雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

2023-01-01から1年間の記事一覧

無人島のふたり/山本文緒

どこでどう知ったのか覚えていないが、小説家の山本文緒氏の闘病記を図書館で借りた。 膵臓癌で余命4か月と宣告されて日記が始まる。 綴られる言葉は、苦痛の訴えや悲しみだけではなく、周りの人々への感謝が多い。 病によって生活が一変してしまう中で、緩…

思い出トランプ/向田邦子

酔っぱらったときに買った一冊。 13篇の短篇小説集。 だから、トランプなのだと読み始めて気づいた。 向田邦子を読むようになったのは30代後半からだった。 本当に面白いと思えるようになったのは40代後半以降かもしれない。 この本も読んだつもりでいたけれ…

詩の力/吉本隆明

久しぶりに読み返してみる。 晩年の吉本隆明の日本近現代詩の解説である。 口述筆記のおかげか、平明で分かりやすい言葉が選ばれていると思った。 必ずしも年代順に系統立てて紹介しているわけではないが、話の流れのようなものはある。 現代の(とは言って…

文藝百物語/井上雅彦、田中文雄、森真沙子、加門七海、菊池秀行、篠田節子、霧島ケイ、竹内義和

怪談というのは、聞いている人の感情に訴えかける、古来のエンターテインメントであり、語りの力が影響するものだろう。 百物語とは怪談を持ち寄り、一話話す毎に蝋燭を一本づゝ消していき、やがて百本目が消えたとき怪異が出現する、という。 都内某所と伏…

ドラえもん最新ひみつ道具大事典

だいぶ前に買ったのだけれど、時々拾い読みしては止めていた。 ようやく読み終えた。 ドラえもんに登場するひみつ道具の解説本であるが、ほとんど忘れていた。 荒唐無稽なのが多いが、当時の社会情勢を反映したかのようなものが、たまに混じっている。 ドラ…

デュシャンは語る/マルセル・デュシャン、ピエール・カバンヌ

1960年代に行われたマルセル・デュシャンへのインタビュー本である。 何度か読んでいるが、内容を覚えていないのは、物覚えが悪いからだろう。 ブルトンのシュルレアリスムと距離を持ちながら、網膜的ではない美術を目指すデュシャンもまたシュルレアリスト…

死の海を泳いで/ディヴィッド・リーフ

息子であるディヴィッド・リーフ氏によるスーザン・ソンタグの臨終に至る回想である。 臨終記というと花屋日記が思い浮かぶが、こちらは感傷的な記憶の記録のようなものだと思った。 この本からソンタグの思考を読み取ろうとするなら、確率で人生を決めては…

他者の苦痛へのまなざし/スーザン・ソンタグ

本に呼ばれる、という感覚がある。 読みたいな、というのではなく、あ、これは読まないといけない本だ、と思ってしまう感じに近い。 読まなければいけない、というのは義務でもないし、何かタスク的なものでもないが、切迫感はある。 オカルトっぽい「呼ばれ…

酒宴/残光 吉田健一短篇小説集成

久しぶりに吉田健一の小説を読む。 どこかで読んだことのある短篇も、初めて読む短篇もあった。 回りくどい言い回しと、うねうねと蛇行するような話の筋は、吉田健一ならではだ。 謎の外国人の話、酔っぱらいの話、旅の話、どの話もちょっと変で、ちょっとユ…

ふたご/藤崎彩織

エッセイに引き続き小説の方も読んでみた。 小説の設定と作者の状況が、どうしても近いように思えてしまうのは、作品にとってデメリットだと思うのだが、どうなのだろう? 作品の出来をどうこう言うつもりもないし、作品世界と作者の置かれてる環境を重ね合…

低空飛行/原研哉

ラジオで紹介していたので、借りてみた。 元はWebサイトらしい。 日本を再評価し、観光業、ホテル業をリデザインする、という内容だと思った。 有名なデザイナーらしく、無印良品の家なども手掛けていることも知った。 だが正直なところ、この本の前半部分の…

ねじねじ録/藤崎彩織

気になったので借りてみた。 SEKAI NO OWARIのキーボーディストとして知ってはいた。 まだバンドが、世界の終わり、という名前だった頃に、一枚だけアルバムを聴いた。 好みではないけれど、すごいなぁ、とは思ったっけ。 そのメンバーであるSAORI氏は、ブロ…

人は2000連休を与えられるとどうなるのか?/上田啓太

とある場所で紹介されてたので読んでみた。 2,000日は6年弱、友人?の家に居候しながら、考えを巡らし、何かを試みる、という記録のような、随筆のような得体の知れない本だ。 なにかの目標に邁進するのではない。 また、真似したいとも思わない。 だが思考…

白痴・二流の人/坂口安吾

久しぶりに坂口安吾を読み返してみた。 なんとは無しに、角川文庫版である。 最初期の「木枯しの酒蔵から」「風博士」そして、「二流の人」「白痴」「青鬼の褌を洗う女」あたりが収められている。 坂口安吾の小説世界は、何だか危ういようでもあり、かなり硬…

物理学とは何だろうか/朝永振一郎

中学生の頃に買ってもらった本である。 その買ってもらった本は、いつだったか処分してしまったので、改めて買い直した。 上巻は、ケプラーからカルノーまでを辿る。 タイトルの通り、「物理学」が成立する過程をたどっていく。 ケプラー、ガリレオ、ニュー…

