雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

ヨーロッパの乳房/澁澤龍彦

澁澤龍彦の本は処分してしまうのだけれど、この一冊が気になったので、ちょっと読んでみた。 その人にとっての旅が何であるか、その問いもまたその人をよく表す一面なのではないかと思う。 澁澤龍彦にとっての旅とは、再確認であるかのようだ。 恐らく旅行中…

どくろ杯/金子光晴

ちょっと気になって確認したら、「どくろ杯」について感想を書いていなかったようなので、読み返してみる。 改めて言うまでも無いだろうが、金子光晴の自伝三部作の第一作目である。 関東大震災後の東京で、若者たちはアナーキズムかコミュニズムにかぶれ、…

東京の島/斎藤潤

たしか記憶では、東京都の小学校の社会科の授業は、3年生で区、4年生で都、5年生で日本、6年生で世界を習ったのだと思う。 なので、東京都の島嶼部を知ったのは、恐らく小学校4年生の頃だったのではなかろうか。 叔父さんから貰った道路地図では、伊豆七島ぐ…

第三阿房列車/内田百けん

何となく落ち着かなくて、気忙しい毎日が続くと、百鬼園先生に手が伸びてしまう。 一気に読んでしまうのが惜しくて、未読で取っておいた阿房列車シリーズの三巻目である。 内容はもう今更説明する必要も無いのだが、目的もなく旅に出る随筆、とでも言ってお…

第二阿房列車/内田百けん

何となく気持ちがささくれ立っているようなので、百鬼園先生の本を読む。 この本は阿房列車シリーズの2冊目である。 目的もなく列車に乗り、観光するでもなく帰ってくる。 第一にも増して、百鬼園先生はヒマラヤ山系君と、飄々とあちこちに出かける。 ふざ…

諸國畸人傳/石川淳

もし、石川淳を知らないなら、この本は読まない方が良いだろう。 石川淳は知らないが、取り上げられる人々に興味があったとしても、読まない方が良いだろう。 この本は、小林如泥、算所の熊九郎、駿府の安鶴、都々一坊扇歌、細谷風翁、井月、鈴木牧之、阿波…

麻薬書簡/ウィリアム・S・バロウズ + アレン・ギンズバーグ

バロウズやギンズバーグの人となりについて、ここで書くのは止めておこう。 この本は何かというと、ラブレターであり、そして、旅行記でもある。 1953年にバロウズがパナマ、コロンビア、ペルー、エクアドルを放浪し、イェージを探し、いかがわしいところに…

ソヴェト旅行記/アンドレ・ジイド

今はソ連という国もないし、アンドレ・ジイドもとうの昔に亡くなっている。 1936年だから、もう80年近く前に、ジイドがソ連に滞在した時の紀行文である。 ジイドは何冊かしか読んだことがない。 この本において、ジイドはそれまでソ連に抱いていた賛嘆と愛着…

新編日本の面影/ラフカディオ・ハーン

日本について考えることは難しい。 飛行機に乗れば、離陸していくにつれて、住んでいる街が小さく遠ざかってゆく。 そこに見えるのは日本の街であるに違いない。 例えば、中国人の友人と話していると、日本人である自分を意識する。 だが、自分にとって日本…

第一阿房列車/内田百けん

目的もなく旅に出る。 旅というよりはただ列車に乗る。 現代で言うところの「乗り鉄」に近いのかもしれないが、目的があってはならない。 「阿房と云うのは、人の思わくに調子を合わせてそう云うだけの話で、自分で勿論阿房だなどと考えてはいない。用事がな…

東海道中膝栗毛/十返舎一九

やじさんきたさんの名前ぐらいは知っていても、実際に読んでなかったので、図書館で借りてみた。 全編、悪戯と駄洒落と狂歌の旅だ。 下ネタも各地の方言も満載だ。 江戸から逃れるように旅に出たものの、逃避行ではない。 悪戯を繰り返し、決まってひどい目…

山躁賦/古井由吉

実は、古井由吉については、良く知らない。 持っているのもこの本だけである。 文学史上は「内向の世代」と言われるようだ。 でも、世代で文学を捉えて、それで何かが解かったつもりになっていたとしたら、最初から本を読む必要はないんじゃないだろうか? …

芭蕉紀行文集/松尾芭蕉

この本は、 「野ざらし紀行」 「鹿島詣」 「笈の小文」 「更科紀行」 「嵯峨日記」 の5篇が集められている。 私は松尾芭蕉を深く研究したこともなく、俳諧について語れるほどの造詣も持ち合わせてはいない。 だが、この本を読んで思うのは、「生きる」とい…

貧困旅行記/つげ義春

本のタイトルが、その内容を裏切らない。 鄙びた、といえば聞こえが良いが、この本に出てくるような宿屋に泊まってみたいとは思わない。 観光という種類の旅ではなく、日常からの逃避というのに近いようだ。 それまでの日常を捨てて、ひっそりと塵に埋もれる…

