不意に現れて
- 作者: 赤瀬川原平
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1996/12
- メディア: 文庫
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「トマソン」は、もう忘れ去られてしまっただろうか?
ここに纏められているのは、数々のトマソンである。
「無用階段」「ヒサシ」「無用窓」など、それらには作者はなく、それを受け止める者の視線があるのみだと言えよう。
ある意味、この本は写真集である。
見開いた左に、写真が並ぶ。
見開いた右には、その「物件」についてのコメントが書かれている。
左側だけ眺めると、それはありふれた街角の写真であろう。
「トマソン」の概念を持って、写真を、街角を眺めることで、「トマソン」は成立する。
俗化された、珍風景ではない何かを、そこに読み込んでいこうとしている様だ。
つまりトマソンは、ある特異点として、不意に現れた後、日常の中に「おもしろいモノ」として消えていったのだろう。
まるで、シュルレアリスムが、シュールとして消えていったように。