子供のころ、東京から遠く離れたミクロネシアの島々を、地図で辿ったりした。
アメリカの信託統治領が何であるかも知らず、太平洋に点在する島々に思いを馳せていた。
この本は日本が進出し、太平洋戦争を引き起こし、そしてアメリカの信託統治となった昭和時代の南洋諸島をたどる。
戦前の日本を、旧日本軍に操られた、まるで別人であるかのような論調とは、この本は異なっている。
この本で取り上げられているのは、外国人に寛容なふりをしながら、ひどい差別をしたり、日本人同士の中でも差別をする姿であり、マクロな権力論の話でも、出来事を羅列するだけの歴史読み物でもない。
誰かを悪者にして不幸を語るのではなく、そこにあるのは今でも容易に想像できる日本人たちの心象を描いており、その意味で現代に続いている失敗のカタログなのではないだろうか。
目の前で人が殺され、腐って行くという現実、殺されなくても集団自決を選ぶという心象、それらが今の自分たちと地続きの過去なのだということに、少し思いをめぐらされた本である。