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雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

どくろ杯/金子光晴

ちょっと気になって確認したら、「どくろ杯」について感想を書いていなかったようなので、読み返してみる。
改めて言うまでも無いだろうが、金子光晴の自伝三部作の第一作目である。
関東大震災後の東京で、若者たちはアナーキズムコミュニズムにかぶれ、女性が自由恋愛を謳歌し始めた、そんな描写から始まる。
金子光晴自身は詩作に行き詰まっており、やがて妻となる森三千代との出会い、男女関係の縺れ、そして日本を離れ、上海、香港、爪哇と流れてゆく。
その筆致は冷酷なまでに鋭い。
老境を迎えて、若かりし頃の自伝を書いているのだから、そこには感傷が入ってもおかしくないと思うのだけれど、金子光晴はあくまで、若さという愚かさを手厳しく描いてゆく。
それは読み手が辛さを覚えるほどに容赦ない。
だが、いや、だからこそ、この本は読み飽きないのだろうと思った。
ただの思い出話ではなく、容赦なく人間の姿を見ている視線があるからこそ、その視線が読者にまで刺さってくるのだ。
この本に描かれる若い頃の金子光晴の姿のどこかに、自分に似たものが見えてくるような気がする。


どくろ杯 (中公文庫)

どくろ杯 (中公文庫)