雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

満洲鉄道まぼろし旅行/川村湊


ノスタルジーの危うさ

満洲鉄道まぼろし旅行 (文春文庫)

満洲鉄道まぼろし旅行 (文春文庫)


満洲鉄道の架空旅行を通じて、満洲国というものを検証する、といった内容?しかし、ここにあるのは失われたものへのノスタルジーであるかのように見えながら、その実はWW2以前の日本の薄気味悪さであり(そしてそれは戦後の政治や官僚へつながっているのだが)、当時の写真や資料を重ねれば重ねるほど、その気味の悪さが際立っているように思う。
中国の中に神社を建立し、日本と同じ地名をつけ、日本風のキャバレーを開き、日本文化に合わせた祭りを開く一方で、上から目線で現地の人々の習俗を蒐集する。
WW?以前の帝国主義であった、とは片付けられない、この気味悪さの原因は、それが暗黙的に今も続いているような気がするからだと思う。