本棚の岩波の黄帯、緑帯を整理していたら、この本が出てきた。
どうやら、この本も途中までしか読んでいなかったので、改めて読んでみる。
本のタイトルの通り、与謝蕪村を郷愁の、浪漫派詩人の先駆者として、萩原朔太郎は評価している。
それは、正岡子規から芥川龍之介に至る、それまでの自然主義的な評価に異を唱える。
萩原朔太郎の言葉で言うなら、『単に技巧的なスケッチ画家ではない』という書きっぷりである。
そこには詩とは何か、ポエジイとは何か、という問いに対する萩原朔太郎の態度が表明されている。
ありのままを描くということが詩の本質ではない、描くことにこそポエジイがあり、与謝蕪村には浪漫的な主観が籠められている、という。
その主張もひとつの立場であるには違いない。
だが、やはりそれは読み手の主張を投影しているもののように見える。
作品は書かれた瞬間から作者とは別のものだとは思うが、読み手とも同一ではないだろう。
萩原朔太郎による与謝蕪村の読みは、ともすると牽強付会とすれすれのところにあるようにも思える。
以前読んだときは、恐らくそれで途中でやめたのかもしれない。
ただ、与謝蕪村の句集を読み返してみようかという気にさせた点で、この本は価値があったと言えるかもしれない。
- 作者: 萩原朔太郎
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