雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

フェルナンド・ペソア最後の三日間/アントニオ・タブッキ


そして消え行くもの

フェルナンド・ペソア最後の三日間

フェルナンド・ペソア最後の三日間


フェルナンド・ペソアポルトガルの詩人であるが、その生涯の最後の3日間を、イタリアの小説家であるアントニオ・タブッキが小説にした、という作品。
ペソアは幾つもの異名を使い、詩を書いていた。
この小説では、その異名者たちが、ペソアに最後の別れを告げに訪れる。
異名とは何か?
異名を使って詩を書くこととはどういうことか?
そして、タブッキはそこに何を見出しているのか?
それが主題であり、小説が描かないことで示している何かを考えてしまう。
異名者はおそらくある種のゲームなのだ。
異名者を作り出すこと、異名者に語らせること、そして自分の存在を消してしまうこと、それらは小説の枠組みにおける作者という特権的な立場を否定することでは無いだろうか?
異名者たちよって存在していたペソアは、その最後の3日間に異名者のいない世界へと入って行く。
この小説は小説ではない。