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雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

新しい天体/開高健

関西弁で言う「けったいな」という形容詞のニュアンスは判らない。
だが、この本は、誰も居ないはずのトイレのドアをノックしたら、返事があった、という話と競るほどの、けったいな話、であるらしい。
主人公は省庁の予算確保のため日本中の美味を堪能する。
神戸、大阪、松江、釧路、四谷、松阪、高知、十和田湖、盛岡、京都、鹿児島、岡山、赤坂
絶品の料理を堪能した果てには「水」へ辿りつく。
これは何の寓話だろうか?

新しい天体 (光文社文庫)

新しい天体 (光文社文庫)

食道楽の究極は水なのだと、そういう読み方もあるかもしれない。
考えてみるに、味覚とは不思議な感覚だ。
同じものを食べているはずなのに、気分によって味が変わる。
独りで食べても、宴席で食べても、特別な時に食べても、それぞれ異なってくる。
味覚とは、一生に一度きりの体験なのかもしれない。
だがそれは味覚に限ったことではない。
音楽を聴くことだって、本を読むことだって、それはその時がただ一度きりの体験なのだと思う。
無から生じて、無へと消えていく、人の一切合財が、この本にて描かれた食道楽の示すものなのだろう。
吉田健一内田百けん杉浦日向子とも違った、「食」の捉え方のように思った。