雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

ミッドナイト・コール/田口ランディ


描かれない

ミッドナイト・コール (PHP文庫)

ミッドナイト・コール (PHP文庫)


この本に出てくる主人公の女性たちに対して、何か共感できるかというとそうでもない。脇役としての男性たちに、思い当たるふしがあるかというとそうでもない。この本における主人公たちは、女性という聖痕があるかのように、わがままだったり、淋しがったりする。試しに主人公たちが男だと仮定しても、物語は何となく成り立たないのだ。主人公が女性であることで成立する物語はそれは物語なのだろうか?それを読むということはどういう意味があるだろうか?主人公の女性たちは、男性に向いているようで、実は自分たちの中に向いている。男性を求めつつも、それは自己の投影された影でしかないような男性であり、鏡像であるか否かぐらいの差異でしかないような影なのだと思う。誰かを求めているようなに見せかけて、自分の中に向いてしまっているような、そういう物語に見える。思い通りに世界を欲望するということ。相手に欲情しているようで欲情する自分に溺れること。これらの物語で描かれないのは、主人公以外の全てなのだと思う。