雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

物語

奇貨/松浦理英子

久しぶりに訪れたブック○フで偶然に見つける。 チェーン系の古本屋での価格付けは、本の状態と店頭売上高が基準になっているようで、人文、文学の中堅どころとでも言うべき本はかなり格安で手に入れられることがある。 これが本当に好きな人しか買わないよう…

鍵/谷崎潤一郎

本当は電子書籍版の全集で読んだのだけれど、そのことをいちいち言うのもどうかと思って、これからは気になったものだけ取り上げようかと思う。 「鍵」は何度も映画化もされているから、有名な作品だろう。 読まれないように小細工をしながら、読まれること…

発想力獲得食/眉村卓

ジュブナイルではない眉村卓を読んでみたくて借りてみた。 この本は食にまつわるショートショートである。 SFっぽいのもあればそうでないものもある。 どの話もちょっと洒落ていて、ユーモアがある。 もう少し読んでみようかと思った。 発想力獲得食 (双葉文…

マルドゥック・フラグメンツ/ 冲方丁

冲方丁が気になって、もう一冊借りてきた。 この前のはエッセイのようなものだったので、時代小説かSFか。 だがいきなり長編世界に飛び込むのは気が引けたので、短編集に手を出した。 だがこの選択は、結果的には失敗だった。 この本はマルドゥックシリーズ…

人民は弱し 官吏は強し/星新一

この本もまた図書館で借りた。 星新一の父、星一氏の伝記小説である。 面白い?面白いだろうか? 星製薬の盛衰を描いているとも言えるし、星一氏と明治日本官僚の攻防を描いているとも言える。 判官贔屓というと失礼だが手放しに、官僚は腐っている、星氏か…

男どき女どき/向田邦子

この本もまた、図書館で借りた。 歳をとって、向田邦子を読むようになった。 この本で扱われているテーマは、人生の機微のようなものだ。 歳を取ると些細なことにも涙脆くなる。 そんな些細なことに共感する自分がいる。 子供は大きな物語が好きだ。 例えば…

高円寺純情商店街/ねじめ正一

この本のまた図書館で借りた。 ねじめ正一が現代詩の詩人であることと、松浦寿輝が詩人であったことは、少し違う気がする。 二人とも1980年代の頃に散文詩作品があり、当時は読んでいた。 私自身は松浦寿輝の方が好みだったが、この作品を読むと、ねじめ正一…

ねらわれた学園/眉村卓

この本もまた図書館で借りた。 言うまでも無く、ジュブナイルの傑作としてよく知られている本である。 遥か昔の子供の頃に、NHKのドラマで見た記憶があるが、すっかり内容を忘れているので、読んでみた。 判りやすくてテンポの良いストーリーであり、あっと…

空港にて/村上龍

この本もまた図書館で借りた。 一瞬を引き伸ばして描写し、心理的な時間を表す書き方は、なかなか面白い。 ここに描かれる人の姿とは何だろう。 何か大きな物語があるわけでもなく、ちょっとした日常の一場面のようなものだ。 見かけは平穏な日常の中で、心…

スローなブギにしてくれ/片岡義男

この本もまた電子書籍である。 というか、ブック○フに一冊も無かった。 そういうものなのか。 この本が出た当初は読もうなんて思いもしなかった。 ただ、南佳孝の同名の曲は気に入っていた。 バイク乗りの少年が、第三京浜で捨てられた猫と女を拾って、一緒…

坊ちゃん/夏目漱石

久しぶりに漱石を再読。 これもまた電子書籍である。 子供の頃は分かってなかったが、主人公の発する悪口が堪らない。 悪口のバリエーションを、もっと増やしたいと思った。 なかなか日常で発する悪口は、相手の資質そのものを否定するだけだから、そういう…

怪夢/夢野久作

これもまた電子書籍である。 新幹線の中で電子書籍を読んでいると、いつのまにかうとうとしてしまう。 だからどれを読んだのか思い出せないのもあるのだけれど、これは記憶に残った。 短い話を幾つかまとめているけれど、どれも薄気味悪くて、読後感があまり…

人間レコード/夢野久作

これもまた電子書籍で読んだ。 青空文庫に夢野久作が入っていると気付いて、久しぶりに読んでみようかとDL。 たぶん読んだことが無い。 読み出して、あれ?これって、ウィリアム・ギブスンの「記憶屋ジョニイ」じゃないか、と。 人間レコード 作者: 夢野久作…

檸檬/梶井基次郎

実は電子書籍で読んでいるのだけれども、一話一話、画像を張り付けるのも何なので、最初に読んだ時の新潮文庫の画像を張り付けることにした。 久しぶりに読み返して見ると、微かな違和感がある。 書いていることが判らないとか、不快だということではないの…

春琴抄/谷崎潤一郎

この本もまた電子書籍である。 ちょっとした調べ物で、読み返してみた。 谷崎はどうも肌に合わない。 嫌いじゃない気もするのだけれど、最近はあまり読みたいと思わない。 耽美的なものに対する憧れのようなもの、が鼻につくのだろうか。 この物語の中心は、…

