雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

恋愛のディスクール/植島啓司


自らへの懲罰


この本は、小説であり、旅行記であり、ロラン・バルトへのオマージュであり、「宗教的なもの」の要約であるように思った。
ひとつの事件から、主人公たちの逃避行は始まり、その過程は恋愛の相似であり、各章はロラン・バルトの「恋愛のディスクール・断章」への注釈であり、物語は「宗教的なもの」によって頓挫させられる。
男から少女への恋は、過去の少女の母との思い出によって禁じられている。
少女はまだ恋を知らないという、つまり、未成熟であることで禁じられている。
少女の母は、その死によって、生前の恋を禁じられたのだ、といえる。
それらの禁忌と侵犯に引き裂かれる場から、影の存在が生まれる。
影は主人公たちを追い詰める。
だが困難な状況になるほどに、男は惹かれてゆくが、自らへの懲罰が影の存在となったのはなのでは無いだろうか?