物語
たぶん2000年頃に話題になったのではなかったろうか。 サブカル界隈で話題になってたように記憶しているが、相変わらず絶版のままらしい。 ふと思い出して読み直してみる。 改めて読み直してみて、この作品に漂う違和感のようなものは、詰まるところ稚拙さな…
名前は知っていても、手に取らなかった本のうちの一冊である。 なぜ手に取らなかったのかは分からない。 物語としては悲劇的な恋愛譚と言っていいのだろうか。 コランとクロエ、彼らの周りに、シック、ニコラ、アリーズ、イジスの6人が物語の中心にいる。 一…
今までに平野啓一郎を読んだことがあっただろうか。 2005年からの読書記録としてのこのブログには記載は無いが、読んでも書いていないこともあるし、2005年以前に読んでいた可能性が無いことも無い。 この本を読もうと思ったきっかけも良く分からないが、未…
久しぶりに川上弘美を読んでみようと思ったのは、酔っぱらっていたからかもしれない。 酔った帰りにブッ〇オフで何となく買った。 何冊か読んだのが数年前だった気がしている。 川上弘美の小説は少女漫画的な印象がある。 少女漫画とは何か、という話はたぶ…
おそらく3か月ほど待ってようやく借りることができた。 怖いと評判だけは聞いていたが、なるほどよくできていると思った。 ホラー小説を読むということは、恐怖するという娯楽であろう。 この物語での恐怖を盛り上げるために、笑いと不安定な動きのモチーフ…
フィッツジェラルドを読んだのは何年ぶりだろうか。 もしかすると20代の頃読んだのが最後かもしれない。 手に取ったきっかけも覚えていない。 フィッツジェラルドのこの雰囲気は、当時どう思ったのだろう。 それでも、処分せずに本棚に残っていたということ…
何となく借りてみて、一気に読んでしまった。 徘徊タクシーとは、徘徊する老人を乗せて、本人の行きたいところに連れていくサービスである。 認知症の老人は、世界が分からなくなってしまったのではなく、違う次元の世界を見ているのだという捉え方が中心に…
8月13日に何か見覚えのある感じがして、軽く調べたら、アルセーヌ・ルパンシリーズの「813」だった。 そういえば読んだことあったっけ?と借りてみた。 小学生の頃、図書室で見たような気もするし、でもはまった記憶はない。 ヴェルヌは読み漁ったし、江戸川…
星新一は学級文庫に誰かが持ってきたのを読んだのが、最初のような気がする。 面白くて読み漁った気がするけれど、自分で買ったのは1冊ぐらいではないだろうか。 もう、どれが既読でどれが未読だったかあやふやだけれど、この本は未読だったようだ。 気の利…
自らを宇宙人であると自称する家族の物語である。 父は火星人、母は木星人、息子は水星人、娘は金星人を自認している。 当然ながら、そういう人々と周囲との軋轢やら摩擦がある。 それは宇宙人だから故ではなく、周りと異なる概念や思想を持ってしまった故の…
初めて読んだのは高校生の頃だったと記憶している。 奢霸都館の洋書の雰囲気のする装丁の本だった。 何故この本に辿り着いたのかは覚えていない。 澁澤龍彦経由かもしれないが、まだこの頃はそこまで読み漁ってはいなかったはずである。 それはともかく。 ア…
アルフレッド・ジャリは19世紀末のフランスの小説家で、正確にはシュルレアリスム運動に参加していたわけではないけれど、アンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」において ジャリはアブサント酒においてシュルレアリストである。 と語られている。 巌…
ナジャは不思議な物語だ。 ナジャその人は不思議ではない。 ナジャは、プルトンが一目惚れしたちょっとエキセントリックな、言動が目立つ若い女というだけの気がする。 惚れた者の弱みであれやこれや翻弄されているブルトンだが、相手を神格化させたせいで、…
名前は知っていても読んでいない作品は、いつになったら読むのか、あるいは一生読まずに死んでいくのか、という事を考えたことがある。 たぶん、これまで読んでこなかった経験からすると、よっぽど人生がガラッと変わるような出来事が無い限りは読まないだろ…
安部公房の遺品のワープロの中に残されていた物語である。 当然ながら作品として発表されたものでもないし、書きかけのまま残されていた未完成のもので、作者自身が公開を望んでいるとも思えないのだけれど、ファンとしては垂涎モノであることは間違いない。…
