雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

2014-01-01から1年間の記事一覧

ダダ 前衛芸術の誕生/マルク・ダシー

ダダは何となく通過した。 トリスタン・ツァラ、ハンス・アルプ、クルト・シュビッタース、フランシス・ピカビアといった名前ぐらいは知っている。 だが、あまり興味を引かなかった。 とは言え、若き日の赤瀬川原平が活動していたハイレッドセンターのネオ・…

五分後の世界/村上龍

村上龍を読んだのは何年振りだろうか。 この本はどこかで紹介されていたのを見た気がする。 パラレルワールドもののSFとも、日本文化批判の寓話とも言えるだろう。 ともあれ、ストレートなストーリーはあっという間に読み終えることができた。 この本は、文…

13歳は二度あるか/吉本隆明

この本はおそらく口述による本だろう。 子供向けというほど子供向けでもないが、比較的平易な言葉で語っている。 13歳だった自分がこの本を手に取ったかと言うと、そうは思わない。 では、その頃の自分の周りにいた誰かがこの本を薦めただろうかと言うと、そ…

一揆/勝俣鎮夫

大学のときのゼミの教材を読み返してみる。 新書ながら、一揆の基本的な要点を押さえている好著だと思った。 法制史的に言えば、一揆とは公家法でも武家法でもない、私的な契約関係と考えられるということだったか。 改めて読み直してみると、集団論理的な面…

YASUJI東京/杉浦日向子

この本は、杉浦日向子にしては珍しいエッセイ漫画である。 YASUJIとは明治初頭の浮世絵師の井上安治のことだ。 たまに小林清親は見かけることがあっても、その弟子の井上安治はあまり見かけない。 井上安治の描く東京は、あっけなくて、画者の存在が見えない…

アナーキズム/アンリ・アルヴォン

例えば、全く興味を失ってしまった分野の本を読み返してみる。 が、思うようにはかどらない。 気がつけば、本を持つ手は膝に落ちて、眠ってしまっている。 買ったのは高校生か大学生ぐらいだろう。 もう理由も覚えていないが、高校生にとって、文庫クセジュ…

もし僕らのことばがウィスキーであったなら/村上春樹

ひどくくたびれている自分に対していったい何ができるのかを考えている。 この本は村上春樹によるアイラ島とアイルランド紀行である。 ウィスキーの蒸留所やパブを巡る姿は羨ましい。 ささやかなこの本を読むうちに、そういえば自分のための酒を飲んでいない…

血と薔薇のフォークロア/栗本慎一郎、中村英良

この本は栗本慎一郎によるブダペスト、トランシルバニア紀行である。 1980年代初頭のハンガリー、ルーマニアなので、まだ自由化されてはいない。 建築に施されたアール・ヌーヴォー様式と諸民族の歴史を振り返りつつ、時折、自説やカール・ポラニーの言説を…

蛍・納屋を焼く・その他の短編/村上春樹

何年かぶりに読み返してみる。 「蛍」は後に、「ノルウェイの森」の一部になる。 「納屋を焼く」も何かの一部になった気もするが、定かではない。 村上春樹の本は図書館で借りれば良いのだから、さっさと処分してしまわないのか、と家人は言う。 一理あるの…

萩原恭次郎詩集

萩原恭次郎は大正から昭和初期に活躍した詩人である。 ダダイストだとか、アナーキストだとか、紹介されているが、実際のところ、詩とは何であるかといったら主義主張ではないだろうと思う。 そもそも、大正から昭和初期の前衛詩人たちを、ダダイズム、シュ…

ひとり暮らし/谷川俊太郎

久しぶりに読み返してみる。 この本に収められた「ひとり暮らしの弁」「私の死生観」といったエッセイを読むと、老いるのも悪くはないと思う。 飄々とした軽やかさが羨ましい。 いつ頃だったか、老人になりたいと、周囲に言いちらかしていた時期があったのを…

歴史とユートピア/E・M・シオラン

シオランの散文はアフォリズムとちょっと印象が異なる。 序文によれば、この本は1957年から1958年にかけて書かれ、1956年のハンガリー動乱が背景にあるらしい。 何度かソビエトに対する記述があるが、仮借なきまでに叩きのめすその様は、熾烈を極めていると…

涙と聖者/E・M・シオラン

何となく読み返してみる。 体調は戻りつつあるからだろうか。 シオランのファナティックな言葉たちが、そうかもなと思わせる。 この本に納められている全ての言葉に共感できるわけでもないし、全ての言葉を理解できているとも思わない。 それでもシオランを…

最高のリーダー、マネージャーがいつも考えているたったひとつのこと/マーカス・バッキンガム

世間はお盆だが、あえてビジネス本を読んでみる。 それにしてもなんとまあ気恥ずかしいタイトルなんだろうか。 とは言え、内容はとても面白いのだ。 ウェブで要約を探して見るよりは、立ち読みでも良いから、手に取って読んでみた方が良い。 何か示唆される…

海底二万里/ジュール・ベルヌ

子供の頃、何度となく読み返していた物語を、改めて読み返してみる。 いまさら解説する必要も無いくらい、有名な物語なので、あらすじなどここには書かない。 ひとことだけ言うなら、ネモ船長率いるノーチラス号で世界の海を巡る冒険活劇である。 やはり面白…

