雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

2012-01-01から1年間の記事一覧

甘酸っぱい味/吉田健一

何となく図書館で借りてみたのだけれど。 昭和32年に熊本日々新聞に、吉田健一が連載したエッセイらしい。 時代背景を鑑みると、なるほどと思っても良いかもしれないが、ちょっとどうなんだろうと思わなくも無い。 正直なところ、あまりピンと来なかったのだ…

包帯クラブ/天童荒太

真夜中に目が覚めてしまい、のどが渇いていたので、台所で水を飲み、そのまま何とはなしにリビングでテレビをつけると、この「包帯クラブ」の映画をやっていた。 あまり興味も無く、ただ眺めているうちに、主人公たち(柳楽優弥、石原さとみ、田中圭、貫地谷…

うわさのベーコン/猫田道子

たぶん、はてなに引っ越してくる前から、この本の噂は聞いていた。 聞いてはいたが、特に読もうとも思わなかった。 ふと何気なく、検索してみたら図書館にあったので、借りてみた。 だがこの物語について、何かを語るべきだろうか。 いや、そもそも物語でも…

1984年/ジョージ・オーウェル

あまりにも有名な、SFの古典である。 出版されたのは、1949年だから、60年前に想像した35年後の憂鬱な未来であり、この記事を書いている28年前のあり得べき未来、という訳だ。 オーウェルが想像した、そのままの未来は出現しなかったが、質の悪い冗談のよ…

デルスー・ウザーラ/ウラジーミル・アルセーニエフ

デルスー・ウザーラの名前を知ったのは、黒澤明のフィルモグラフィーだ。 だが、映像作家としての黒澤明は凄いなと思うが、映画監督としてヒューマニズムをテーマに持ってくるので、食指を動かす気は起きなかった。 次に東洋文庫にその名前を見つけたのだけ…

東方見聞録/マルコ・ポーロ

マルコ・ポーロの名前は知っていても、そして、ヨーロッパに「ジパング」の存在を知らしめた本人であるということを知っていても、実際にその著書に触れていなかった。 なので、ひとつ読んでみようと思い立ち、図書館で借りることにした。 ここに描かれてい…

国家民営化論/笠井潔

気になっていたので、図書館で借りてみたのだけれど、正直なところちょっと期待はずれだった。 一言で言うなら、アナルコキャピタリズムの概説である。 笠井氏が繰り返してきた観念批判の延長線として、アナルコキャピタリズムに行き着く論理は、なるほど納…

ルバイヤート/オマル・ハイヤーム

ルバイヤートとは、四行詩という意味らしい。 作者のオマル・ハイヤームは11世紀のペルシア(今のイラン辺り?)の、数学者にして哲学者そして詩人だそうだ。 この本の解説で知ったぐらいの、浅はかな知識を書き連ねるのはやめよう。 簡潔ながら、詠い上げる…

檸檬/梶井基次郎

梶井基次郎と中原中也は十代の頃に読んでおく本だと思っている。 というか、いまさら読むべき本ではない気がしていた。 ランボーもそうかも知れない。 もちろん、個人的な独断なので、正しいかどうかは知らない。 しかしそんな考えは、各社文庫本の夏のフェ…

美神の館/オーブリ・ビアズレイ

ビアズレイと言えば、19世紀末のデカダンスなモノクロのイラストだろう。 サロメ、アーサー王の挿絵は良く知られているだろう。 この本は、ビアズレイが書いた小説である。 タンホイザーがウェヌスの館を訪問し、豪華な宴と、放埓な情事を繰り出す小説である…

硝子障子のシルエット 葉篇小説集/島尾敏雄

めっきり涙もろくなったものだと思う。 この本は、島尾氏が東京都江戸川区小岩に住んでいた頃の、家族の思い出を中心にした短篇が収められている。 島尾氏の特徴でもある、現実と幻想の境界の薄明を記述するような文体は控えられ、些細な日常が愛おしく、ま…

背徳者/アンドレ・ジッド

いつ頃読んだのか、もう定かではない。 だが、ジイドについて誰かと話したことは無い。 古本屋を巡ってまで、何冊か買い漁っているのだから、高校生の頃に読んだと思われる。 そうしてまで読んで、大事にとってあったのだから、何かしらの感銘を受けたのだ。…

妖怪なんでも入門(入門百科シリーズ32)/水木しげる

小学生の頃、読み耽った本。 夏休みには、「ゲゲゲの鬼太郎」の再放送も見ていた。 夢子ちゃんだかを守って戦う正義の味方ではなく、人間界と異界との境界線上の存在だったと思う。 エンディングの歌では、下駄が独りで歩いて遠ざかってゆく姿が、何とも哀し…

薔薇の葬儀/アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ

マンディアルグについて何か書こうとしても、特に思い当たらない。 そもそも、マンディアルグの小説が、シュルレアリスムであるのかどうか、判断に迷うところがある。 この本は最晩年の短篇集だ。 それぞれの作品に籠められた暗喩を解説しても、それは作品を…

カエルの死/夢枕獏

本棚の片隅に眠っていたのだけれど、本棚の整理と共に引っ張り出して読んでみた。 今や「エロスとバイオレンスとオカルトの作家」(と本人が語っていたと、Wikiに記載がある)なのだけれど、この本はタイポグラフィックの本である。 1977年に筒井康隆氏主催…

