雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

めぐらし屋/堀江敏幸

主人公の蕗子さんが、亡き父の遺品を整理しながら、古ぼけたノートを見つける。
そこへ「めぐらし屋」宛ての電話がかかってくる。
といった感じで物語が始まる。


物語の粗筋を書いてしまって、何か判った気になるのはやめようと思う。
この物語のキーワードは、「不在との対話」であるように思う。
主人公は亡き父に「めぐらし屋」の事を聞いてみたい、だが、父は不在である。
また依頼主にとっては、「めぐらし屋」を頼って電話をしてくるのに、不在であることを告げられる。
この物語は誰もが思った方向に進めないようだ。
従って、蕗子さんがそれを何とかしようとしてしまう。
「めぐらし屋」とは何かを追いかけることで、蕗子さんの知らない父の姿を追いかけることになる。
父を理解することで、依頼主の期待にさえ応えようという気持ちすら芽生える。


この物語は、何かを為し得ようとする姿を描くのではなく、何が為し得るのかを探す姿を描く物語なのかもしれない。


めぐらし屋 (新潮文庫)

めぐらし屋 (新潮文庫)