雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

アジア無銭旅行/金子光晴


研ぎすまされた

アジア無銭旅行 (ランティエ叢書 (18))

アジア無銭旅行 (ランティエ叢書 (18))


金子光晴東南アジアを放浪するように旅をしていた頃のエッセイといくつかの詩篇をまとめている。
それらから見えるのは、詩人特有の磨かれた言葉だ。
東南アジアを旅行している過程で、詩人の寄る辺なさや、ニッポンというものを外側から見ると言った感覚が、旅行自体の描写に溶け込み、ある種奇妙な、でも、非常に鉱物的な言葉の輝きになっているように思う。
どうやら、一般的には「反骨詩人」と呼ばれているようだが、そんなことはどうだっていい。
金子光晴が、何を見て、何を感じ、何をしたか、そしてそれを言葉を研ぎ澄まして詩情へと昇華した作品を目にしたときに、それは鉱物的な輝きを放っている、と思うのだ。
そしてこの本は、そのエッセンスがコンパクトにまとめられている、良い見本のような気がする。