北には何かしら魅かれるものがあるようだ。
北海道から連なる千島列島、カムチャッカ半島、樺太、アリューシャン列島、オホーツク海を、子供の頃、地図で眺めていた。
やがて、アルセーニエフの「デルス・ウザーラ」を読み、そこに登場するシベリアの少数民族、また、栗本慎一郎の経済人類学に登場するエスキモーのエピソードなどに触れ、北の世界に住む人々への興味がわいた。
この本ではまず、中国の史書に登場する流鬼国、夜叉国がどこにあったのかという考察を進めていく。
サハリン説、カムチャッカ半島説それぞれに対して、論拠を辿りながら考察を進める筆致はいささかスリリングだ。
そして、そこから環オホーツク海文化圏の姿が見えてくる。
北海道はその南端に過ぎず、アイヌ民族もその外側に位置する文化圏の姿は未知の世界であった。
まだまだ知らないことが沢山ある。