雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

江戸アルキ帖/杉浦日向子


架空の旅行

江戸アルキ帖 (新潮文庫)

江戸アルキ帖 (新潮文庫)


日記風に江戸時代を散歩したという架空の旅行記とでも言えるか?
杉浦日向子の描く江戸時代は、フィクションとノンフィクションの違いが何かは置いておいても、ある種のリアリティと虚構が交じり合ったひとつの世界を作り上げている。
綿密な時代考証に裏打ちされたホラ話に近いようなもの、かも知れない。
時間旅行し江戸の町を散歩し、日記風につづっていくというこの本は、ある種の架空の旅行記のように思える。
そこにあるのは、現在への警鐘だろうか?
それとも、失われたものだけを愛しむ退廃趣味だろうか?
そうではない、江戸時代を現在と地続きの世界として捉えるだけでない、ある種のユートピアについての物語として楽しむべき世界が描かれているような気がする。