久しぶりに訪れたい場所
一人暮らしの頃は、時々、バイクでふらりと一人旅をしていた。
東京から出発すると、数時間は高速道路を飛ばさないと、遠くまで行くことはできない。
高速道路は風圧と退屈に耐えることが必要で、すぐにサービスエリアで煙草を吸ってぶらぶらしているようでは、いつまでも似たようなところまでしか行けやしない。
- 作者: 中上健次
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2009/01/24
- メディア: 文庫
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中上健次は大学生の頃、とある友人から薦められたのだが、その頃はなんだかまどろっこしいように思えて、あまり興味を引かなかった。
それから社会人になり、ふと短編集を手にとって読んでみると、どんどん引きずり込まれてしまった。
ふと、熊野という土地、景色、空気を感じてみたくなり、バイクで熊野に行くことを思い立った。
結果として、自分の身体で感じた熊野の印象と、この本で中上健次が辿っている熊野は、まったくの別物であった。
どちらが真実かとか、どちらが優れているとか、そういうものではなく、この本は中上健次が熊野という土地から、物語を紡ぎだそうとしている姿が見える。
また熊野に行ってみたくなった。