雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

モーターサイクル・ダイアリーズ/エルネスト・チェ・ゲバラ

若き日のゲバラが、アルゼンチンからバイクで南米大陸を北上し、チリ、ペルー、コロンビア、ベネズエラへと至る旅の記録である。 バイクにアルベルト・グラナードと2ケツで出発するのだが、バイクは故障し、廃車に追い込まれ、やがてヒッチハイクで旅を続け…

アポロの杯/三島由紀夫

三島由紀夫を読んだ時に感じるこの距離感は、どこからやってくるのか。 それは、古典足り得るほどに時間が経過していないにも拘らず、同時代的であると言うほどには近くも無いと言うことだけではなく、三島由紀夫が拠っていた何かが、今ここで読んでいる自分…

デルスー・ウザーラ/ウラジーミル・アルセーニエフ

デルスー・ウザーラの名前を知ったのは、黒澤明のフィルモグラフィーだ。 だが、映像作家としての黒澤明は凄いなと思うが、映画監督としてヒューマニズムをテーマに持ってくるので、食指を動かす気は起きなかった。 次に東洋文庫にその名前を見つけたのだけ…

東方見聞録/マルコ・ポーロ

マルコ・ポーロの名前は知っていても、そして、ヨーロッパに「ジパング」の存在を知らしめた本人であるということを知っていても、実際にその著書に触れていなかった。 なので、ひとつ読んでみようと思い立ち、図書館で借りることにした。 ここに描かれてい…

モンゴル大紀行/開高健、高橋昇

初めて開高健を読むのだけれど、どうやらドキュメンタリー番組を本にしたものらしい。 何と言うか、入り方が邪道で、つくづく王道から縁遠いのは、自分の性格だろうか。 ともあれ、モンゴルにチンギス・ハーンの墓陵を調査し、120cm超のイトウを釣りに行く。…

ヨーロッパの乳房/澁澤龍彦

澁澤龍彦の本は処分してしまうのだけれど、この一冊が気になったので、ちょっと読んでみた。 その人にとっての旅が何であるか、その問いもまたその人をよく表す一面なのではないかと思う。 澁澤龍彦にとっての旅とは、再確認であるかのようだ。 恐らく旅行中…

どくろ杯/金子光晴

ちょっと気になって確認したら、「どくろ杯」について感想を書いていなかったようなので、読み返してみる。 改めて言うまでも無いだろうが、金子光晴の自伝三部作の第一作目である。 関東大震災後の東京で、若者たちはアナーキズムかコミュニズムにかぶれ、…

東京の島/斎藤潤

たしか記憶では、東京都の小学校の社会科の授業は、3年生で区、4年生で都、5年生で日本、6年生で世界を習ったのだと思う。 なので、東京都の島嶼部を知ったのは、恐らく小学校4年生の頃だったのではなかろうか。 叔父さんから貰った道路地図では、伊豆七島ぐ…

第三阿房列車/内田百けん

何となく落ち着かなくて、気忙しい毎日が続くと、百鬼園先生に手が伸びてしまう。 一気に読んでしまうのが惜しくて、未読で取っておいた阿房列車シリーズの三巻目である。 内容はもう今更説明する必要も無いのだが、目的もなく旅に出る随筆、とでも言ってお…

第二阿房列車/内田百けん

何となく気持ちがささくれ立っているようなので、百鬼園先生の本を読む。 この本は阿房列車シリーズの2冊目である。 目的もなく列車に乗り、観光するでもなく帰ってくる。 第一にも増して、百鬼園先生はヒマラヤ山系君と、飄々とあちこちに出かける。 ふざ…

諸國畸人傳/石川淳

もし、石川淳を知らないなら、この本は読まない方が良いだろう。 石川淳は知らないが、取り上げられる人々に興味があったとしても、読まない方が良いだろう。 この本は、小林如泥、算所の熊九郎、駿府の安鶴、都々一坊扇歌、細谷風翁、井月、鈴木牧之、阿波…

麻薬書簡/ウィリアム・S・バロウズ + アレン・ギンズバーグ

バロウズやギンズバーグの人となりについて、ここで書くのは止めておこう。 この本は何かというと、ラブレターであり、そして、旅行記でもある。 1953年にバロウズがパナマ、コロンビア、ペルー、エクアドルを放浪し、イェージを探し、いかがわしいところに…

ソヴェト旅行記/アンドレ・ジイド

今はソ連という国もないし、アンドレ・ジイドもとうの昔に亡くなっている。 1936年だから、もう80年近く前に、ジイドがソ連に滞在した時の紀行文である。 ジイドは何冊かしか読んだことがない。 この本において、ジイドはそれまでソ連に抱いていた賛嘆と愛着…

新編日本の面影/ラフカディオ・ハーン

日本について考えることは難しい。 飛行機に乗れば、離陸していくにつれて、住んでいる街が小さく遠ざかってゆく。 そこに見えるのは日本の街であるに違いない。 例えば、中国人の友人と話していると、日本人である自分を意識する。 だが、自分にとって日本…

第一阿房列車/内田百けん

目的もなく旅に出る。 旅というよりはただ列車に乗る。 現代で言うところの「乗り鉄」に近いのかもしれないが、目的があってはならない。 「阿房と云うのは、人の思わくに調子を合わせてそう云うだけの話で、自分で勿論阿房だなどと考えてはいない。用事がな…

