雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

文系

融解するオタク・サブカル・ヤンキー ファスト風土適応論/熊代亨

この本もまた図書館で借りた。 カバーをかけずに電車で読んでいると、前に座っている人が凝視することがある。 ヤンキーはマイルドになって、より社会に適合できるようになって、オタクもカジュアル化してファッションの一部となりつつあって、行き場の無い…

2011 危うく夢見た一年/スラヴォイ・ジジェック

アラブの春からウォールストリート占拠に至った2011年に対して、ネグリとハートは新しい民主主義を夢見たのなら、ジジェックは何を見たんだっけ、と思って再読した。 相変わらず読書効率が下がっているのは、日常の疲労もある。 ブログを書くために本を読ん…

叛逆/アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート

この本もまた図書館で借りた。 たまには難しい本を読まないと、頭が鈍るだろうと思ったのだが、どうにも政治論は苦手だ。 2011年のアラブの春やウォールストリート占拠を軸に、新しい民主主義を検討している本といえば良いだろうか。 薄っぺらい理解で言うと…

ヤンキー経済/原田曜平

この本もまた図書館で借りた。 よく出来たマーケット分析の本だと思った。 都心に暮らす人と、郊外に暮らす人がいて、それが固定化されつつある現状を、ヤンキーという切り口で解説して見せたのだと思う。 この本で言うヤンキー3.0は、都心にも存在するし、…

老いの超え方/吉本隆明

Ingressばかりやって、読書が進まない。 まあ、そんな時もあるさと思ってはみる。 しかし、三日本を読まざれば、という言葉もあるしと、どれか手に取ろうと思うが、それすらなかなか気が進まない。 軽めの本でも、と久しぶりに手に取ったのがこの本である。 …

日本の呪い/小松和彦

久しぶりに小松和彦の著作を読み返してみる。 全く別の話なのだが、最近、情報番組やクイズ番組の多さが気になる。 そんなに情報が必要なのだろうか。 そこにあるのは、情報の消費のようでもあり、無知を笑う残酷さが隠れているようでもあるように思う。 あ…

パイドロス/プラトン

やっぱりプラトンかなと思って、他の本も読み返してみた。 何がやっぱりなのかというと、「プロタゴラス」を読んでやはりソクラテスを裏返してみるのが、良いんじゃないかと思ったのだ。 (しかしそれにしても、過去に読んだ時の「プロタゴラス」の感想を見…

プロタゴラス/プラトン

この対話篇におけるソクラテスの奇妙さが気になる。 支離滅裂というか、狡賢いというか。 高名なソフィストのプロタゴラスのもとを訪れたことを友人に話すソクラテスという設定の対話篇である。 「徳は教えられるのか」という命題に対して、ソクラテスは「教…

独立国家のつくりかた/坂口恭平

図書館で借りてみた。 「オベリスク備忘録」で、この著者のことを紹介されていたのを読み、ちょっと興味が湧いたのだった。 ともあれ、読んでみたのだが、いまいち消化不良だ。 残念ながら、紹介したり、感想を書いたりすることが出来ない。 この著者の言っ…

芸術原論/赤瀬川原平

少し前のことになるが、赤瀬川原平氏が亡くなった。 だからというわけでもないけれど、久しぶりに読み返してみた。 まるで赤瀬川原平の人生の総括のような本だと思った。 この本で触れていないのは、「新解さん」と「櫻画報」ぐらいなのではないだろうか。 …

41歳からの哲学/池田晶子

誤解を恐れず言えば、なんて変わった人なんだろうと思った。 別に奇矯なのではないが、当たり前のことを大声で言い立てるような奇妙さだ。 時事ネタを取り上げてあれこれ言うのだが、ものすごく真っ当なことしか語っていない。 真っ当なのだが、それを大事で…

リトル・ピープルの時代/宇野常寛

久しぶりに読み応えのある評論だと思った。 読み応えがあるからといって、それは難解だということではない。 むしろ、すらすらと読めるのだ。 東日本大震災での日常と非日常という話から始まり、村上春樹の評論、「ビッグ・ブラザー」の自壊から「リトル・ピ…

1968年/スガ秀実

引き続きあまり手を伸ばさない分野の本を読む。 この本は、1968年に世界史的なターニングポイントがあったと主張している。 その論旨は、新左翼党派の動きを追いかけていくことで示している。 この本に登場するタームの多くは、恐らく自分より下の年代にはあ…

自由に生きるとはどういうことか/橋本努

世代で語ったり、時代を語ったりすることに、意味が無いと思っている。 だが時々、そういう感想をここに書いてしまうのは、実は面倒になっている時が多い。 1980年代の雰囲気、と言ってみたところで、自分が何を感じていたのかなんて、何も説明していないし…

一揆/勝俣鎮夫

大学のときのゼミの教材を読み返してみる。 新書ながら、一揆の基本的な要点を押さえている好著だと思った。 法制史的に言えば、一揆とは公家法でも武家法でもない、私的な契約関係と考えられるということだったか。 改めて読み直してみると、集団論理的な面…

