ニーチェを読み返すのは久しぶりだ。
この本で古代ギリシアにおける、アポロ的なるものとディオニュソス的なるものの対立を論及していたと記憶していた。
読み返してみると、ギリシア悲劇における没落と喜劇への転換点をエウリーピデースに見出している。
そしてそれは、アポロvsディオニュソスからソクラテスvsディオニュソスへという対立構図の転回点を、エウリーピデースの葛藤と挫折として読み解いている。
またそれは、詩的なるものの論理的なるものへの敗北であり、詩人プラトンの哲学者プラトンへの転回点でもある。
そうした、スリリングな論及はこの本の前半なのだが、後半に音楽への言及や、ドイツ精神への論及に及ぶと話はとたんに失速してしまう。
そう読みとくと、この本は明らかに失敗作なのだろうが、それをただの失敗に終わらせないところがまたニーチェらしい。
あとがき的に付けられている、「自己批判への試み」において、射程はソクラテス的なるものへ引き戻している。
従って、ニーチェの主張はディオニュソスなるものへの手放しの賛美なのではなく、西欧思想の源流にあるソクラテスなるものの支配と、それに追いやられていくディオニュソス的なるもの、という捉えかたにあるのだろう。
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