雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

エレンディラ/ガブリエル・ガルシア=マルケス


現実と想像の混合

エレンディラ (ちくま文庫)

エレンディラ (ちくま文庫)


ガルシア=マルケスはコロンビアの作家で、ノーベル文学賞も受賞し、「百年の孤独」が最も有名であろう。
この本はそのガルシア=マルケスの短編集であり、7編の作品が収められている。
浜辺に打ち上げられた老人の天使、薔薇の香りが海から漂う寒村の老人、酷薄な行商人と虐待される弟子の少年の奇跡、強欲な祖母と過酷な運命に従う孫娘、そんなイメージの作品である。
南米諸国の作家たちの作品は、マジック・リアリズム魔術的リアリズムと評されることもある。
また、シュルレアリスムとの対比、類似という文章も見たことがある。
ガルシア=マルケスのこの本は、コロンビアの人々の(自分と比較して)過酷な生活をベースとした、寓話的に描かれる物語である。
おそらく、身元不明の老人が辿り着き追放される顛末が実際の(あるいは多分にあり得る)エピソードに対して、天使のイメージ、飛翔という奇跡を付加して描いているのだろう。
酷薄そうな行商人も、不幸そうなその弟子らしき少年も、見るからに強欲そうな老婆とその世話をしている孫娘も、幼い娼婦も、現実として存在しするのだろう。
それらに天使や奇跡や緑色の血を結びつけることは、省略された隠喩なのではないだろうか。
事物を形容するものとして結びつける際に、「のような」を意図的に消し去っているのではないだろうか。
現実と想像をあえて混合することで、物語が寓話的な色合いを帯びている、そんな風に思う。
意味が物語を紡ぎだすのではなく、イメージが物語を紡いでいるようなそんなことを思う。