詩
1989年の吉本隆明氏の作品。 評論のようでもあり、詩のようでもある。 時事的な話題を取り上げつつも、まるで観念論のようにも見える。 言葉と身体を重ね合わせ、身体の喩で思考する。 むしろ、観念を身体に向かって開いてゆくことで、新たな思考のありよう…
自分の中でどうした訳だか、江戸文学ブームが来ている。 柏木如亭は文政期の漢詩人である。 この本は様々な食べ物と、それにまつわる旅の思い出を書き記した随筆とでも言えよう。 短い文章の中にちらちらと見える食道楽っぷりと、寄る辺の無さそうな旅の思い…
松尾芭蕉の弟子たちによる俳諧論議である。 が、俳句を語れるほど通じているわけでもないので、ふーんそうか程度の感想しか出てこないのは、教養の足りなさの表れだろう。 それでも、何とか読み通してみる。 きっかけは去来が其角へ宛てた不易/流行の論議で…
本との出会いとは不思議なものだと思う。 今まで鬼貫という俳人の名前すら知らなかったのだけれど、この本を読んで気に入ってしまった。 上嶋鬼貫は、1661年に現在の大阪府伊丹市に生まれ、1738年に亡くなった、江戸時代の俳人だそうだ。 東の芭蕉、西の鬼貫…
気になっていたのだけれど、買わずにいた。 だが、ふらっと立ち寄ったブックオフで見つけ、買ってしまった。 この詩集は一日に一篇の詩が書かれている。 立ち読みした時は、自分の誕生日、家族の誕生日、友人の誕生日、それから… 買ってからは、とりあえず1…
ルバイヤートとは、四行詩という意味らしい。 作者のオマル・ハイヤームは11世紀のペルシア(今のイラン辺り?)の、数学者にして哲学者そして詩人だそうだ。 この本の解説で知ったぐらいの、浅はかな知識を書き連ねるのはやめよう。 簡潔ながら、詠い上げる…
詩が読みたい、というのはどういう欲求なのか。 松浦寿輝氏は、今や芥川賞作家であり、評論でもあれこれ話題を振りまいているらしい。 興味が無いので、正確なことや詳しいことは知らない。 ともあれ、松浦寿輝氏の詩集「ウサギのダンス」が読みたくなったの…
吉本隆明氏が亡くなった。 追悼の意味も込めて、この本を読みかえす。 ここには瑞々しい詩人の孤独の言葉がある。 だが今日は、あまり感想を吐かずに、読むだけにしようと思う。 吉本隆明初期詩集 (講談社文芸文庫)作者: 吉本隆明出版社/メーカー: 講談社発…
できれば詩はその書かれた言語で読みたい。 そうすると必然的に、日本の詩か、ちょっと背伸びして英米の詩か、ということになってしまう。 はるか昔に、洋書のペーパーバックではないが、ポーの詩集を持っていた気がする。 だが、現在の本棚に無いので、引越…
東京に雪が降った。 雪が降った夜は音がしない。 雪が音を吸収するのだという。 静かな夜には、詩が読みたくなる。 久しぶりに、藤富保男を引っ張り出した。 藤富保男を知ったのは、矢野顕子の「一分間」という曲で、その歌詞は、この本にも収められている「…
創元推理文庫版のポオ全集を買ったのは、確か高校生の頃だったと記憶している。 ただし、この一冊だけは、途中であきらめた記憶があった。 この本には、全詩と三篇の評論が収録されている。 小説は怪奇や幻想といったキーワードで語られることが多いかもしれ…
何で詩を読むの、とか、詩は何が面白いの、とか聞かれても、答えようがない。 時々、詩を読みたくなるのだし、面白くないものなど読もうとは思わないだろう。 ふと本屋でこの詩集が目に留まったので買ってみた。 別にミッキー・マウスが好きなわけでもない。…
田村隆一氏の名前を知ったのは、吉本隆明氏の本を読むようになって、「荒地グループ」と称される詩人たちの存在を知ってからだったように思う。 既にその頃は、田村隆一氏は老境の域に達していたと思う。 時折、詩誌で発表される詩は、諧謔とユーモアの中に…
井上井月は、幕末から明治初期の頃の俳諧師である。 故郷の越後長岡を捨て、江戸や京、大阪を放浪した後、長野県伊那谷に住み着き、あちこちの家に居候した挙句、田んぼの中で行き倒れ同然の姿で客死したという。 乞食井月とも言われていたというその姿は、…
天沢退二郎の散文詩が読みたくなり、再読してみる。 夢の風景を描写するような、意味ありげな物語のようなその詩作品たち。 大きな絡み合った毛玉を解きほぐしてみると、空洞がそこにあったかのようなイメージだ。 物語的な体裁を採りながら、物語的なるもの…
三好豊一郎という詩人を知ったのは、いつどこでだったのか、もう覚えていない。 だが、「囚人」という詩(代表作と言ってもいいのだろう)だったのは覚えている。 その後、この本を買ったのは、その詩が忘れられなかったからに他ならない。 しかし、久しぶり…
昔読んだ伊藤比呂美の詩は苦手だった。 苦手だったのに、この本はなぜか手放せないで、本棚の片隅にある。 (あんなに夢中になって読んだモーパッサンはあっさりと手放したのに、である) 久しぶりに手にとってみた。 あけすけに語られる性的なこと、猫、ア…
何となく詩が自分の中で盛り上がってきたので、久しぶりにボードレールを引っ張り出す。 もう背表紙は日に焼けて、オレンジ色だったはずが黄色とクリーム色の中間のようになっている。 前に読んだのはいつだったかもう覚えていない。 改めて読み出してみると…
