記憶のなかの
- 作者: 巌谷国士
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 1995/06
- メディア: 単行本
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ここに出てくる宿が、どれぐらい有名なのかは知らない。
著者の記憶、文学作品からのつながり、町の歴史、そういった広い意味での「記憶」と「デジャ・ヴュ」をめぐる旅行記とでも言おうか。
買った当初は、さらっと読み流すつもりだったのが、引き込まれた記憶があった。
読み返してみると、やはり読み流すつもりだったのに、引き込まれてしまった。
読んでく中で、ふと、昔何度か訪れた宿のことを思い出した。
一人でバイクであちこち行ってた頃、那智勝浦には何度か行った。
初めて行ったときは、出発も遅くて道も慣れていなかったので、津で一泊し、2日がかりで到着した。
予約もしないで出かけた旅だから、津では行き当たりばったりに旅館に交渉し何軒も断られたので、那智勝浦では案内所で紹介してもらった宿が、「海のホテル 一の滝」だった。
沈む夕日を眺めながら、大浴場の茶色い温泉に浸かっていたら、疲れが癒されていくとともに、ずいぶん遠くまで来たなという実感が涌いてきたのを覚えている。
この本を読むとそういった、記憶の中の宿が蘇ってくるようだ。
そして、「海のホテル 一の滝」の大浴場を再び訪れたくなったのだった。
- 作者: 巌谷国士
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1999/04
- メディア: 文庫
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