東海道中膝栗毛/十返舎一九

やじさんきたさんの名前ぐらいは知っていても、実際に読んでなかったので、図書館で借りてみた。 全編、悪戯と駄洒落と狂歌の旅だ。 下ネタも各地の方言も満載だ。 江戸から逃れるように旅に出たものの、逃避行ではない。 悪戯を繰り返し、決まってひどい目…

山躁賦/古井由吉

実は、古井由吉については、良く知らない。 持っているのもこの本だけである。 文学史上は「内向の世代」と言われるようだ。 でも、世代で文学を捉えて、それで何かが解かったつもりになっていたとしたら、最初から本を読む必要はないんじゃないだろうか? …

芭蕉紀行文集/松尾芭蕉

この本は、 「野ざらし紀行」 「鹿島詣」 「笈の小文」 「更科紀行」 「嵯峨日記」 の5篇が集められている。 私は松尾芭蕉を深く研究したこともなく、俳諧について語れるほどの造詣も持ち合わせてはいない。 だが、この本を読んで思うのは、「生きる」とい…

貧困旅行記/つげ義春

本のタイトルが、その内容を裏切らない。 鄙びた、といえば聞こえが良いが、この本に出てくるような宿屋に泊まってみたいとは思わない。 観光という種類の旅ではなく、日常からの逃避というのに近いようだ。 それまでの日常を捨てて、ひっそりと塵に埋もれる…

猫町 他十七篇/萩原朔太郎

いまさらながらに、萩原朔太郎について特に記す必要もないだろう。 この本は、表題作である「猫町」を含む小説3篇と、その他、散文詩的な随筆が収められている。 従って、萩原朔太郎の作品世界の本筋とは言い難いだろう。 それぞれの作品は短く、あっという…

Ambarvalia/旅人かへらず/西脇順三郎

この本に納められている二つの詩集「ambarvalia」は1933年(昭和8年)、「旅人かへらず」は1947年(昭和22年)に刊行されている。 一見すると、この二つの詩集は、大きく趣きを異にしているように見える。 「ambarvalia」は、古代ギリシア・ローマを題材に、…

マレー蘭印紀行/金子光晴

この本は、金子光晴氏が昭和初期に東南アジアを放浪した頃、発表するあても無く書き綴っていた紀行文とでも言えようか。 なぜ放浪していたのか、それは他の著書のテーマであり、この本のテーマではない。 描かれるのは、放浪先の土地に暮らす人々の姿、貧し…

ぼく東綺譚/永井荷風

改めて言うまでもなく、永井荷風の代表作だろう。 簡単に纏めるならば、主人公の作家が小説の構想を練るために、玉の井界隈を徘徊し、運命的な女性に出会うのだが、そこには恋愛の物語が成就しない、というより主人公が成就させない。 彼女が主人公にとって…

満洲鉄道まぼろし旅行/川村湊

満洲国に関する様々な本は出版されているが、この本は当時の写真や広告といった資料から、架空の旅行として再構成している。 正面立って政治問題や、歴史問題として論じるのではなく、言うならば裏側(むしろ側面か?)から、「満洲国」の姿を捉えようとして…

ガリヴァ旅行記/ジョナサン・スウィフト

この本もまた図書館で借りた本である。 子供でも知っている「ガリバー旅行記」なのだが、改めて読んでみると、これが何とも言い難い。 まずこの物語は、作者であるジョナサン・スウィフトの生きていた18世紀のイギリス(アイルランド?)社会を諷刺している…

どうして僕はこんなところに/ブルース・チャトウィン

この本もまた図書館で借りた本である。 ブルース・チャトウィンは何年か前の「Switch」の特集で知った。 サザビーズの鑑定人を経て、旅にとり憑かれたイギリス人作家、というより、むしろ旅に生きた人のようだ。 この本は、そんなチャトウィンの短いエッセイ…

西蔵放浪/藤原新也

世界の果てのような景色/人々の息遣い西蔵放浪 (朝日文芸文庫)作者: 藤原新也出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 1995/06メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (14件) を見る この本は厚さ5センチぐらいあって、片手で持つのはなか…

新編「昭和二十年」東京地図/西井一夫、平嶋彰彦

消えていた空白を埋めるための時間の旅新編「昭和二十年」東京地図 (ちくま文庫)作者: 西井一夫,平嶋彰彦出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1992/07メディア: 文庫 クリック: 14回この商品を含むブログ (10件) を見る 著者は『東京都三十五区区分地図帖』と…

宇宙旅行ハンドブック/エリック・アンダーソン

たかい宇宙旅行ハンドブック作者: エリック・アンダーソン出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2006/02/15メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (14件) を見る 子供の頃、宇宙旅行を夢見たことは無いだろうか? 宇宙飛行士になりたい…

インド夜想曲/アントニオ・タブッキ

日常の隙間にそっと滑り込む誘惑にインド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)作者: アントニオタブッキ,Antonio Tabucchi,須賀敦子出版社/メーカー: 白水社発売日: 1993/10メディア: 新書購入: 9人 クリック: 44回この商品を含むブログ (72件) を見る 読…