雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

闇の中の黒い馬/埴谷雄高


屡屡屡屡屡屡屡屡屡屡屡屡

闇のなかの黒い馬

闇のなかの黒い馬


宇宙、夢、観念、人間ではない存在の哲学、そういった埴谷雄高らしいテーマが詰まっている短編集である。
目に見えるものの再現ではない夢を見ること、見たこともないものを夢見ること、意識せる夢を見ること、人間という存在ではない夢を見ること、夢を見ることを巡る観念の実験とでも言うべき物語である。
それは本当に物語であるのか?
観念の実験を想像力を使って進める、そんな内容だと思った。
それは従来の小説という概念でも、むしろ小説という概念すら否定するような、埴谷雄高にしか書き得ない文章なのだと思った。
そしてその文章を読むことは、自分の知りえない領域に触れることに他ならない。
その領域の広大さ、深遠さにただ驚く他はない。