雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

沖縄文化論/岡本太郎


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沖縄文化論―忘れられた日本 (中公文庫)

沖縄文化論―忘れられた日本 (中公文庫)


沖縄とは何か?ということと、岡本太郎の眼を通すと何が見えるか?という二重のある種のトリックがとても興味深い本になっている。岡本太郎は自身の芸術観を以って、沖縄を語ろうとし、そこに観光的ではない沖縄を見出そうとする。そして沖縄を語ろうとするうちに、自身の芸術論を披瀝する。岡本太郎をして芸術観を語らしめる沖縄という存在。それは古層の日本であり、政治や権力に翻弄されつつも、しぶとく残ってきた民衆という存在と、抑圧が生み出すカタルシスとしての美意識の消え行く姿とでも言えるだろうか。その発想はバタイユの芸術論、シュルレアリスム的な現実の向こう側へと突き抜けようとする発想、そして吉本隆明の南島論にも通底しているように思うのだ。だが、岡本太郎はそんな沖縄を、やたらに持ち上げたり、貶めたりするのではなく、その眼で見たがままに捉えている。そしてそこに見出しているのは、命ふるえる瞬間としての美意識であるといえよう。