久しぶりに、笙野頼子を読む。 いつ買ったのか覚えていないが、酔っぱらったときに買ったのではないはず。(確証はない) この本は、ストーリーはほぼ無い。 森茉莉と雑司ヶ谷から佐倉への引っ越しと猫たちについての、独白だと言い切ってみようか。 一人称…
酔っ払って買ったのが、中島らもというのは、洒落にもならないセンスの悪い話なのだけれど、何となく読みたくなったのだ。 タイトルは記憶があったけれど読んでいなかったので、手に取ってみた。 一言で言うなら、八方破れのような小説だった。 あらすじを説…
ラジオで紹介されていたのでちょっと借りてみた。 アナログ vs デジタル、という構図で、デジタル的なものに対してアナログなものがリベンジする、という物語が繰り返される。 対象はレコード、ノート、フィルムなどのアイテムである。 この本が書かれるため…
引き続き島田雅彦。 出来の良い物語とは酔わせてくれるし、現実とそっくりの顔をしているのではないだろうか、と思っている。 日本の将来を憂う皇后陛下が主人公の、近未来の日本が舞台の物語である。 これは政治小説だろうか? 或いは、細部まで作り込んだ…
個人的に島田雅彦ブームが来ているので、最近の短編集を借りてみた。 暗黒というのは、いささか諧謔味のあるタイトルだと思う。 とはいえ、心温まるような話ではなく、ちょっと斜に構えていたり、ちょっと不気味であったりする短編が収められている。 一つ一…
久しぶりに島田雅彦の「優しいサヨクのための嬉遊曲」が読みたくなって、家の本棚を探したけれど見当たらず、図書館に探しに行っても見当たらず、だったら最近の著作でも読んでみようと思って借りた。 舞台は近未来の日本と思われる国で、AIが人類を管理して…
こういった作品集は年代で編まれていないので、何だか読みづらい気がするのだけれど、手軽に読めるのだからそう文句を言うものでもない。 小泉八雲の主だった作品を集めている。 が、紙の本で読んだ「日本の面影」などが入っていないのは残念だ。 もしかする…
ロアルド・ダールの第3短篇集である。 気味の悪いオチが付いたり、オチを付けずに仄めかして終わる話もあったり、SFめいた発想の話や、黒い笑いの話もある。 短い話だからこそテイストの違いが際立っていると思った。 通勤途中で読んだが、本当はお茶やコー…
ふと、衝動買いをした一冊。 ミステリーというか、ショートショートというか、奇妙な味の短編と言われてたらしい。 なるほど、話のオチがちょっと薄気味悪かったり、どんでん返しだったりする。 ふと思ったのだけれど、阿刀田高に似ているのかもしれない。 …
神田の小間物屋の女将さんの日記を、大正時代の無名の作家が現代語訳した本が、自宅の屋根裏で見つかった、という物語。 額縁小説の体で、江戸の町民の1年間の生活が描かれる。 日常が描かれるから、特段のドラマチックな展開があるわけではない。 どちらか…
子供の頃、読んだ覚えがあるが、なんとなくしか覚えていない本である。 改めて光文社古典新訳文庫で読み返してみる。 ミュンヒハウゼン男爵は実在する人物であるが、モデルとしてこのような法螺話が世界中で広く読まれているというのは、なんとも愉快ではな…
酔っぱらったときに買った一冊。 13篇の短篇小説集。 だから、トランプなのだと読み始めて気づいた。 向田邦子を読むようになったのは30代後半からだった。 本当に面白いと思えるようになったのは40代後半以降かもしれない。 この本も読んだつもりでいたけれ…
久しぶりに吉田健一の小説を読む。 どこかで読んだことのある短篇も、初めて読む短篇もあった。 回りくどい言い回しと、うねうねと蛇行するような話の筋は、吉田健一ならではだ。 謎の外国人の話、酔っぱらいの話、旅の話、どの話もちょっと変で、ちょっとユ…
エッセイに引き続き小説の方も読んでみた。 小説の設定と作者の状況が、どうしても近いように思えてしまうのは、作品にとってデメリットだと思うのだが、どうなのだろう? 作品の出来をどうこう言うつもりもないし、作品世界と作者の置かれてる環境を重ね合…
久しぶりに坂口安吾を読み返してみた。 なんとは無しに、角川文庫版である。 最初期の「木枯しの酒蔵から」「風博士」そして、「二流の人」「白痴」「青鬼の褌を洗う女」あたりが収められている。 坂口安吾の小説世界は、何だか危ういようでもあり、かなり硬…