ジャスミンおとこ/ウニカ・チュルン

なんとも哀しい本である。 狂気と正気を行き来する中で綴られたとも思える手記には、理解ができない箇所も多いが、強迫観念的に連ねられる意味やイメージが、読み手に哀しさを想起させる。 なぜ、彼女がそう思うのかは、ほとんど理解できない。 だが、そう思…

脱会議/横山信弘

たまには仕事の本を読む。 確かに意味不明な会議がある。 会議を無くせば、コミュニケーションも効率も良くなるだろう。 だがそれが持続的な効果がある策なのだろうか。 一時的な目くらましでしかない気もする。 恐らく、会議を開きたい声が出てきて、やがて…

松浦寿輝詩集

詩が読みたい、というのはどういう欲求なのか。 松浦寿輝氏は、今や芥川賞作家であり、評論でもあれこれ話題を振りまいているらしい。 興味が無いので、正確なことや詳しいことは知らない。 ともあれ、松浦寿輝氏の詩集「ウサギのダンス」が読みたくなったの…

ウォー・フィーバー 戦争熱/J・G・バラード

本棚を眺めていて、何となく目に留まったので、読んでみる。 奥付を見ると、1992年に出版されたようだ。(ということは、20年前か…) この本は、バラードの1975年から1990年に発表された短編が収められている。 表題作の「ウォー・フィーバー」は、どことな…

ボルヘスとの対話/ホルヘ・ルイス・ボルヘス、G・シャルボニエ

フランス国営放送で流された、ボルヘスへのインタビューを本にしたもののようだ。 したがって、フランス向けにボルヘスを紹介する意図もあるためか、文学に対する考えを聞いたり、作品に対する自己解説も行っている。 だから、読み終わってみると何だか物足…

古本屋の手帖/八木福次郎

思うところあって、借りてみたのだけれど… 何と言うか、あまりにかけ離れた世界のような気がした。 登場する人々は殆ど判らない。 (さすがに、作家や評論家は、ぼちぼち判るけれど・・・) 古本屋は好きなのだけれど… 難しいものだ。新編 古本屋の手帖 (平…

ボルヘス、オラル/ホルヘ・ルイス・ボルヘス

何冊も手にとっては、読みかけてやめてしまうのは、何だか気が乗らないということか。 だが、この本はするするするっと読み終わってしまった。 この本はボルヘスが、ベルグラーノ大学にて行った講演をまとめたもの。 形式や構造にこだわる小説世界とは異なり…

松丸本舗閉店

そういえば9月末で閉店だった。 今日は松丸主義の日で、イベントが開催されるそうだ。 http://www.matsumaru-hompo.jp/?p=3317 数回しか行ってないが、ちょっと残念だ。 今度寄ってみるか。

溺レる/川上弘美

川上弘美氏の本を読むのは、これで二冊目である。 ハマってしまったと言うべきかもしれない。 この本は、恋愛小説の短編集だと思った。 だが、そう思ったとたんに、そう言い切る自信がなくなってきた。 男と女が登場して、主人公の女性が相手の男性とどうに…

東京飄然/町田康、鬼海弘雄

町田康氏は、確か「夫婦茶碗」を読んだのだけれど、ピンと来なかったと思う。 だが今回読んでみようと思ったのは、鬼海弘雄氏の写真が併せて収められていたからというのもある。 また、東京をぶらぶらと彷徨うような内容に思えたので、図書館で借りてみるこ…

ボッコちゃん/星新一

ふと思い立って、星新一を図書館で借りてみる。 中学校のクラスの学級文庫にあったのを読破し、足りないのは何冊か買って読んだ。 (そういえば、吉岡先生お元気でしょうか?) だから、高校生になる頃には既に興味を失い、持っていた何冊かも、早い頃に処分…

二十歳の原点/高野悦子

読んだことない本を読んでみよう。 二十歳か、もう随分前だよな、と思い、図書館で手にとってみた。 別に、二十歳の人間が読まなければいけない、ということではない。 だが、不惑を越えた男が読むものだろうか? では、不惑を越えた男が読むべきもの、って…

埋れ木/吉田健一

店頭で見つけ、2,3ヶ月悩んで、買ってしまった。 ちくま文庫での再刊といい、吉田健一に再び、光が当たり始めたのだろうか。 ともあれ、読んでみたのだけれど。 この本は、生前の最後の著作であるらしい。 物語の粗筋は、いつもながら、書いても意味がないの…

飛ぶ紙/ベルナール・フォコン

ベルナール・フォコンはフランスの写真家だ。 日本版Wikiに登録されていないようなので、この本の帯に書かれているところから、抜粋しよう。 1950年南仏プロヴァンス地方のアプトに生まれ、「幼年時代を太陽と青い空とラヴェンダー畑の中で」過ごしたらしい…

私の銀座

「銀座百点」というミニコミ誌がある。 銀座の店に行くと、レジの横にちょっと置いてあったりする。 値段が書いてあった記憶があるので、フリーペーパーではないと思う。 この本は、そこに掲載された各界著名人のエッセイを集めたものだ。 一人あたり数ペー…