海芝浦・下落合
- 作者: 笙野頼子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1998/02
- メディア: 文庫
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久しぶりに引っ張り出して、読み返してみる。
挟まっているレシートを見ると、1995年に大森の本屋で買ったらしい。
買ったのはハードカバーである。
なぜこの本を買ったのか、もう今となっては判らないが、海芝浦に何かピンと来たような気もする。
いつの頃からか、メディアでも良く取り上げられるようになったが、子供の頃からJR東日本の車内に貼ってある路線図を見上げるたびに、川崎の斜め下辺り、植物の根っこのように短く分岐した黄色い路線が気になっていた。
もし、この表題作が海芝浦から始まっていなかったら、この本は読まなかったかもしれない。
実際にこの辺りを訪れたかのような描写もありつつ、うみしばうらという言葉の響きを楽しむような、独特の饒舌体で物語は進行する。
いや、進行はしないのだ。
海芝浦を発端にイメージが連鎖し、イメージとイメージの中を漂流していくような言葉の連なりが続くのだ。
また、併録されている2編は、西武新宿線の下落合、野方辺りが登場する。
だが、現実の下落合辺りの風景が描写されるわけでもなく、あるイメージから話が展開してゆく。
幻想的とかではない。
言葉の響きとイメージが、互いに連鎖し、接続され、イメージが妄想につながり、言葉の響きを呼び・・・
これは小説なのだろうか?とも思うが、小説以外に何と言うべきかはわからない。