雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

物語

スノードロップ/島田雅彦

引き続き島田雅彦。 出来の良い物語とは酔わせてくれるし、現実とそっくりの顔をしているのではないだろうか、と思っている。 日本の将来を憂う皇后陛下が主人公の、近未来の日本が舞台の物語である。 これは政治小説だろうか? 或いは、細部まで作り込んだ…

暗黒寓話集/島田雅彦

個人的に島田雅彦ブームが来ているので、最近の短編集を借りてみた。 暗黒というのは、いささか諧謔味のあるタイトルだと思う。 とはいえ、心温まるような話ではなく、ちょっと斜に構えていたり、ちょっと不気味であったりする短編が収められている。 一つ一…

スーパーエンジェル/島田雅彦

久しぶりに島田雅彦の「優しいサヨクのための嬉遊曲」が読みたくなって、家の本棚を探したけれど見当たらず、図書館に探しに行っても見当たらず、だったら最近の著作でも読んでみようと思って借りた。 舞台は近未来の日本と思われる国で、AIが人類を管理して…

小泉八雲作品集

こういった作品集は年代で編まれていないので、何だか読みづらい気がするのだけれど、手軽に読めるのだからそう文句を言うものでもない。 小泉八雲の主だった作品を集めている。 が、紙の本で読んだ「日本の面影」などが入っていないのは残念だ。 もしかする…

キス・キス/ロアルド・ダール

ロアルド・ダールの第3短篇集である。 気味の悪いオチが付いたり、オチを付けずに仄めかして終わる話もあったり、SFめいた発想の話や、黒い笑いの話もある。 短い話だからこそテイストの違いが際立っていると思った。 通勤途中で読んだが、本当はお茶やコー…

あなたに似た人/ロアルド・ダール

ふと、衝動買いをした一冊。 ミステリーというか、ショートショートというか、奇妙な味の短編と言われてたらしい。 なるほど、話のオチがちょっと薄気味悪かったり、どんでん返しだったりする。 ふと思ったのだけれど、阿刀田高に似ているのかもしれない。 …

浮世女房洒落日記/木内昇

神田の小間物屋の女将さんの日記を、大正時代の無名の作家が現代語訳した本が、自宅の屋根裏で見つかった、という物語。 額縁小説の体で、江戸の町民の1年間の生活が描かれる。 日常が描かれるから、特段のドラマチックな展開があるわけではない。 どちらか…

ほら吹き男爵の冒険/ゴットフリート・アウグスト・ビュルガー

子供の頃、読んだ覚えがあるが、なんとなくしか覚えていない本である。 改めて光文社古典新訳文庫で読み返してみる。 ミュンヒハウゼン男爵は実在する人物であるが、モデルとしてこのような法螺話が世界中で広く読まれているというのは、なんとも愉快ではな…

思い出トランプ/向田邦子

酔っぱらったときに買った一冊。 13篇の短篇小説集。 だから、トランプなのだと読み始めて気づいた。 向田邦子を読むようになったのは30代後半からだった。 本当に面白いと思えるようになったのは40代後半以降かもしれない。 この本も読んだつもりでいたけれ…

酒宴/残光 吉田健一短篇小説集成

久しぶりに吉田健一の小説を読む。 どこかで読んだことのある短篇も、初めて読む短篇もあった。 回りくどい言い回しと、うねうねと蛇行するような話の筋は、吉田健一ならではだ。 謎の外国人の話、酔っぱらいの話、旅の話、どの話もちょっと変で、ちょっとユ…

ふたご/藤崎彩織

エッセイに引き続き小説の方も読んでみた。 小説の設定と作者の状況が、どうしても近いように思えてしまうのは、作品にとってデメリットだと思うのだが、どうなのだろう? 作品の出来をどうこう言うつもりもないし、作品世界と作者の置かれてる環境を重ね合…

白痴・二流の人/坂口安吾

久しぶりに坂口安吾を読み返してみた。 なんとは無しに、角川文庫版である。 最初期の「木枯しの酒蔵から」「風博士」そして、「二流の人」「白痴」「青鬼の褌を洗う女」あたりが収められている。 坂口安吾の小説世界は、何だか危ういようでもあり、かなり硬…

ふなふな船橋/吉本ばなな

なんとなく借りたもう一冊。 吉本ばなな氏はたぶん今まで1冊読んだことが有るか無いかぐらいだと思う。 まるで少女漫画のような小説だと思った。 性別で小説を分類するつもりはないが、主人公の独白の多さと、風景の少なさ、登場人物との会話、そういった要…

異類婚姻譚/本谷有希子

何となく借りてみたもう一冊。 確か劇団を主宰している方じゃなかったかと記憶しているが、舞台演劇は苦手なのでよく知らない。 4篇の短編小説が収録されている。 何だか気味の悪いような物語だが、言い得て妙な部分もあるなと思った。 表題作「異類婚姻譚」…

コンビニ人間/村田沙耶沙

ふと読んでみたくなった。 短いストーリーながらかなり読み応えがあった。 あらすじを紹介してもしょうがない。 読んで、安部公房の物語の感じがした。 現実に違和感のある不条理な世界観がユーモラスに描かれている、というと何だか安っぽいがその安っぽさ…

