雨の日は本を読んでいたい

あの時の本を読み返したら、今はどう思うのだろう。いつか読み返すために、思いついたことを書いておこう。読みたい本が尽きなければ、雨の日だって、晴れの日だって、読みたい本だけ読んでいたい。

文鳥・夢十夜/夏目漱石


スタイルとして

文鳥・夢十夜 (新潮文庫)

文鳥・夢十夜 (新潮文庫)


夢十夜」は何度読んだか判らない。
だが改めて読むと「文鳥」の完成度の高さに驚いた。
夏目漱石の人となりがどうとか、その思想がどうとか、そういったことではなく、小説としてのスタイルが素晴らしいのだと思った。
気難しそうな主人公は漱石の分身のようにも見えるが、その眼を通して描かれる悲哀、奇妙さ、日常の中の心の揺れ、そういった点を直裁に描くのではなく、淡々とした筆致の中から浮かび上がらせているように思うのだ。
ここにあるのは完成形ではないが、そういったスタイルが鮮明になっているように思う。