雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

トマソン大図鑑〈無の巻〉/赤瀬川原平


不意に現れて

トマソン大図鑑〈無の巻〉 (ちくま文庫)

トマソン大図鑑〈無の巻〉 (ちくま文庫)


トマソン」は、もう忘れ去られてしまっただろうか?
ここに纏められているのは、数々のトマソンである。
「無用階段」「ヒサシ」「無用窓」など、それらには作者はなく、それを受け止める者の視線があるのみだと言えよう。
ある意味、この本は写真集である。
見開いた左に、写真が並ぶ。
見開いた右には、その「物件」についてのコメントが書かれている。
左側だけ眺めると、それはありふれた街角の写真であろう。
トマソン」の概念を持って、写真を、街角を眺めることで、「トマソン」は成立する。
俗化された、珍風景ではない何かを、そこに読み込んでいこうとしている様だ。
つまりトマソンは、ある特異点として、不意に現れた後、日常の中に「おもしろいモノ」として消えていったのだろう。
まるで、シュルレアリスムが、シュールとして消えていったように。