雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

老いの超え方/吉本隆明


老いの超え方 (朝日文庫)

老いの超え方 (朝日文庫)


「老いるとはどういうことか」という問題を立てて、様々な角度から語っている。
これが吉本隆明だからこその本になっている。
他の本だったか、戦争中(WW2)には優れた評論を出していた知識人たちが、戦後になって一様に何も言わなくなってしまった事について、吉本隆明は非常に不満だったと書いていた。
また、同時に吉本隆明自身はそうはならないよう、どんな時でも発言して行こうと思った、という。
確かに自分の身体が終焉に近づきつつあることを認め、精神と肉体のギャップを冷静に分析し、政府や他の人々に向かって発言していく、というその姿勢だけでもこの本は読む価値があると思うのだ。
説教じみているのでもなく、悟り澄ましているのでもなく、かといって積年の愚痴を垂れ流すのでもなく、昔ながらの吉本隆明が冷静に自分の「老いる」という現象を分析し、取り巻く環境、社会に対して発言している。
かつては「吉本隆明は既に終わっている」といった評論も見かけたが、この本を読むとそんなことは無く、やはり最先端のところ(サイバーパンク風に言うなら、エッジ)に吉本隆明はいるのだ、と思う。