としての天皇という物語も、日本の近代化における天皇制の上に接木されており、そこにあるのは曖昧な法制史とイメージ化の戦略が見え隠れしている。はじめから天皇という存在を利用した明治政府樹立に向けた国内政治戦略があり、帝国主義列強の中での存在感を示すための国際政治戦略を経て、平和の象徴としてのイメージ戦略へと繋がって来ている。近代天皇制を擁護するのも反対をするのも、虚構に立脚した主張に見えるし、そこで繰り広げられるのは、何かのカモフラージュのための口実にさえ見えてしまう。過去に遡ると天皇は政治権力の中核であり、文化的ヒエラルキーの頂点に君臨していた。それは、近代天皇制とは、あまりにかけ離れていないだろうか。遠い未来から見て、明治以降のこの百年余りは、何時代と想定するのだろう?