雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

シュンポシオン/倉橋由美子


あの頃のありうべき未来に佇んでいるのだからせめてその頃のことを思い出してみようか

シュンポシオン (新潮文庫)

シュンポシオン (新潮文庫)


この小説の舞台は、21世紀初頭の日本である。
書かれたのは、バブルの頃だろうか。
冷戦の東西対立体制も崩壊しておらず、日本は未曽有の好景気を迎えようとし、世紀末感と熱に浮かされたような爛熟が訪れそうな気がしていた頃だろう。
社会的地位のある中年の男女を中心に、浮世離れした避暑地でのひと夏の物語である。
倉橋由美子は、何かを批判しているわけでもなく、何かに陶酔するわけでもない。
ひたすらに引用と本歌取りを繰り返し、見立てでの物語が進行する。
ある意味、江戸時代の黄表紙にも似ているように思う。
この本を読んだ頃は、まだ大学生だった。
その頃の友達のひとりは、どっぷりとはまっていて、「非真面目」を主張したりだとか、誰かれかまわず「○○さん」で呼んだりしていたのを思いだす。
この本に描かれた未来であるこの時に、あの頃この本について語り合ったあいつに会ったら、どんな話をすれば良いだろうか?