この本は幸田露伴の思い出を、娘である幸田文が綴ったエッセイを集めたものだ。
幸田露伴がどのような人物だったのか、ということよりも、幸田文が父をどう思っていたのか、ということが伝わってくる。
しかも幕末生まれ、明治育ちの男が、娘と二人でどのように暮らしていたのか、ということが透けて見える。
ここには、ホームドラマ的な父親像的なものは存在しない。
むしろ、父親である前に、個々人としての生き方のようなものがあったように見える。
アイデンティティだとか、ジェンダーだとかいう薄っぺらなものではなく、芯のようなものがあったように見えるのは、些か理想化しすぎているだろうか。
私個人としては、幼い頃に父親を亡くしたので、この本に取り上げられるような父親の思い出はほぼ皆無である。
だから、幸田文を羨ましく思いつつ読み進めたので、些か自分の願望が混じっていないとも言い切れない。
この本もまた図書館で借りたのだった。
ちぎれ雲 (講談社文芸文庫 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ))
- 作者: 幸田文,中沢けい
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1993/02/04
- メディア: 文庫
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