ランボーを読むのは、二十歳より前のほうが良い。 そこにある激情や焦燥感のようなものに、もう反応できなくなっている自分に気づく。 詩というものが何であるか。 詩を読むという体験は、自分にとって何であるか。 そんなことに何かしらの答えを持ってしま…
歌謡の地層山家鳥虫歌―近世諸国民謡集 (岩波文庫)作者: 浅野建二出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1984/01/17メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 5回この商品を含むブログ (1件) を見る この本は、近世の諸国の歌謡を集めたアンソロジーである。 人の集まる…
増補 ギリシア抒情詩選 (1952年) (岩波文庫)作者: 呉茂一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1952/06/25メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る 前に読んだときは、何か格調高いものがあったように記憶していたのだが、読み返してみ…
Opus作者: 朝吹亮二出版社/メーカー: 思潮社発売日: 1987/09メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (2件) を見る 00から始まり、99で終わる、100篇の詩集である。 ここで描かれるのは、言葉そのものであり、性愛でもあるのだが、欠落の偽装や…
哀しさ女たちへのエレジー (講談社文芸文庫)作者: 金子光晴出版社/メーカー: 講談社発売日: 1998/08メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 21回この商品を含むブログ (13件) を見る ここにあるのは詩人の冷徹な視線のような気がする。 賛美でもなく、悲嘆でもな…
共同主観的な詩の生成の過程浅酌歌仙作者: 石川淳,杉本秀太郎,丸谷才一,大岡信出版社/メーカー: 集英社発売日: 1988/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 俳句はもともと連歌の発句が独立したものであるという。 17文字の中に世界を切り取…
流行るもの梁塵秘抄 (岩波文庫 黄 22-1)作者: 佐佐木信綱出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1941/01メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 12回この商品を含むブログ (6件) を見る あまりにも有名なので、内容だとか成り立ちだとか、そういったことは書かない。…
詩の力 (新潮文庫)作者: 吉本隆明出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/12/20メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 9回この商品を含むブログ (26件) を見る これは良い本だと思った。 現代詩を中心に短歌、俳句、歌謡曲までを射程において、吉本隆明が平明に語…
作者と作品は井上井月 (蝸牛俳句文庫 6)新世紀出版Amazon 井上井月は、幕末から明治の初めの頃の俳人だそうだ。 つげ義春の「無能の人」にも登場する。 出自も良く判っていないが、伊那の辺りを放浪し、乞われれるがままに俳諧を詠み、揮毫し、大酒を喰らっ…
コトバ・イメージ北園克衛詩集 (現代詩文庫 第 2期23)作者: 北園克衛出版社/メーカー: 思潮社発売日: 1981/06メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (9件) を見る 久しぶりに引っ張り出して読んでみる。 北園克衛の詩は、ひとつは名詞の持つイ…
的な虚構の世界寺山修司青春歌集 (角川文庫)作者: 寺山修司出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2005/01メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 23回この商品を含むブログ (36件) を見る 実は短歌のことは良く判らない。 同じ定型詩でも、俳句は何となく伝わる。 …
漢字・イメージ・詩李賀詩選 (岩波文庫)作者: 李賀,黒川洋一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1993/12/16メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 20回この商品を含むブログ (11件) を見る 李賀を知ったのはいつの頃だったか。 少なくとも学生の頃ではなかったよ…