この本もまた図書館で借りた。
ひとり旅というのは楽しくなく、その前後が楽しいのだ、という著者の意見は、言い得て妙だ。
中高年向けの軽いエッセイではあるが、共感できる部分は多い。
同じ顔ぶれで旅行をしていてもやがて飽きるとか、外国に定住するのは女性が多いとか、経験に基づいた人間観察の視点が的を得ているのだと思う。
ともあれ、ひとり旅をしたくなる。
30代の頃にしたバイクでのひとり旅が懐かしい。
朝起きて、方角だけ決めて走り出し、行けるところまで行って宿を探し、次の日もまた目的もなく走り出し、寂しくなったら帰ってくる、そんな旅を何度かしたことを思い出す。
自分自身が雨男なのか、雨に降られることも多々あったり、身を切られるような北風に何時間も身をさらし続けたり、強烈な日差しとエンジンの熱気に挟まれて、これは何の修行かと思うようなバイク旅は、確かにそのときは楽しくはない。
正確に言うなら、大半の退屈と苦行なのだけれど、山道を走り降りて満開の桜の老木に出会った瞬間や、深い森の峠の上から海が見えた瞬間など、忘れえぬ景色に出会うことがある。
旅とは非日常的な時間だというだけでは言い切れていない何かがそこにあるように思うのだが、それを言い表す言葉がまだ見つかっていない。
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