雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

陰翳礼讃/谷崎潤一郎


ステレオタイプあるいは放言の速度

陰翳礼讃 (中公文庫)

陰翳礼讃 (中公文庫)


初めて読んだのは、高校の現国の授業だったろうか?
改めて読んでみたが、この文章は昭和初期であったことにまず驚いた。
昭和初期は現代国語の範疇なのか?という疑問が今更に思う。
そして、この本で礼賛される日本的なるモノは、ほとんど根拠もない、谷崎の印象と独断の、
しかも言わば、ステレオタイプ的な日本的なるモノに思えた。
途中で読むのを止めようかと思ったくらい、放言も甚だしい。
だが、それが逆に谷崎らしいのでは?、とも思えた。
じっくり文章を味わうのではなく、さっさと読み飛ばしていくうちに、何か書かれていることが、何かを語っているような気がしてくる。
つまり、闇に沈む色彩の美が云々、という内容そのものよりも、それと同じレベルで、恋愛がどうとか、旅先の旅館を明らかにしたいだのしたくないだの、便所が清潔かどうかだの、そういった独断を書き飛ばしていく谷崎のありようが、ちょっと面白いのだった。
読み返しはしないだろうけど。