アナーキズム/アンリ・アルヴォン

例えば、全く興味を失ってしまった分野の本を読み返してみる。 が、思うようにはかどらない。 気がつけば、本を持つ手は膝に落ちて、眠ってしまっている。 買ったのは高校生か大学生ぐらいだろう。 もう理由も覚えていないが、高校生にとって、文庫クセジュ…

歴史とユートピア/E・M・シオラン

シオランの散文はアフォリズムとちょっと印象が異なる。 序文によれば、この本は1957年から1958年にかけて書かれ、1956年のハンガリー動乱が背景にあるらしい。 何度かソビエトに対する記述があるが、仮借なきまでに叩きのめすその様は、熾烈を極めていると…

涙と聖者/E・M・シオラン

何となく読み返してみる。 体調は戻りつつあるからだろうか。 シオランのファナティックな言葉たちが、そうかもなと思わせる。 この本に納められている全ての言葉に共感できるわけでもないし、全ての言葉を理解できているとも思わない。 それでもシオランを…

善悪の彼岸/フリードリッヒ・ニーチェ

出張の移動時間潰しに、ニーチェを持参した。 旅先でニーチェを読むとは、何というミスマッチか。 するすると頭に入ってくる部分もあれば、難解な部分もある。 だが、日本語で読むニーチェの難解さは、翻訳にあるんじゃないかと思うふしもある。 恐らく原文…

支那論/内藤湖南

ちょっと中国について考えてみようと思った。 とは言え、メディアに垂れ流されているステレオタイプな言説には、あまり興味はない。 しかしながら、友人の中国人について何をか語りたいのでもない。 図書館で本を探してみても、なんとも不愉快なことだが、見…

茶の本/岡倉天心

久しぶりに読み返してみると、この本は西洋に対する東洋のアジテーションなのだなと思った。 茶の歴史と道教と禅に触れ、西洋が蔑んでいる東洋の奥深さを紹介している。 神秘的な東洋というステレオタイプは、この辺りにも源流があるのかもしれない。 富国強…

14歳からの哲学 考えるための教科書/池田晶子

この本もまた図書館で借りた。 自分が14歳だった頃に、この本があったとしたら、手に取って読んだかというとそうは思わない。 池田晶子という名前は、どこかで聞いたことはあった様な気がするが、読んだのは初めてだ。 この本は平易な言葉で書かれてはいるが…

三万年の死の教え/中沢新一

死について考えるようになったのは、十代の後半だったろうか。 ありふれた思春期の考えるふりから、始まったのだと思う。 といっても、自殺や殺人を妄想するようなことではない。 その辺りの健全さ、裏返すと、優等生的な発想から逸脱できないのは、あらかじ…

コロンブスからカストロまで カリブ海域史、1492−1969/エリック・ウィリアム

この本もまた図書館で借りた。 こちらの記事に触発されて、読んでみた。 高校の世界史の不勉強が祟って、あまり理解出来ているとは言い難いが、大航海時代におけるスペインとポルトガル、その覇権に挑戦するフランス、イギリス、ドイツ、そしてアメリカの台…

エピクロス 教説と手紙

久しぶりに取り出してみた。 エピクロスといえばエピキュリアンの元祖であり、日本語で言えば快楽主義というのは、大いなる誤解だ。 エピクロス自身は自然哲学者の流れであり、その快楽主義は積極的な快楽の追求という意味よりは、害を避けてアタラクシアの…

グローバリゼーションの中の江戸/田中優子

この本もまた図書館で借りた。 やけに平易な言葉で書かれていると思って、よくよく見たら、岩波ジュニア新書だった。 江戸時代における諸外国との交流を、服装、食器、視覚といった点から考察し、一般的に「鎖国」と言われる状態ではなかったことを考察して…

イェルサレムのアイヒマン/ハンナ・アーレント

この本もまた図書館で借りた。 最近、図書館や本屋の「アンネの日記」が破られる事件があったが、その事とこの本を読む動機とは関係が無い。 恐らくどこかのブログで、この本の書評を見かけたような気もするが、もう憶えていない。 そもそも、ナチスドイツの…

悲劇の誕生/フリードリッヒ・ニーチェ

ニーチェを読み返すのは久しぶりだ。 この本で古代ギリシアにおける、アポロ的なるものとディオニュソス的なるものの対立を論及していたと記憶していた。 読み返してみると、ギリシア悲劇における没落と喜劇への転換点をエウリーピデースに見出している。 そ…

時間と自己/木村敏

この本を読んだのは、いつのことだったのか、もう憶えていない。 ともあれ、自分のことが気になってしようがない、10代後半の頃にちがいない。 この本は、精神医学の観点からの時間論であり、意識論であろう。 時間という存在を、もの的に捉えることから、こ…

異郷の昭和文学/川村湊

この本もまた、図書館で借りた。 川村湊氏は、以前に「満洲鉄道まぼろし旅行」を読んだぐらいなのだが、この本もまた満洲がテーマである。 言うまでもないが、満州国に対するノスタルジーや賛美という論調ではない。 昭和時代の文学史において満洲という存在…