雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

ノルウェイの森〈下〉/村上春樹


どこでもない

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)


一度ずれだしたベクトルは、次第にその差を広げていくようだ。
登場人物は2つの系列に分かれており、主人公はその系列の間を揺れ動いている。
それらの系列は次第にその幅を広げ、次第に主人公の対処が怪しくなっていく。
しかし、どちらの系列にも属することが出来ず、性というフィルターで関わりあうことしか出来ない自分を自己否定すらする。
主人公のいる世界はどの場所だろうか?
人はそれぞれに固有の場所を持っている、というのは、カスタネダドン・ファン・マトゥスの言葉だったろうか?
自分の場所を持てない、あるいは、持つことを禁止されている主人公は、何処でもない場所へと追いやられ、または、逃げ込んでしまう。
物語の冒頭にあるフラッシュバックの意味は、エンディングの捉え方で複数の意味があるように思う。
何処でもない場所から生還できた、あるいは、できなかった、そして、その代償とでも言うべき存在は何か、それらを推測することが、この小説の味わい方のように思うのだ。
そういえば、近々、映画化されるらしい。(ベトナムの監督?)
どのように主人公を描くのか、ちょっと気になるところではある。