雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

偶然のチカラ/植島啓司

植島啓司の名前を知ったのは、1980年代のニューアカブームの頃にあった雑誌の「GS le gaya scienza」ではなかったかと記憶している。
もう私の手元にも無いので確かめようもないし、そもそも雑誌自体が忘れられた存在になってしまったことだろう。
それはともかく。
前に読んだのは、職場が移転する前だから、もう5年ぐらい前だろうか。
この本は、偶然とは何か、そして確率論の話、さらにはシンクロニシティの一歩手前までについてのエッセイだ。
占いや予言に言及し、この世の中は必然なのか偶然なのかの問いを立てて考察するが、全てが偶然でも全てが必然でもないが、悪い流れ、良い流れというのがあるという立場に留まる。
もう一歩踏み込んでしまうと、神秘主義なんじゃないかというぎりぎりのところ、裏を返せば、ちょっとインチキ臭いんじゃないかという際にまでは言及している。
神といった超越的存在を否定もしないが、かといってそこから積極的に読み解くわけでもない。
ハウツーものが好きな人にとっては、歯切れの悪い内容だろうし、常識的な論考が好きな人にとっては些か胡散臭く見えるかもしれない。
何か救いや指針を求めている人に、具体的な行動を示してくれるわけでもないが、「流れ」というアドバイスめいたことは伝えてくれる。
丹念にぎりぎりの辺りを辿っていく論考は、スリリングとも言えると思う。
余談にはなるが、恐らく著者はギャンブル好きなのだろうと思った。


偶然のチカラ (集英社新書 412C)

偶然のチカラ (集英社新書 412C)


そういえば、今は亡き福武文庫でも何冊か出していたっけ。