はじめてのUXデザイン図鑑/萩原昴彦

UXとはuser experience。 ユーザー体験をデザインする、ということ。 ターゲットとするユーザーを想定し、サービス、モノを開発する手法が流行っているので読んでみた。 分厚い本だがあっという間に読み終えた。 たぶん表面的にしかなぞっていない。 この分…

ふなふな船橋/吉本ばなな

なんとなく借りたもう一冊。 吉本ばなな氏はたぶん今まで1冊読んだことが有るか無いかぐらいだと思う。 まるで少女漫画のような小説だと思った。 性別で小説を分類するつもりはないが、主人公の独白の多さと、風景の少なさ、登場人物との会話、そういった要…

異類婚姻譚/本谷有希子

何となく借りてみたもう一冊。 確か劇団を主宰している方じゃなかったかと記憶しているが、舞台演劇は苦手なのでよく知らない。 4篇の短編小説が収録されている。 何だか気味の悪いような物語だが、言い得て妙な部分もあるなと思った。 表題作「異類婚姻譚」…

コンビニ人間/村田沙耶沙

ふと読んでみたくなった。 短いストーリーながらかなり読み応えがあった。 あらすじを紹介してもしょうがない。 読んで、安部公房の物語の感じがした。 現実に違和感のある不条理な世界観がユーモラスに描かれている、というと何だか安っぽいがその安っぽさ…

skmt 坂本龍一とは誰か/坂本龍一、後藤繁雄

良くも悪くも坂本龍一氏は変わったのだと思った。 それを否定する気はないけれど、考えの距離感を実感した。 いや、もともとそんなに距離が近いと感じていたのかどうかも疑問なのだが、遠いところの人のように思った、という言い方のほうがしっくりするかも…

2020年6月30日にまたここで会おう/瀧本哲史

再び読んでみた。 前に読んだのは2年前の7月だった。 何となく面白かった記憶だったけれど、読んでみたらこんな内容だったっけ、と思った。 記憶は美化される、ということだろうか。 ファナティックなアジテーションで、衰退する日本を憂う、という内容だが…

すべて忘れてしまうから/燃え殻

何となく気になっていたので、図書館で予約していたのだけれど、酔っぱらって寄ったブック〇フにあったので買った。 小説もそうだったが、若い頃の焦燥感みたいなものと、諦念のようなものが、上手いバランスで表れているように思った。 全然違う人生なのに…

55歳からのハローライフ/村上龍

久しぶりに村上龍氏の小説を手に取った。 そして、「ハローワーク」と読み違えていたことに気づいた。 60歳前後の主人公たちの物語である。 まぁ、若い頃は読まなかったろうな、と思ったが、自分が若い頃は作者も若いので、このような作品は書かなかったろう…

風眼抄/山田風太郎

山田風太郎の名前は聞いたことはあっても、実際読んだことは今までない。 推理小説や時代小説が好きだったら通る道なのかもしれないが、ちょっと昔の大衆小説という気がするので、最近の若い人たちも読まないのかもしれない。 いきなり物語の世界に飛び込む…

飛行士たちの話/ロアルド・ダール

田村隆一のエッセイに登場していたので借りてみた。 イギリスのミステリー作家らしいが、ミステリー的な話は少なかった。 どちらかというと不思議なテイストの短編小説だと思った。 誤解を恐れず言うなら、ちょっとおしゃれ系な雑誌に紹介されるような小説で…

スコッチと銭湯/田村隆一

何もない日の午後に読みたい本は何だろうかと本棚を眺めて手に取った。 買ったのは1998年12月31日の旭屋書店銀座店。 なぜ分かるかというと、レシートが挟んであった。 今はもう無いらしい。 四半世紀前に買った本だったが、書かれたのは更に20年ほど前の197…

坐禅ガール/田口ランディ

何となく田口ランディ氏を手に取った。 というのも、前に買ったはずの本が、家の本棚に見つからなかったからだ。 タイトルに何となく惹かれた。 が、読んでみて、やはりちょっと苦手だと思った。 どこをどうも言うことでもないが、おそらく今まで身近にはい…

村上T 僕の愛したTシャツたち/村上春樹

タイトルの通り、村上春樹氏が所有しているTシャツを紹介する雑誌の連載をまとめたもの。 Tシャツの写真にそれぞれのエピソードやらちょっとした小ネタの文章が添えられている。 軽く読める本。 あとがきは野村訓市氏が聞き手になってインタビューしている。…

賢者は幸福ではなく信頼を選ぶ。/村上龍

久しぶりに村上龍氏のエッセイを読む。 「すべての男は消耗品である」を手に取ったのは、大学生の頃だったかと思うと、かれこれ約30年前である。 その間も村上龍氏の文章は見かけたこともあると思うが、あまり記憶に残っていない。 小説は何冊か手に取った。…

ボクたちはみんな大人になれなかった/燃え殻

深夜ラジオで、著者がパーソナリティを務めている番組があって、夜中に目を覚まして何度かうつらうつらと聞いたことがある。 この本は150頁ほどで、あっという間に読めたが、内容は何とも消化しがたい。 読んで思い出したのは、田口賢司「ボーイズドントクラ…