雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

埋れ木/吉田健一

店頭で見つけ、2,3ヶ月悩んで、買ってしまった。
ちくま文庫での再刊といい、吉田健一に再び、光が当たり始めたのだろうか。
ともあれ、読んでみたのだけれど。
この本は、生前の最後の著作であるらしい。
物語の粗筋は、いつもながら、書いても意味がないので書かない。
饒舌なのか、冗長なのか、句読点もなく続く文体も、いつもながらだ。
小石川の高台に住む主人公の独白が小説の大半なのだけれど、それは吉田健一の視線だ。
日本とか東京とか、大上段から語っているようで、そうとも言い切れない。
失われ行く東京に愛惜をかけているようにも見えるが、変わり行くのが東京なのだと言ってみたりもする。
結局、何なのかと言えば、東京という街への愛情表現の小説なのだと思った。
強いて欠点を探すなら、育ちが良すぎて、東京の西半分しか見えてないと言ったところだろうか。

埋れ木 (河出文庫)

埋れ木 (河出文庫)