55歳からのハローライフ/村上龍

久しぶりに村上龍氏の小説を手に取った。 そして、「ハローワーク」と読み違えていたことに気づいた。 60歳前後の主人公たちの物語である。 まぁ、若い頃は読まなかったろうな、と思ったが、自分が若い頃は作者も若いので、このような作品は書かなかったろう…

飛行士たちの話/ロアルド・ダール

田村隆一のエッセイに登場していたので借りてみた。 イギリスのミステリー作家らしいが、ミステリー的な話は少なかった。 どちらかというと不思議なテイストの短編小説だと思った。 誤解を恐れず言うなら、ちょっとおしゃれ系な雑誌に紹介されるような小説で…

坐禅ガール/田口ランディ

何となく田口ランディ氏を手に取った。 というのも、前に買ったはずの本が、家の本棚に見つからなかったからだ。 タイトルに何となく惹かれた。 が、読んでみて、やはりちょっと苦手だと思った。 どこをどうも言うことでもないが、おそらく今まで身近にはい…

ボクたちはみんな大人になれなかった/燃え殻

深夜ラジオで、著者がパーソナリティを務めている番組があって、夜中に目を覚まして何度かうつらうつらと聞いたことがある。 この本は150頁ほどで、あっという間に読めたが、内容は何とも消化しがたい。 読んで思い出したのは、田口賢司「ボーイズドントクラ…

藤澤清造短篇集

短編集も読んでみた。 貧乏と性欲が主軸になって、皮肉めいた笑いがあるように思ったが、その感覚はあまりピンとこなかった。 まぁ、そういうこともあるだろう。 藤澤清造短篇集 一夜/刈入れ時/母を殺す 他 (角川文庫) 作者:藤澤 清造 KADOKAWA Amazon 藤…

根津権現裏/藤澤清造

西村賢太氏からの流れで藤澤清造を知る。 私小説というか、狂人をモデルにした独白体の小説、といえばいいのか。 主人公が自殺してしまった友人の話を、友人の兄に語るのが大半で、そこに主人公の独白が交じる。 友人の奇行は、ある種、ユーモラスに描かれる…

苦役列車/西村賢太

初めて読んだ。 名前は知っていてもなかなか手が伸びなかったのは、私小説だからに他ならない。 私小説というサブジャンルは昔から何となく遠ざけていた。 内面の吐露という、作者のはらわたを見せられているような文章は、つい好きか嫌いかで判断してしまっ…

高円寺純情商店街/ねじめ正一

以前読んだことがある気がしていたのだけれど、実は初見かもしれない。 ねじめ正一氏を知ったのは、10代の頃だと思う。 当時は現代詩を読み漁っていたので、自然と辿り着いたと思う。 とはいえ、詩と小説は全く異なっている。 記憶の中の印象ではあるが、句…

近現代日本の発禁本作品選

永井荷風作と伝えられる「四畳半襖の下張」が含まれているので買ってみた。 さすが永井荷風という文章だが、荷風調を真似してる感も否めない。 その他、室生犀星や、森鴎外や、どうしてこれが?という作品もある。 個人的には、「四畳半襖の下張」が読めただ…

銀河ヒッチハイク・ガイド/ダグラス・アダムス

ふらっと入ったブッ〇オフで買った。 ある日突然、宇宙のハイウェイ建設のため、地球が消滅して、から始まるドタバタコメディ、スラップスティックなSF。 くだらない部分も多く面白い。 解説にもあったが、笑いのツボが日本とは異なる、というのは思った。 …

伊豆の旅/川端康成

ふと、川端康成が読みたくなって借りてみた。 あまり熱心な読者ではなかったが、何冊かは読んだことがある。 しかし、名作と名高い「雪国」や「伊豆の踊子」は読んだことが無い。 避けていたわけでもないが、食指が伸びなかったのもまた、事実である。 せっ…

ペスト/アルベール・カミュ

名作といわれる作品には、名作と言われるだけの理由があるけれど、それを読むべき時はいつなのかが分かっていない。 今まで読んでいなかった名作を読んだときに、この作品はもっと早く出会うべきだったと思う時と、今だからこそ出会えたのだと思う時がある。…

たったひとつの冴えたやりかた/ジェイムス・ティプトリー・ジュニア

おすすめされたので借りてみた。 過去の人類の歴史を調べている学生が図書館司書におすすめされた本を借りるという設定で話は語られる。 現在から見ると遠い未来で、物語から見ると遙か昔に、人類が異星人とファーストコンタクトした話、という風に纏められ…

ヴァニラの木/ジョルジュ・ランブール

これもまた「小説のシュルレアリスム」シリーズの一冊。 ブルトンの「シュルレアリスム宣言」にランブールの名前は出てくるのだが、実際日本語で読めるのはこの一冊だけではないだろうか。 思潮社のシュルレアリスム読本の中にも、人物録に名前はあるものの…

流れのままに/フィリップ・スーポー

シュルレアリスムの本を読み漁ったころには、既に手に入らなくなっていた小説のシュルレアリスムシリーズなのだが、最近、ふと思い出して検索してみたら手に入った。 便利な世の中になったものだ。 スーポーはブルトンとの「磁場」でしか読んだことが無かっ…