- 作者: 中野美代子,武田雅哉
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1992/03
- メディア: 文庫
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これは奇書というべきだろう。
この本の編者たちは、「物語の最も卓越した語り手は国家である」という認識に至った、という。
それだけでもこの「怪談集」が非凡であることは、想像するに難くないであろう。
怪談とは何か?
「怖い」という価値観の押し付けと、その価値観からの疎外に違和感を覚えた、と編者の一人である武田雅哉は、あとがきで記している。
いわば「怪談」は前提付きの物語であり、前提が成り立たない所には、物語は成立しにくい構造のようだ。
一方、中国文学には「聊齋志異」に代表される奇譚、怪異譚の系譜はある、という。
だがそれよりも、「最も卓越した語り手」の語る物語は怖ろしいであろう。
そして、様々な文献に登場する人肉話は、どういった集合無意識の表出であろうか?
全く判らないということの怖さ、想像よりも現実のほうが怖ろしいのかもしれないと思ってしまった怖さ、そんなことを考えた。