猫町 他十七篇/萩原朔太郎

いまさらながらに、萩原朔太郎について特に記す必要もないだろう。 この本は、表題作である「猫町」を含む小説3篇と、その他、散文詩的な随筆が収められている。 従って、萩原朔太郎の作品世界の本筋とは言い難いだろう。 それぞれの作品は短く、あっという…

Ambarvalia/旅人かへらず/西脇順三郎

この本に納められている二つの詩集「ambarvalia」は1933年(昭和8年)、「旅人かへらず」は1947年(昭和22年)に刊行されている。 一見すると、この二つの詩集は、大きく趣きを異にしているように見える。 「ambarvalia」は、古代ギリシア・ローマを題材に、…

マレー蘭印紀行/金子光晴

この本は、金子光晴氏が昭和初期に東南アジアを放浪した頃、発表するあても無く書き綴っていた紀行文とでも言えようか。 なぜ放浪していたのか、それは他の著書のテーマであり、この本のテーマではない。 描かれるのは、放浪先の土地に暮らす人々の姿、貧し…

ぼく東綺譚/永井荷風

改めて言うまでもなく、永井荷風の代表作だろう。 簡単に纏めるならば、主人公の作家が小説の構想を練るために、玉の井界隈を徘徊し、運命的な女性に出会うのだが、そこには恋愛の物語が成就しない、というより主人公が成就させない。 彼女が主人公にとって…

満洲鉄道まぼろし旅行/川村湊

満洲国に関する様々な本は出版されているが、この本は当時の写真や広告といった資料から、架空の旅行として再構成している。 正面立って政治問題や、歴史問題として論じるのではなく、言うならば裏側(むしろ側面か?)から、「満洲国」の姿を捉えようとして…

ガリヴァ旅行記/ジョナサン・スウィフト

この本もまた図書館で借りた本である。 子供でも知っている「ガリバー旅行記」なのだが、改めて読んでみると、これが何とも言い難い。 まずこの物語は、作者であるジョナサン・スウィフトの生きていた18世紀のイギリス(アイルランド?)社会を諷刺している…

どうして僕はこんなところに/ブルース・チャトウィン

この本もまた図書館で借りた本である。 ブルース・チャトウィンは何年か前の「Switch」の特集で知った。 サザビーズの鑑定人を経て、旅にとり憑かれたイギリス人作家、というより、むしろ旅に生きた人のようだ。 この本は、そんなチャトウィンの短いエッセイ…

西蔵放浪/藤原新也

世界の果てのような景色/人々の息遣い西蔵放浪 (朝日文芸文庫)作者: 藤原新也出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 1995/06メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (14件) を見る この本は厚さ5センチぐらいあって、片手で持つのはなか…

新編「昭和二十年」東京地図/西井一夫、平嶋彰彦

消えていた空白を埋めるための時間の旅新編「昭和二十年」東京地図 (ちくま文庫)作者: 西井一夫,平嶋彰彦出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1992/07メディア: 文庫 クリック: 14回この商品を含むブログ (10件) を見る 著者は『東京都三十五区区分地図帖』と…

宇宙旅行ハンドブック/エリック・アンダーソン

たかい宇宙旅行ハンドブック作者: エリック・アンダーソン出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2006/02/15メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (14件) を見る 子供の頃、宇宙旅行を夢見たことは無いだろうか? 宇宙飛行士になりたい…

インド夜想曲/アントニオ・タブッキ

日常の隙間にそっと滑り込む誘惑にインド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)作者: アントニオタブッキ,Antonio Tabucchi,須賀敦子出版社/メーカー: 白水社発売日: 1993/10メディア: 新書購入: 9人 クリック: 44回この商品を含むブログ (72件) を見る 読…

西ひがし/金子光晴

旅に誘うもの西ひがし (中公文庫)作者: 金子光晴出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2007/12/20メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (7件) を見る いよいよ、ベルギーから日本へ向けて帰ってくるのだが、シンガポールで放浪する。…

ねむれ巴里/金子光晴

西も東もねむれ巴里 (中公文庫)作者: 金子光晴出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2005/06/25メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 5回この商品を含むブログ (39件) を見る マレー半島からパリ、そしてブリュッセルへと放浪する。 ここに描かれるパリは「花…

日本魔界案内―とびきりの「聖地・異界」を巡る/小松和彦

深く暗い領域日本魔界案内―とびきりの「聖地・異界」を巡る (知恵の森文庫)作者: 小松和彦出版社/メーカー: 光文社発売日: 2002/07メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を見る タイトルにつられると肩透かしを食う本かもしれない。 神話や伝承に登場す…

マレー蘭印紀行/金子光晴

交じり合うマレー蘭印紀行 (中公文庫)作者: 金子光晴出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2004/11/25メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 18回この商品を含むブログ (28件) を見る 昭和の初期の頃だろうか。 マレーシア、インドネシア、シンガポールの辺り…

恋愛のディスクール/植島啓司

自らへの懲罰恋愛のディスクール (福武文庫)作者: 植島啓司出版社/メーカー: ベネッセコーポレーション発売日: 1995/11メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る この本は、小説であり、旅行記であり、ロラン・バルトへのオマージュであり、「宗教的…