雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

転々/藤田宜永


多すぎると足りなくなる

転々 (新潮文庫)

転々 (新潮文庫)


ちょっともったいない感じがした。
物語としてぐいぐい引き込まれてよくできているのだけれど、もっと絞り込むと主人公2人が際立つのになぁ、と思う。
借金を背負った大学生と借金取りの中年が、東京を散歩しながら霞ヶ関を目指す。
そこには2人の思惑と駆け引き、そして取り巻く事情が絡み合うのだが、絡みすぎてもったいない。
必然と偶然、諦めと抵抗、そういった人生における人を動かす力を、散歩の中で象徴的に描く。
歩くことは人生そのもので、そこで起きる出来事と主人公たちの動きが寓話的に見えてくる。
そんな物語にもなり得るような気がするのだが、何かが足りない、というかテーマが多すぎてぼやけてしまっているような気がする。
映画にもなっていたが、その辺はどうなのだろうか?
だが、読み終わった後、自分でも散歩したくなるのだった。