雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

あなたの人生の物語/テッド・チャン

ちょっと前に知って気になっていたので借りてみた。

映画「メッセージ」の原作ということも、気になる要素の一つ。

実際読んでみると、面白いのだけれど理が勝つというか、いまひとつ物語世界に入り込めない感じがしてしまう。

とはいえ、「顔の美醜について」とか、構造もアイデアも面白いものもある。

また読むだろうか。

ちょっとわからないな。

 

 

文字渦/円城塔

気になったので図書館で借りてみた。

円城塔を読むのは2冊目だろうか。

文字にまつわる物語であり、遊びのようなものだと思った。

面白いのだけれど、ちょっとやりすぎな気もする。

残念ながら途中で飽きてしまった。

 

文字渦(新潮文庫)

文字渦(新潮文庫)

 

 

パワー・インフェルノ/ジャン・ボードリヤール

久しぶりにボードリヤールを読む。

ニューアカブームの終わり頃から久しく読んでいなかった気がする。

たぶんそんなに重要だとは思わなかったのだろう。

この本は9.11について書かれたものだ。

アメリカのグローバリズムを根底から覆す存在としてのテロリズム、そして出来事の復権、相変わらずシミュレーション化した世界に対する告発、といった口調だと思った。

だが、9.11は果たしてそうだったのか。

グローバリズムの瓦解はテロリズムに依ってではなく、その後の大統領候補に依ってでは無かったろうか。

懐かしい感じはしたが、ボードリヤールはもう読まなくても大丈夫かもしれないと思った。

 

 

 

雀の手帖/幸田文

久しぶりに読み返してみた。

以前読んだ時も思ったけれど、幸田文の文章は昔の東京のしゃべり言葉に近い感じがする。

親の世代というより、祖父母の世代の言葉のようだ。

中盤で後の平成天皇のご成婚の話題が出てくるので、1959年に初出の文章なのだと分かる。

1月から5月の日常の事、思い出話、などとりとめもなく、おしゃべりのように語られる。

上段に構えるのではなく、そういえばね、という風に綴られるのだけれど、時折、キラッと光る刃先のような鋭い言葉が混じる。

人生の諸先輩が次々と亡くなってしまう中で、こういう言葉を紡いでくれる方はありがたい。

 

雀の手帖 (新潮文庫)

雀の手帖 (新潮文庫)

  • 作者:文, 幸田
  • 発売日: 1997/10/29
  • メディア: 文庫
 

 

日日是好日/森下典子

久しぶりに読み返してみる。

茶道に関するエッセイである。

他に読んだことが無いので何ともわからないが、茶道とは何かという事ではなくて、茶道で得たものは何かという本なので、評判が良いのだろうと思った。

つまりユーザー目線であるということだ。

それが何であるかということに興味のある層も存在するのだろうが、それによって何が得られるのかという目線で語られるので、そもそも興味の無い層も取り込めるだろう。

それがこの本の魅力と言えよう。

 

 

 

花嫁化鳥/寺山修司

ふとこの本のことを思い出して本棚から取り出した。

寺山修司の書いた紀行文である。

副題に「日本呪術紀行」とあるのは、サービスのような気がする。

日本の奇習、伝承を訪ね紹介する、という態を取りながら、その背後にある人々の姿を浮かび上がらせようとしているように思った。

それぞれの場所で、寺山修司が受け入れられているとは思えない、むしろ共同体の外部の人として疎んじられているような場面が度々出てくる。

しかし寺山修司もまた、その奇習や伝承の背後にある人々の欲望を暴こうとしているように見える。

しかも所々に寺山修司の虚構を交えた思い出話が混じってくるので、厄介な文章である。

持っている中公文庫は1990年版だが、もともと出版されたのは1974年なので、たぶん70年代初頭の日本の姿がここには捉えられている。

70年代の日本について語られることは、思い出話以外では少なくなってゆくだろうと思うと、少し感慨深いものがある。

 

花嫁化鳥 (中公文庫)

花嫁化鳥 (中公文庫)

 

  

花嫁化鳥 (1980年) (角川文庫)
 

 

俺 勝新太郎/勝新太郎

勝新の自伝である。

例のパンツ事件の話から始まり、子供の頃から映画の話、中村珠緒との馴れ初めやTVの話など、勝新の半生が語られる。

たぶんこの本の数百倍のエピソードがあるのだろうけれど、その一端を覗くことができる本である。

難しい話など要らないが、人の半生を聞くのは面白い。

ましてや、勝新太郎においておやである。

 

俺、勝新太郎 (廣済堂文庫)

俺、勝新太郎 (廣済堂文庫)

  • 作者:勝 新太郎
  • 発売日: 2008/08/25
  • メディア: 文庫