鬼/織田作之助

この本もまた電子書籍である。 織田作之助にでも手を出してみるかと思い立ち、探してみるとやはり青空文庫に入っている。 とりあえず短そうなものから手を付ける。 主人公の辻は文筆業で仕事になると、やたらと煙草を喫み、その他のことがずぼらになってしま…

半島一奇抄/泉鏡花

この本もまた電子書籍である。 伊豆を舞台とした化け物話である。 化け物が何であるかを書くとつまらないので書かないが、遠近感の歪んだ感じが良い佳品だろう。 半島一奇抄 作者: 泉鏡花 発売日: 2012/09/13 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る

怪談女の輪/泉鏡花

この本もまた電子書籍で読んだ。 まさか、泉鏡花を電子書籍で読むとは。 泉鏡花の文章には独特のリズムがあって、それに乗るとするすると頭に入ってくる。 ただ、独特の当て字というか、創作文字がインターネットの世界では再現できない。 そもそも、康煕字…

明治開化安吾捕物帖/坂口安吾

この本もまた電子書籍である。 しかし、こういった店頭で見かけたことのない本が、電子書籍になって、気軽に読めるのはとても有難い。 この本は坂口安吾による探偵物の連作である。 主人公は結城新十郎、そして勝海舟で、明治初期の東京を舞台に怪事件の謎を…

真景累ヶ淵/三遊亭円朝

この本もまた電子書籍で読んだ。 すっかり手放せない。 怪談の古典で、因果応報で連なっていく殺人話。 何が恐いかって、この世の因果ってこと。 真景累ヶ淵 作者: 三遊亭円朝 発売日: 2012/09/27 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 真景累ヶ淵…

銀河鉄道の夜/宮沢賢治

久しぶりに読んでみた。 初めて読んだのは、小学生の時だ。 当時、何を思ったのか覚えていないが、当時から好きな作品であることは間違いない。 僅かに分別のついた大人になって読み返してみると、宗教的な点が気になってしまう。 もちろんそれが、弱点なの…

二流の人/坂口安吾

この本もまた電子書籍である。 この話の中心は黒田如水である。 坂口安吾が言う二流とはメインストリームではないが重要な、というぐらいの意味だろうか。 一流になりきれない、二流であることを貶めながら、どこかで好ましく思っているようにも見える。 戦…

怪談牡丹灯籠/三遊亭円朝、鈴木行三、若林玵蔵

この本もまた電子書籍である。 有名な怪談なのだけれど、初めて読んだ。 円朝の語り口が伝わってくる。 魑魅魍魎が跋扈するというよりは、因果応報の世界の中で、人の念の愚かさや恐ろしさが主題だろう。 だから同じようなエピソードが繰り返される。 それが…

仙人/芥川龍之介

この本もまた電子書籍で読む。 滋賀の瓢箪好きの男の話だ。 芥川龍之介の笑いは、乾いた、皮肉めいたものがある。 それが鼻につくような感じもするが、ちょっとくせになる感じもする。 夜の新幹線で、酒を飲みながら読んだせいもあるかもしれない。 と思った…

曽根崎心中、冥途の飛脚、心中天網島/近松門左衛門

この本もまた電子書籍で読んだ。 ひょんなことから大阪の仕事をすることとなり、曽根崎、北新地、中ノ島辺りを、ぶらりぶらりと散策する機会に恵まれた。 となると、気になるのはご当地モノというわけでもないが、近松門左衛門ぐらいは読んでおいた方がいい…

悪魔/芥川龍之介

この本もまた電子書籍で読み返した。芥川らしい皮肉の効いた短篇である。悪くない。 悪魔 作者: 芥川竜之介 発売日: 2012/09/13 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る

煙草と悪魔/芥川龍之介

ちょっと小洒落た短篇である。 芥川らしいと言えばらしいと思う。 ちょっとひねっているというか。 煙草と悪魔 作者: 芥川竜之介 発売日: 2012/09/27 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る

三十年後の日本/海野十三

こちらはジュブナイルといって良いだろう。 発見された大きな銀色の球体から、冷凍保存されていた30年前の少年が蘇り、未来の世界に驚き、月世界での冒険活劇と、あっと驚く展開で物語の幕は閉じる。 レトロフューチャー好きであれば、ぜひお勧めしたい一篇…

夜長姫と耳男/坂口安吾

坂口安吾を続けて読んでいる。 不意にこんな言葉が突き刺さる。 好きなものは呪うか殺すか争うかしなければならないのよ。お前のミロクがだめなのもそのせいだし、お前のバケモノがすばらしいのもそのためなのよ。 息苦しいのは、坂口安吾のせいではなくて、…

青鬼の褌を洗う女/坂口安吾

坂口安吾を読み出すと癖になる。 この短編の主人公は妾の娘で、戦争中から終戦直後ぐらいの話のようだ。 一人称で語られる物語は、観念的なようで感覚的でもあり、ともすれば何を言わんとしているのか見失いそうになる。 だが時に坂口安吾の言葉が、不意に突…