偶然のチカラ/植島啓司

植島啓司の名前を知ったのは、1980年代のニューアカブームの頃にあった雑誌の「GS le gaya scienza」ではなかったかと記憶している。 もう私の手元にも無いので確かめようもないし、そもそも雑誌自体が忘れられた存在になってしまったことだろう。 それは…

サド侯爵の生涯/澁澤龍彦

この本を読んだのは、高校生ぐらいだったろうか。 当時どう思ったのかは、もう覚えていない。 だが、こうして未だに手元に残してあるということは、やはり感銘を受けたのだと思う。 表題の通り、サドの評伝である。 澁澤龍彦はサドの何を評価しているのか。 …

善悪の彼岸/フリードリッヒ・ニーチェ

出張の移動時間潰しに、ニーチェを持参した。 旅先でニーチェを読むとは、何というミスマッチか。 するすると頭に入ってくる部分もあれば、難解な部分もある。 だが、日本語で読むニーチェの難解さは、翻訳にあるんじゃないかと思うふしもある。 恐らく原文…

支那論/内藤湖南

ちょっと中国について考えてみようと思った。 とは言え、メディアに垂れ流されているステレオタイプな言説には、あまり興味はない。 しかしながら、友人の中国人について何をか語りたいのでもない。 図書館で本を探してみても、なんとも不愉快なことだが、見…

ザ・ファシリテーター/森時彦

たまには仕事の本も読む。 この本はファシリテーション入門的な内容を、小説形式で紹介している本だ。 粗筋を書いてみる。 主人公のリョウは、マーケティング部の中間管理職で、社長にその実績を買われ、開発センターの変革を命じられる。 当然ながら、その…

蔵書家の話/内藤湖南

内藤湖南の中国論を読んでみようと思った。 しかしほとんどが絶版で、手に入る本は少ない。 内藤湖南は明治の東洋史学者である。(wikiはコチラ) ふと青空文庫で探してみることを思いつき、探してみると幾つか見つかる。 こういう時、青空文庫は便利だと思…

茶の本/岡倉天心

久しぶりに読み返してみると、この本は西洋に対する東洋のアジテーションなのだなと思った。 茶の歴史と道教と禅に触れ、西洋が蔑んでいる東洋の奥深さを紹介している。 神秘的な東洋というステレオタイプは、この辺りにも源流があるのかもしれない。 富国強…

街場の現代思想/内田樹

この本もまた図書館で借りた。 正直に言えば、内田樹については食わず嫌いであった。 「街場の」シリーズや「日本辺境論」といった著作のタイトルから、何となく敬遠してしまっていた一方で、レヴィナスの著作の翻訳を手がけていることから、読むべきだろう…

S&Gグレイテストヒッツ+1/橋本治

この本もまた図書館で借りた。 この本もまた処分してしまった本だ。 橋本治を読むのは、高校生以来だろうか。 いや、大学時代の女友達が橋本治の講演の話をしていたから、大学生以来だろうか。 ともあれ、それ以降手に取らなかったように思う。 この本は大半…

風の歌を聴け/村上春樹

この本もまた図書館で借りた。 というのも、以前は持っていたのだが、処分してしまったからだ。 いまさら村上春樹について何か書く必要もないし、このデビュー作について書かれている記事なんて腐るほどあるだろう。 何故今更にこの本を読み直したのかといえ…

春、バーニーズで/吉田修一

この本もまた図書館で借りた。 名前ぐらいは聞いたことがあるので、何となく手に取った。 実は自分と同い年らしい。 筒井というサラリーマンが主人公の連作短編らしい。 何と言うか、あまりよく判らなかった。 何となく判るようなのだけれど、やっぱり判らな…

犬狼都市/澁澤龍彦

そういえば、最近小説を読んでいない。 TVだってドラマは見ない。 見るとしたら、ニュースか天気予報かドキュメンタリー、たまにはバラエティも見るが、「旅・温泉・グルメ」的なもの。 (全ての条件を満たすのはテレ東か?) ということで、適当に本棚か…

いま中国人は何を考えているのか/加藤嘉一

この本もまた図書館で借りた。 流し読みした。 思ったような本ではなかった。 ビジネス関係の情報収集はなかなか難しい。 いま中国人は何を考えているのか (日経プレミアシリーズ)作者: 加藤嘉一出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2012/02/16メ…

安部公房とわたし/山口果林

この本もまた図書館で借りた。 予約を入れたのが2月で、6月にようやく順番が回ってきた。 安部公房のプライベートの姿を垣間見る本、ではなく、女優・山口果林の半生を綴った本だろう。 たまたま、安部公房がそこにいただけだ。 こともなし。 安部公房とわた…

男なら、ひとり旅。/布施克彦

この本もまた図書館で借りた。 ひとり旅というのは楽しくなく、その前後が楽しいのだ、という著者の意見は、言い得て妙だ。 中高年向けの軽いエッセイではあるが、共感できる部分は多い。 同じ顔ぶれで旅行をしていてもやがて飽きるとか、外国に定住するのは…