遠い記憶・甘酸っぱさ・そしてその後・忘れること・忘れ去られること
- 作者: 町田忍,Sento Style推進委員会
- 出版社/メーカー: アーティストハウスパブリッシャーズ
- 発売日: 2002/11
- メディア: 単行本
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銭湯は消え行く存在だという。
この本が出た2002年時点で、全国に6,000軒あったが1日1軒のペースで消えているという。
子供の頃は確かに銭湯に行った記憶がある。
その頃の祖父の家には風呂が無く、泊まりに行くと銭湯に行った。
湯冷めしないうちにと、古い家の天井を見つめながら眠りにつく。
遠くで貨物列車が汽笛を鳴らして鉄橋を渡る。
町工場の油の匂いと、古い木造の家の独特の匂いと、ひんやりとする綿の布団。
この本を読んで、そんな昔の記憶が蘇る。
そんな昔だけでもなく、荻窪辺りに下宿していた同級生は銭湯に通っていた。
中央線沿線は今でも銭湯があるのだろうか?
祖父の家の近くの銭湯は、バブルの頃に無くなった。
銭湯が無くても困る人は少ないのだろうか?
わざわざ電車に乗って銭湯に行く、という話を聞いたことがある。
需要が無いから消え行くのか、消え行くものは忘れ去られるのだろうか?
銭湯のスタイルを紹介しているこの本だが、やはり日常との乖離は否めない。
非日常としての銭湯であるということは、消え行く運命にある、ということなのだと思う。
個人的には銭湯は好きなほうだ。
夕方の早いうちから、人気の無い大きな浴槽に浸かるのは気持ち良い。
籐の椅子に座って扇風機の風に当たるのも良い。
だが、今の生活にそれはフィットしないのだ。
いままでに切り捨ててきた何かを象徴している