雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

ちぎれ雲/幸田文

この本は幸田露伴の思い出を、娘である幸田文が綴ったエッセイを集めたものだ。
幸田露伴がどのような人物だったのか、ということよりも、幸田文が父をどう思っていたのか、ということが伝わってくる。
しかも幕末生まれ、明治育ちの男が、娘と二人でどのように暮らしていたのか、ということが透けて見える。
ここには、ホームドラマ的な父親像的なものは存在しない。
むしろ、父親である前に、個々人としての生き方のようなものがあったように見える。
アイデンティティだとか、ジェンダーだとかいう薄っぺらなものではなく、芯のようなものがあったように見えるのは、些か理想化しすぎているだろうか。
私個人としては、幼い頃に父親を亡くしたので、この本に取り上げられるような父親の思い出はほぼ皆無である。
だから、幸田文を羨ましく思いつつ読み進めたので、些か自分の願望が混じっていないとも言い切れない。
この本もまた図書館で借りたのだった。